海外民事訴訟は米司法を利用して米企業の資料提出強制できず=米最高裁

2022/06/16
更新: 2022/06/16

米国最高裁判所は13日、海外での民間仲裁において、米国の司法制度を利用した、中国ほか海外企業による強制的な証拠提出要求は容認できないとの判決を全会一致で下した。

この判決は、香港に拠点を置く企業が米国の自動車部品メーカーと争った複雑なケースで下されたものである。

香港の有限会社ルクスシェアは、家電製品、通信製品、自動車製品を製造している。同社はアップルのサプライチェーンに含まれる電子機器の受託製造会社でもある。

ミシガン州リボニアを拠点とするZFオートモーティブは、自動車部品と産業技術を製造している。

ルクスシェアは、2017年に約10億ドルで購入したZFドイツの親会社の事業部門の資産価値をめぐり訴訟を起こした。ルクシェアは、ZF側が2事業の収益性を過大評価したと主張している。この取引では、ミュンヘンのドイツ仲裁協会の規則に従って解決されることが規定されていた。

それにもかかわらず、ルクスシェアは米デトロイトの地方裁判所を通じて、ZF関連文書をルクスシェアに引き渡すよう要求した。

2021年12月10日、最高裁はZFによる申し立てを認め、第6巡回控訴裁判所の判決前に横やりを入れた。同年10月27日にも最高裁は、ルクスシェアの文書提出要求をZFに強制した下級審の命令を阻止した。

3月23日に口頭弁論が行われた。エイミー・コニー・バレット裁判官が最高裁の意見をまとめた。

それによれば、米国議会は長年にわたり、証拠収集に際して、連邦裁判所が外国または国際的な裁判機関を支援することを容認してきた。また、合衆国法典第28編第1782条も、連邦地方裁判所が、外国または国際法廷での手続きで使用する証言または証拠の提出を命じることを許可している。

バーネット裁判官によれば、政府は臨時仲裁パネルに公的な権限を与えることができるが、各国が条約で仲裁に応じることに合意したからといって、その機関が政府の権限を持つことにはならない。この事案は、各国が臨時パネルに政府の権限を行使させることを意図していたかどうかであるが、そうした意図がなかったことがうかがえる。

ZFの顧問弁護士であるローマン・マルティネス氏は、次のように語った。

「裁判所が明確にしたように、1782条は、政府及び政府間の裁定機関においてのみ、開示手続きを認可するよう慎重に規定されており、純粋な私的仲裁を海外で行うことはできない。この意見は、外国の商業仲裁の当事者が、米国の裁判所において不当に開示手続きを利用することを困難にし、現在および将来の幅広い国際仲裁に対して、直ちに影響を与えるものである」。