【新冷戦特別連載】権威主義の枢軸 第1回(全3回)

2022/03/17
更新: 2023/11/14

2049年までに経済的、政治的、軍事的に世界を支配しようとする中国共産党は、旧ソ連よりも大きな脅威となっている。世界各地で様々な同盟が結ばれる中、新冷戦がすでに到来したという見方もある。

中国の軍備増強に関する米国防総省の文書には、「中国はいわゆる『偉大な中華民族の復興』を達成するための重要な戦略の一環として、その権威主義体制と国益をさらに強固にするために国際秩序を再構築しようとしている」と記されている。

冷戦時代、旧ソ連の脅威は軍事的な領域にとどまり、複数の分野で世界を支配するという問題には至らなかった。

経済面では、中国が米国を追い抜く勢いを見せている。中国のGDP成長率は4.8%で、目標の5%を下回っているが、それでも米国を大きく上回っている。日本の研究者によれば、このままでは33年に中国の経済規模が米国を追い抜く可能性があるという。

新冷戦とは異なり、旧冷戦ではベルリンの壁が地理的に東西を分け、旧ソ連を鉄のカーテンの向こうに封じ込めていた。また、旧ソ連支配地域外との通信や貿易を遮断した。

一方、米国は中国にとって最大の貿易相手国であり、その成長の多くは外国資本の流入によってもたらされたものである。21年の中国への海外直接投資(FDI)は14%以上増加し、米国は主要投資国の一つである。中国共産党は、技術輸出、経済的脅迫、ソーシャルメディアなどを通じて、世界中にそのイデオロギーと影響力を広めている。

中国共産党は「人類運命共同体」の構築を目指している。19年以降、中国共産党は外交政策の一環として軍事力を誇示する傾向が強まり、20年にはコロナ外交による同盟関係の構築に移行したが、それが失敗した後は貿易と軍事力の活用という基本戦略に戻った。中国経済の発展は、党の軍事的野心を支え、人民解放軍の近代化と国内の産業基盤の強化に必要な資金を供給している。

中国共産党の同盟獲得手段

中国は、アフガニスタン、ブータン、インド、カザフスタン、北朝鮮、キルギスタン、ラオス、モンゴル、ミャンマー、ネパール、パキスタン、ロシア、タジキスタン、ベトナムの14カ国と陸上国境を接している。さらに、中国はブルネイ、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、台湾と海洋上の国境を共有している。

中国はこれらのほとんどの国と領土問題を抱えている。南シナ海での軍備増強、尖閣諸島での挑発行為、ブータンへの領土侵犯、インドとの小競り合いにより、もはや近隣諸国と同盟を築くことは不可能である。中国のこうした行動は、自国の安全保障を確保するどころか、近隣諸国を米国に向かわせることになった。

西側諸国の多くは習近平総書記ら党指導部に不信感を抱き、世界貿易機関(WTO)、世界保健機関(WHO)、国際刑事警察機構(ICPO)などの国際機関が中国に支配されることを懸念している。

国連では、中国はウイグル人虐殺を含む大量虐殺への国際社会の介入に反対票を投じている。WHOでは、中国はコロナ封じ込め策を推奨し、世界中に個人防護具(PPE)やワクチンを売り込んだ。ICPOは、通信システムの整備に中国の技術を採用している。また、一帯一路構想は世界中で数兆米ドルの利権と建設契約を獲得しているが、中国はこれを「国際公共財」だと主張している。

こうして、中国は一定の支持を得ることができた。その結果、中国はソフト・パワーよりも経済的脅迫によって同盟を勝ち取ることにますます満足するようになったと思われる。同時に、ロシアは中国の最も強力で有望な同盟国であることに変わりはない。

ロシアのウクライナ侵攻が始まる数週間前に、中国とロシアは、新冷戦の幕開けとなりうる協定に調印した。両国は30年間の天然ガス契約を締結した。また、ミサイル実験を行った北朝鮮に対する国連の制裁案に拒否権を行使することでも合意した。

中国共産党は武力による台湾統一を計画しているが、これに賛成する台湾人はわずか7%である。2月4日にロシアのプーチン大統領と習近平国家主席が発表した共同声明では、台湾に関してはロシアが中国を支持し、ウクライナに関しては中国共産党がロシアを支持するとしている。

ジョージ・W・ブッシュ大統領のもとで国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたスティーブン・ハドリー氏は、この声明を「国際的なリーダーシップの宣言」と呼んでいる。声明によると、中国はロシアの「NATO拡大反対」も支持している。両国は、世界における米国の規範と影響力に反対することで合意したが、それぞれが相手のために戦うかどうかは明言しなかった。また、声明では、ロシアと中国共産党は志を同じくする国家連合を構築すると述べている。欧米の観測筋はこれを「権威主義の枢軸」と呼んでいる。

シリーズ第2回目では、どの国が「権威主義の枢軸」に引き込まれているのかを検証する。中国共産党やロシアの勢力圏に入っただけで、知らず知らずのうちに紛争に巻き込まれる国もある。

執筆者プロフィール

アントニオ・グレースフォ博士(Antonio Graceffo, Ph.D.)

20年以上をアジアで過ごした。上海体育大学を卒業し、上海交通大学にて中国MBAを取得。経済学教授、中国経済アナリストとして、さまざまな国際メディアに寄稿している。中国に関する著書に『Beyond the Belt and Road: China’s Global Economic Expansion(仮訳:一帯一路を越えて=中国の世界的な経済拡張)』などがある。

オリジナル記事:英文大紀元「The Axis of Authoritarianism

(翻訳:王君宜)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
経済学者、中国経済アナリスト。上海体育学院を卒業後、上海交通大学でMBAを取得。20年以上アジアに滞在し、各種国際メディアに寄稿している。主な著作に『「一帯一路」を超える:中国のグローバル経済拡張』(Beyond the Belt and Road: China's Global Economic Expansion)や『A Short Course on the Chinese Economy』など。