ロシアによるウクライナ侵攻に世界の注目が集まるなか、中国共産党が進めるデジタル通貨の脅威がかき消されている。ファンド運営会社ヘイマン・キャピタル・マネジメントの創業者カイル・バス氏は、大紀元英語版のインタビュー番組「米国思想リーダー」に出演した際に警鐘を鳴らした。
「これは、過去50年間における西側諸国における唯一で最大の脅威だ。しかし、ロシアのウクライナ侵攻によってその脅威は覆い隠されてしまっている」
デジタル人民元は中央銀行が発行する法定通貨。デジタル人民元専用アプリを用いれば簡単に使える決済手段として、中国共産党は普及に向けて力を注いでいる。これまで、中国の20以上の都市でデジタル人民元の実証実験を行っており、2022年の北京冬季オリンピックでは初めて外国人のアプリ利用も可能となった。
「これは単なるデジタル決済アプリではない。所在地や名前、社会保障番号など、すべての個人情報を追跡するアプリだ。位置情報を入手する機能を備えている」とバス氏は警告する。
そのためデジタル人民元が開発されたのち、中国国外にも普及すれば中国共産党は特定の利用者を探し出し、党の都合に応じて操作する可能性もあると指摘した。
「中国共産党はアルゴリズムを利用し、すぐに特定の人物を失墜させることができる。これは国家安全保障上の問題だ」「つまり、デジタル権威主義を輸出することを意味する」
また中国のデジタル人民元を世界に広めるのには、米ドル依存度を下げるという非常に具体的な意図があるという。
「中国が決済する世界的な取引の約87%はドルで決済されている。エネルギーや食糧も不足し、毎日世界中から輸入しなければならないのに、誰も中国のデジタル通貨を信用していない」と指摘した。「資本収支も閉鎖的」のため、現状打破のためにもデジタル人民元を普及させ米ドル決済から脱却したいと考えていると述べた。
米シンクタンク、アトランティック・カウンシルの調査によると、米国を含む世界の80カ国以上が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を検討している。今のところナイジェリアは、デジタル通貨を開始した9カ国のうちの1つだ。
バイデン米大統領は3月、暗号資産に関する大統領令に正式に署名した。デジタル資産の研究開発を「緊急課題」とし、政権としても戦略の構築が必要と判断した。
いっぽう、複数の米国議員は、デジタル通貨がもたらす脅威が適切に対処されることを強く望んでいる。昨年5月には超党派の下院議員が「21世紀ドル法案」を発表。米財務省に対し、人民元が米ドルにもたらすリスクについて、議会への報告書に盛り込むよう求めている。
さらに3月には複数の共和党議員が「シルクロードに反対する法案」を提出した。成立すれば、商務省や通商代表部がデジタル通貨に関する報告書を提出することや、中国に渡航する米国民向けに「デジタル人民元の危険性」を警告する文をウェブサイトに掲載することが義務付けられる。
バス氏は今後、デジタル人民元の使用を違法とする法案も発表されると予測する。「米国が一丸となって、直ちに(デジタル人民元を)禁止する必要がある」と力説した。
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