米下院最高総務責任者キャサリン・スペンダー氏は、国家安全保障上の懸念を理由に、中国動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の使用を控えるよう議員に勧告する声明を発表した。アプリはユーザーのあらゆる個人情報を収集しており「商業や私的な目的で利用される恐れがある」と警告している。
スペンダー氏は10日付の声明で「ティックトックには顧客データの保護方法に関する透明性の欠如や過剰な権限の要求など、使用に伴う潜在的なセキュリティリスクが存在する」と指摘。個人のプライバシーを危険にさらす可能性のある「高リスク」アプリだと強調した。
ティックトックは、位置情報や個人情報のみならず、動画を通して生体識別情報および生体情報を収集することが可能だと懸念を表明した。さらに、Wi-Fi名やSIMカードのシリアル番号なども抜き取られる可能性があると警鐘を鳴らした。
ティックトックの運営元は北京を本拠とする中国企業「バイトダンス(Byte Dance)」。下院最高総務責任者からの指摘を受け、同社の米国担当副社長マイケル・ベッカーマン氏は11日、反論を発表。指摘は米豪のサイバーセキリュティ企業インターネット2.0社の「虚偽と誤解を招く」調査報告をもとに書かれており、「不正確」だと述べた。
インターネット2.0社の分析では、ティックトックは連絡先、カレンダー、位置情報を頻繁に読み取ろうと試みており、短編動画の視聴という目的には一致しない「個人情報の過剰収集」があると指摘している。
ベッカーマン氏によれば、米国のユーザーデータは中国サーバーに保管しておらず、米国内とシンガポールで管理しているという。また、生体情報の収集も行っていないとし、最高総務責任者の声明の撤回を求めた。
ティックトックのセキュリティ問題はかねてより取り沙汰されてきた。新興メディアの取材で、中国技術者が不正に米国人ユーザーのデータにアクセスしていたなどの疑惑も浮上した。米連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー氏は6月、国家安全保障上の脅威を理由に同アプリをアプリストアから削除するよう、アップルとグーグルに要求。8月上旬には、英議会がティックトックの公式アカウントを閉鎖している。
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