中国政府は海洋に関する国際法規や規範を支持する発言を繰り返してきたが、複数年にわたり中国の海事活動を評価した末に発行された報告書により、中国の実際の行動がその美辞麗句とは裏腹であることが明らかとなった。
米国海軍分析センター「CNA」の研究者等は東南アジア、アフリカ大西洋岸、太平洋諸島周辺の水路において、2018年から2021年にかけて発生した中国船舶による違法行為の容疑事例を調査した。そのデータから、責任ある海事国を演じるための中国の美辞麗句は、実は「沿岸諸国への経済的・環境的損害、主権の侵害、市民に対する弊害」をもたらす行動の隠れ蓑に過ぎなかったと結論付けた。
「Exposing the Gap Between PRC Rhetoric and Illicit Maritime Activity(仮訳:中国の美辞麗句と違法海事活動の間のギャップ)」と題するCNA調査報告書には、「中国政府と国営報道機関は中国船舶による違法行為に絡む事件を公に否定または軽視する、あるいは批判を逸らすという手段で、違法活動により中国の評判に傷が付くのを積極的に回避することを狙っている」と記されている。
CNAが15件の事件を調査した結果、中国船舶は主に以下の類の違法行為に関与していることが判明した。
- 海洋生態系と持続可能な漁業を脅かすIUU漁業に従事する。
- 意図的に外国船への体当たり攻撃、船体の破壊、乗組員を危険に曝す行為を行う。
- 漁船における強制労働や人身売買に従事する。
- 船上や陸上の汚染源を海洋に放出することで、海洋環境を害し、地元住民に損害を与える。
- 監視・追跡システム(トランスポンダー)を切断して位置情報を特定されないようにすることで、追跡を回避して違法活動に従事する。
- 他諸国の管轄海域に不法侵入して漁業を操業する。
CNA報告書によると、調査対象の15件中7件において中国当局と国営報道機関は批判を黙殺する、または事件を軽視することを試みており、他の事件では容疑を否定し、中には告発が政治的動機に基づくものであると主張した事案も存在する。
同報告書には、「少なくとも3件の事件において、中国当局と報道機関は他方当事者を事故責任者または違法行為従事者と主張して非難している」とあり、「調査した限りでは、中国当局が問題の違法行為を公式に認めた事例は2件しかない。いずれの事例においても、中国政府は外国当局に対して、公正な調査を実施して関与する中国国民の権利を確実に保護することを要請し、中国政府が海外で活動する国民と事業体に現地法を遵守するよう求めていると主張している」と記されている。
CNA研究者が調査したところでは、違反行為に従事する頻度が最も高いのは中国の遠洋漁業船団に属する商業漁船で、多額の国家補助金を受けて中国共産党(CCP)管理下で操業し、世界各地の海域で漁業を展開している。同報告書によると、中国籍船で構成される遠洋漁業船団の一部は、労働者の虐待疑惑だけでなく、死亡者が発生している小型外国漁船との衝突・沈没事件にも関与している疑いが持たれている。
1件を除くすべての調査対象事案において、中国政府は中国船舶に対する告発を否定または軽視することで自国への悪影響を最小限に抑制していると分析したCNA報告書には、「問題行動を否定・軽視するという戦略は問題である。自国船舶の違法行為を認めて措置を講じることなく中国がこのまま同戦略を続ければ、中国政府が国際法、規則、規範を公に無視していると国際社会に受け取られる可能性がある」と記されている。
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