憂慮すべき軍事演習が続く中、中国共産党が台湾を侵攻しないという約束を破棄

2022/08/30
更新: 2022/08/30

すでに台湾海峡で地域を不安定化させる軍事訓練を展開していることで広く非難を浴びている中国共産党が、中国政府が自治領台湾を併合するという長年の目標を達成しても台湾を占領下に置くことはない、という約束を反故にしたとメディアが報じている。

香港チベット、新疆ウイグル自治区など、何百万人もの人々が民主主義取締り、恣意的な拘束、強制的な文化的同化、国家による監視を受けている地域で中国共産党が自治に関する約束を破っていることを考えると、新白書で明らかにされた方針転換は何ら驚きに値しない。

2022年8月中旬に「ザ・ストレイツ・タイムズ」紙が報じたところによると、台湾に関する中国共産党の白書は「軍隊を島に送らないという言及を削除するなど、文言の変化を見せている一方、言い回しの口調やスタイルはより攻撃的なスタンスを示唆している。 「これは、20年以上前にこうした文書が最後に発表されて以来、中国政府の自信と主張の変化を反映している」という。

中国共産党は台湾を自国領土であると主張し、これまで中国の領土であったことのない台湾島を支配下に置くために武力を行使すると脅している。 20世紀前半、中国の民族主義者らが共産主義者との内戦の後、台湾に亡命した。 1949年に中国共産党が一党国家として中華人民共和国を建国、一方、台湾は民主国家となった。

中国政府は白書の中で、「平和的な」解決策を好むと主張しているほか、統一が「台湾が外国に侵略され、占領されるリスクを回避する唯一の方法」であると主張することで領有権の主張を正当化しようとしていると、2022年8月に「ザ・ディプロマット」誌は報じている。

中国関連の政策を監督する台湾の大陸委員会は、この白書が「希望的観測の嘘に満ちており、事実を無視している」と述べた。

同委員会は8月10日の声明で、「このような無謀で賢明さを欠く政治的作戦は、中国共産党の好戦的な考え方と、武力を行使して中国台湾間の平和を破壊しようという悪質な計画のさらなる証拠だ」とした上で、 「台湾の2,300万人の人々だけが台湾の将来を決定する権利を有しており、独裁政権が決定した結果を受け入れることは絶対にありえない」と述べた。

白書が発表された頃、中国人民解放軍(PLA)が台湾海峡で史上最大規模の演習を行い、台湾周辺で複数の弾道ミサイルを発射し、そのうちのいくつかのロケットが日本の排他的経済水域内に着水している。 報道によると、中国の航空機、無人機、船舶が台湾と中国の間の幅160キロメートルの水路の中間線を繰り返し横断しており、中国人民解放軍は最近、台湾に最も近い空軍基地で大規模なアップグレードを完了した。

中国政府はまた、米国議員団による短時間の台湾訪問に激しく反発し、その一環としてサイバー攻撃や偽情報キャンペーンを含むハイブリッド戦を台湾に対して行っていると非難されている。

インド太平洋地域、ヨーロッパなどの多国間組織は、解放軍の実射訓練が壊滅的な誤算のリスクを高め、地域の安定性を損ない、世界的な海運ルートを混乱させていると批判している。

ロイター通信によると、1993年と2000年に発表した白書で、中国共産党は「再統一」の場合、台湾に軍隊や行政要員を駐留させないと主張し、同島が中国の特別行政区として自治権を持つ可能性をちらつかせた。

しかし、1997年に中国が旧英国植民地だった香港の支配権を獲得した際に同様の条件が与えられていたはずの香港が辿ってきた運命は、中国共産党の宣言が口先だけであるという認識を改めてもたらすものだ。「一国二制度」の原則の下で、香港は少なくとも2047年まで内政における自治権と世界的な金融の中心地としての地位を維持することになっていた。

しかし、2020年半ばに中国政府が反対意見を抑え込み、民主化運動を粉砕することを目的とした国家安全法を施行したことで、香港に対して中国政府が行っていた保証は消失した。 これがきっかけとなり、現在中国政府に忠実な形式だけの議会によって統治されている香港から、住民や企業の継続的な脱出が始まった。

過去2年間で、中国共産党による台湾への圧力も上昇している。中国人民解放軍の航空機が台湾の防空識別圏への侵入を繰り返しており、アナリストによると、これは台湾の防衛力を消耗させ、抑え込むための試みであるという。

観測筋によると、台湾を中国政府の支配下に置くことは、中国の習近平共産党委員会総書記が掲げる中国ナショナリズムのビジョンの中核だ。 ロイター通信によると、2022年後半に3期目となる5年間の任期を確保する見通しの習主席は最近、中国統一を党の「揺るぎない歴史的任務」のひとつと称した。

台湾は、兵器システムの国内開発などを通じて、潜在的な侵略に対する防御を強化している。 

AP通信が報じたところによると、台湾の蔡英文総統は2022年8月中旬に、台湾政府が地域の現状を守るべく米国や他のインド太平洋の提携国と協力していると述べた。

「今年初めのロシアのウクライナ侵攻は、独裁国家が世界の秩序を脅かしていることを示している」と蔡総統は述べた。

Indo-Pacific Defence Forum
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