フロリダ州議会、ディズニーの自治権剥奪法案成立 イデオロギーの押し付けは「重大な脅威」=デサンティス知事

2022/04/23
更新: 2022/04/23

フロリダ州下院は21日、テーマパークを運営するウォルト・ディズニー社の自治権を剥奪する法案を承認した。法案は州上院ですでに可決されており、デサンティス知事の署名で発効する。幼稚園児や小学校低学年の児童に性的指向や性自認を教えることを禁じる法案について、ディズニーは反対の立場を示し、州知事と対立してきた。

新法案でディズニー「自治領」消滅へ

ディズニーがフロリダ州オーランド近郊に保有する広大な領域は「リーディ・クリーク改善地区」と呼ばれ、その広さは約101平方キロメートルに上る。1967年に成立したフロリダ州の法律により、ディズニーは地区内で自治を行なっている。

ディズニーは地区内における税金の徴収権や警察権、電力、消防などを自主的に管理する代わりに、税金面での優遇措置などを享受してきた。同様の特別区はフロリダ州内にいくつも存在している。

いっぽう、デサンティス知事は、州の憲法は企業等に特権を与えることを「一般的に好まない」との見解を示し、特権の剥奪について議論するために19日に特別議会を招集した。

記者会見を行うフロリダ州のデサンティス知事(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

20日、特別区の税制上の特権と自治権を剥奪する法案がフロリダ州上院に提出され、賛成23票、反対16票で可決となった。翌21日には下院で審議が行われ、賛成70票、反対38票で可決した。デサンティス知事が署名すれば効力が生ずる。

州の政治に踏み込むディズニー

ディズニーと州知事の対立の発端となったのが、幼稚園児や小学校低学年の児童に性的指向等を教えることを事実上禁じたフロリダ州の法案に対し、同社が反発したことだった。

3月下旬、ディズニーは「フロリダの『ゲイと言うな』法案は、決して通過してはならず、署名されてはならない」とする旨の声明を発表した。「ゲイと言うな(Don’t Say Gay)」法案の正式名称は「教育における保護者の権利に関する法律(HB1557)(以下、教育権利法)」。幼稚園児から小学校3年生までの児童に「性的指向」や「性自認」に関する教育を施すことを禁じるとともに、年齢や発達に相応しくない方法で性教育を行うことを禁止する。

しかし、法案に「ゲイ」という言葉の使用を禁ずる内容はなく、「ゲイと言うな(Don’t Say Gay)」との言い回しは左派の活動家や民主党議員らが拡散してきたものだ。

ディズニーの声明は、活動家らによる批判に押された結果とも言われる。米紙ワシントン・ポストなどによると、複数の民主党州議会議員は「ゲイと言うな」法案についてディズニーが沈黙していることを批判した。また、ディズニーがフロリダ州の大口献金者であることから、その影響力を行使すべきとの声も上がった。

これらの言論を受け、ディズニーは「フロリダそして全米のLGBTQ+コミュニティの権利と安全のために立ち上がることに専念する」とし、州への献金を全て停止すると発表した。

特権剥奪は報復か

一部のメディア報道では、フロリダ州によるディズニーに対する自治権の剥奪は「デサンティス知事の報復」と称されている。いっぽう、知事側はこの指摘に反論している。

デサンティス知事は4月初め、「政策論争があるのは結構なことだ」と記者団に語った。「しかし、『woke(社会的正義に対して敏感な)』イデオロギーを私たちの州に押し付けるのであれば、私たちは重大な脅威と見なす」。同氏はまた、ディズニーの批判に対し、左翼の「woke(社会的正義に対する敏感さ)」は最終的に「この国を崩壊させるだろう」と発言した。

20日、法案が上院で可決されると、デサンティス知事の広報担当クリスティーナ・プショー氏はメディア関係者に対し、自治区の特権を剥奪する動きは、ディズニーが州の法案を批判したことに対する報復ではないと述べた。

「ディズニーが政治的な議論に介入し、フロリダ州住民の大多数の支持を得て正当に選ばれた議会が制定し、正当に選ばれた知事が署名した常識的な法律を覆そうとしたことは残念だ」とプショー氏は述べた。「実際、この法律を『撤廃』または『打倒』させることを公に誓って『報復』したのはディズニーだった」。

「ゲイと言うな」は間違った物語=デサンティス知事

教育権利法について、デサンティス知事はメディアが間違った報道を行なっていると批判した。

同法が可決した後の3月7日、知事は記者会見で「ゲイと言うな」法案を支持するか問われた。「法案にそのように書いてあるのか」「法案が実際にどういうものなのか理解しているのか」とデサンティス氏は記者に質問したが、表面的な回答しか返ってこなかった。

デサンティス氏は法案について「5歳未満の子供や6歳児、7歳児を対象とするものだ。この部分を正直に伝えないから、あなたのような人は信用されない。間違った物語を売り歩いている」と語気を強めた。記者席から拍手と歓声が上がった。

教育権利法の制定により、子供の精神的・身体的な健康に影響を与える決定と関連する情報について、教育機関が保護者に対して開示しないことが禁じられる。また、小学校低学年までの学童については、保護者の同意を得ずに健康診断やアンケートを行うことが禁止される。

デサンティス知事は2月、州の公教育は政治活動ではなく、学業成績に重点を置くべきだと示した。「数学、国語、科学など、重要な教科を子供たちに学ばせることが私の目標だ」「学校をイデオロギー論争の場に変えたくない」と述べた。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
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