【新冷戦特別連載】米国の対中露反撃:同盟関係構築と制裁強化 第3回(全3回)

2022/03/22
更新: 2023/11/14

ロシアウクライナ侵攻に関し、世界の主要各国が一致団結してロシアに壊滅的な経済制裁を加える中、米国も中露の枢軸を断ち切るべく、ロシア支援を続ける中国企業への制裁を試みている。

中国共産党の脅威が高まる中、米国は中国ミッションセンター(CMC)という新しい組織を作り、同盟国とともに対中封じ込めを狙っている。

米中央情報局(CIA)、国防総省、議会は、対中露政策で一致している。CIAのウィリアム・バーンズ長官は、中国をCIAの最優先事項とし、中国ミッションセンターの設立を決定した。中露の脅威に対応するために、米国は昨年の国防権限法案で、史上最高の7680億ドル(約87兆円)を国防予算にあてた。法案では、特に中国が開発を進めている極超音速ミサイル、人工知能(AI)、量子コンピュータなどの破壊的技術に対抗する必要性が強調されている。

この法案には、中国軍を地理的に孤立させるという米国の戦略に沿った太平洋抑止構想への予算72億ドル(約8500億円)も含まれている。「封じ込め」「パートナーシップ」「同盟」は、米国の議員が中国共産党に対抗するための同盟国育成の必要性を論じる際によく使う言葉である。

日本、韓国、台湾は、中国の侵略から自国を守るために、安全保障を強化している。米国の国防予算は、これらの国々、オーストラリア、イギリス、ニュージーランド、インド、その他のヨーロッパ諸国との共同訓練やパトロールに資金を割り当てている。

旧ソ連の脅威は、北大西洋条約機構(NATO)を生み出した。今日、NATOの使命は中国にも及んでいる。米国が主導する中国封じ込めの同盟には、他にファイブ・アイズ、日米豪印戦略対話(Quad)、米英豪の安全保障枠組み(AUKUS)がある。

今後、バイデン政権は西側民主主義諸国間の「より大きな連結性」を強化し、米国の同盟国ネットワークをさらに拡大する計画である。

また、米国政府は多くの中国ハイテク企業への投資を禁止する一方で、特定の中国技術を米国から締め出している。中国の技術をより包括的に取り締まることで、いくつかのプラスの効果が期待できる。第一に、アプリやソーシャルメディアを通じた中国政府のプロパガンダ活動を阻害することになる。第二に、中国の歳入を減らし、中国政府の軍備増強のための資金を減らすことである。第三に、米中間の技術投資を止めると中国共産党が米国の技術にアクセスできなくなり、中国の発展を阻害することになる。

ホワイトハウスは中国政府に対し、ロシアのウクライナ侵攻を非難するよう要請した。だが、中国共産党はこれを侵略と呼ぶことを拒否し、ロシアにウクライナからの軍撤退を求める国連決議への投票も棄権している。中国共産党は、両当事国に自制的な行動と交渉による解決を呼びかけている。中国政府は最近の声明で、ウクライナの主権を尊重するとまで述べた。

ウクライナ危機の当初、中国共産党はロシアを支持し、対露経済制裁はロシアを中国政府側に深く追いやると見られていた。現在、中国共産党はやや言動を控えめにしているようだが、どこまで続くかは未知数である。

米国政府は2月24日、米国製チップのロシアへの販売を禁止し、中国にも同調圧力をかける準備を進めている。チップの供給を断つことは、ロシアの近代戦争遂行能力を著しく低下させる。

中国はロシアの最大の供給国であり、中国の半導体受託生産最大手「中芯国際集成電路製造有限公司(SMIC)」や中国パソコン大手「レノボ(Lenovo)」などを通じ、ロシアのチップの70%を供給している。米国の禁止令は、実際の部品がどこで製造されたかにかかわらず、米国発のテクノロジーを利用したチップに適用されるため、多くの中国企業に影響を与える。SMICはロシアへの輸出を継続した場合、米国の制裁を受ける可能性がある。

バイデン米大統領は、「プーチン氏は国際舞台で除け者になってしまうだろう。ウクライナに対するロシアの露骨な侵略を容認する国は、同様の汚名を着せられる」と警告した。バイデン氏は中国を名指ししなかったが、その意味は明確だった。中国共産党がロシア支援を撤回しなければ、米国は追加制裁を用意し、中国を欧州など西側諸国との有利な貿易協定から締め出すだろう。

これはNATOとロシアの戦争につながりかねないが、中国は依然として未知の要素である。その結果、米国の国家防衛戦略文書の公表は、米国が1つの戦線で戦うのか、2つの戦線で戦うのかが明確になるまで延期された。

米国のロシアへの対応は、中国共産党の台湾での行動に影響を与えるとする分析もある。また、ウクライナ危機が中国の台頭に対する欧米の抵抗感を強めているとの見方もある。中国共産党は米国の対露行動を観察して次の行動を決めるかもしれないし、米国はロシアの反応から、同様の制裁を科された場合の中国共産党の行動を予測しているかもしれない。

執筆者プロフィール

アントニオ・グレースフォ博士(Antonio Graceffo, Ph.D.)

20年以上をアジアで過ごす。上海体育大学を卒業し、上海交通大学にて中国MBAを取得。経済学教授、中国経済アナリストとして、さまざまな国際メディアに寄稿している。中国に関する著書に『Beyond the Belt and Road: China’s Global Economic Expansion』(仮邦訳:一帯一路を越えて=中国の世界的な経済拡張)などがある。

オリジナル記事:英文大紀元「US Response to China-Russia Axis: Building Alliances and Extending Sanctions

(翻訳:王君宜)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
経済学者、中国経済アナリスト。上海体育学院を卒業後、上海交通大学でMBAを取得。20年以上アジアに滞在し、各種国際メディアに寄稿している。主な著作に『「一帯一路」を超える:中国のグローバル経済拡張』(Beyond the Belt and Road: China's Global Economic Expansion)や『A Short Course on the Chinese Economy』など。