共産党の偽情報に怒り 中国人ネットユーザーが「大翻訳運動」展開 ウクライナ戦争めぐり

2022/03/27
更新: 2022/03/27

ロシアによるウクライナ侵攻後、中国の官製メディアやネット上ではロシアを支持する記事が多く掲載されている。これに不満を持つ一部の中国人ネットユーザーは、偽情報や欧米各国へのヘイトスピーチを翻訳し、海外SNS上で暴く「大翻訳運動」を展開している。

大翻訳運動に参加する中国人ユーザーは、微博(ウェイボー)やTikTok(ティックトック)など中国SNSにある親ロシアの書き込みを中国語から英語に翻訳し、ツイッターに投稿した。この運動は2月に米国のSNS・レディットにある中国語コミュニティーで発生したのが最初と言われている。

7日にツイッター上で公式アカウント「The Great Translation Movement(@TGTM_Official)」を開設して以来、毎日複数の記事を投稿している。翻訳言語も英語から韓国語、日本語などに拡大した。わずか2週間でフォロワーは1万5千人に達した。

大翻訳運動は15日、中国紙・新京報傘下のSNSアカウントがロシア軍が外国人義勇兵180人を殺害したと報じたことを取り上げた。同報道のコメント欄では、ロシアの肩を持ちウクライナを中傷する内容が大半を占めた。

16日には、ウクライナの女性作家、イリーナ・ツヴィラ(Irina Tsvila)氏の戦死に関する中国ネット上の書き込みを紹介した。多くの人は「シャンパンを開けて祝いたい」とした。

また、16日に日本の東北部で起きた震度6強の地震について、中国の愛国主義者らは「祝賀する」などと相次いで書き込んだ。

米在住の中国人民主化活動家、康朋虎氏は、大翻訳運動のボランティアの多くは「VPNを使っている中国国内のネットユーザーだ」と大紀元に語った。

「ネットユーザーはウクライナ情勢に関心を寄せており、国内の不当な言論に憤りを感じている。国内で流れている偽情報やヘイトスピーチを集めて翻訳している」

VPNはバーチャル・プライベート・ネットワークの略称。中国人ネットユーザーはVPNを通じて、国内のネット検閲を迂回し、海外のウェブサイトにアクセスしている。

康氏は、中国政府がネット世論誘導員を通じて、国際社会に向けても偽情報や扇動的な言論を広げていると非難した。「中国人ネットユーザーが組織化し、嘘を暴き、国際社会に向けて発信しているのは非常に意義のあることだ」と取り組みを評価した。

「情報の壁を打ち破る」

運動はすぐに中国政府の批判を招いた。中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」は「ごく少数の偏った言論を選び、(中国に)泥を塗ろうとしている」「海外勢力から資金を受けている」と糾弾した。

オーストラリア在住の楊涵さんも運動に関わった1人として、環球時報から名指しの批判を受けている。楊さんは米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、海外勢力から資金援助を受けていないと批判を真っ向から否定した。

「情報の壁、共産党の洗脳を打ち破れば、中国人は西側の民主主義に近づくことができる」と運動に参加する意義を語った。

ただ、中国のプロパガンダは自由に西側で展開されているのに対し、西側の情報は中国でアクセスできないという現状について、西側は「この非対称的情報戦に措置を講じようとしない」と批判した。

翻訳者らは17日、「大翻訳時報」を作成し、「環球時報」の批判に反撃した。ポーランドの名言「あなたたちと私たちの自由のために」を引用し、運動の趣旨を説明した。「海外にいても祖国が自由、民主と憲政に向かえるよう願っている」「中国の高い壁を自由という言葉で埋め尽くそう」と意気込みを語った。

(翻訳編集・張哲)