ロシアのウクライナ侵攻により、中国共産党による台湾侵攻の脅威について注目が集まる。専門家は、台湾が近年軍事力を強化させているため、中国共産党は武力攻撃によらずサイバー攻撃や偽情報の流布などを含むグレーゾーン作戦により注力していくのではないかとみている。
台湾の財団法人國防安全研究院の李俊毅博士は9日、グローバル台湾研究所主催のオンライン討論会で中国の軍事力は拡大しているものの「台湾侵攻には武力攻撃ではなく、グレーゾーン作戦に依存していく可能性が高い」と指摘した。
グレーゾーン作戦とは、情報戦や世論工作など明確な武力攻撃ではない手法でプレッシャーを与えて相手を威圧する戦略だ。台湾国防部の2021年版国防報告書では、その筆頭として中国軍機による防空識別圏(ADIZ)への度重なる侵入や19年から21年8月までに台湾が14億回を超えるサイバー攻撃を受けた事実を挙げている。
「台湾は抑止力の面で地理的な恩恵を享受している。台湾と中国は台湾海峡で隔てられているため、中国の武力攻撃は水陸両用戦の要素で構成されなければならない」と李氏。そのため日本や米国に察知されずに台湾を侵攻することは難しいと指摘した。この点では、平坦な道路を通って国境を越えるだけのロシアによるウクライナ侵攻とは対照的だとした。
中国による深刻な脅威に直面するなか、台湾側も対抗措置を打ち出している。「2022年の防衛費の引き上げや非対称戦能力の開発、予備役の戦力強化に力を入れている」ことから、中国共産党はグレーゾーン作戦に移行せざるを得ない状況になっているのではないかと李氏は指摘した。
2021年版国防報告書は、中国共産党は国防・軍事力の近代化に多くの資源を投入し、台湾に対する戦略・戦術をますます多様化させているとした上で、「戦わずして勝つ」との目標を達成しようとしていると警鐘を鳴らした。
シンクタンク・国防安全研究院資源と産業研究所の蘇紫雲所長は報告書を受けて、中国共産党が軍事力の脅威だけでなく、知覚戦争やネットによる偽情報で国民の士気低下を狙うなどあらゆる手段を駆使し台湾に対する圧力を強めていることが明らかになったと述べていた。
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