総務省は令和5年度予算の概算要求のなかで、スマートフォンアプリがユーザー情報を不正送信する機能等の実態を検証するため、10億円を計上した。データセキュリティをめぐっては、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」が欧米で広く問題視され、政府機関が使用を禁じるケースもある。先進諸国が警鐘を鳴らすなか、日本政府も足並みをそろえた。
総務省は「通信アプリに含まれうる不正機能の検証に関する実証」のため、新規に予算を申請した。アプリの技術的解析を第三者に依頼し、情報送信といった動作の実態を把握する。
寺田総務相は8月30日の記者会見で、「利用者の意図に反して情報を外部に送信するといったセキュリティ上の懸念」に備え、あらゆるアプリの挙動を検証すると述べた。
米英、中国製アプリに警鐘
各種SNSアプリの普及に伴い、アプリがユーザの意図に反してユーザ情報を送信することがデータセキュリティやプライバシーに対するリスクと認識されるようになった。なかでも中国企業が運営元となるアプリについては、安全保障上の懸念も指摘されている。
中国発のTikTokは若者を中心に人気を博している動画投稿アプリだ。しかし、米国のオンラインメディア・バズフィードの6月17日付報道によると、TikTokの運営元「バイトダンス(Byte Dance)」の従業員が中国で「米国のTikTokユーザーに関する非公開データに繰り返しアクセスした」ことを示す80以上の社内会議の音声が流出した。
米国の通信事業の監督を行う米連邦通信委員会(FCC)は6月末、TikTokをアプリストアから削除するようアップルとグーグルに要求した。ブレンダン・カー委員は両社に宛てた書簡のなかで、「TikTokは単なる動画アプリではない」「羊の皮を着たオオカミだ」とし、「大量の個人情報や機密データを採取する高度な監視ツール」と指摘した。
TikTokの運営元は北京を本拠とする中国企業「バイトダンス(Byte Dance、北京字節跳動科技)」。中国が2017年に制定した「国家情報法」や「サイバーセキュリティ法」の規定により、中国企業は要請に応じて当局にデータを提供することが義務付けられている。
イギリスでも同様の動きが見られている。イギリス議会は8月3日、セキュリティ上の懸念があるとの指摘を受け、TikTokの公式アカウントを閉鎖した。アカウントは7月27日に開設したばかりだった。議会の広告担当者は大紀元の取材に対し、議員らの書簡を受けて「予定より早くアカウントの閉鎖を決めた」と答えた。
なお、2021年5月には米上院で、連邦政府職員に対してすべての政府機関の端末にTikTokをインストールすることを禁止する法案が全会一致で可決した。
「スパイ活動用アプリ」との指摘も
元グーグルのエンジニアであるフェニックス・クラウス氏が8月18日に発表した報告書によると、TikTokのアプリはパスワードやクレジットカード番号そして機微な情報を含む、ユーザーの「すべての」操作を記録している。アプリ内でリンクをクリックし、表示されたページを閲覧するたびにリスクが生じるという。
この問題について、アドバイザリー会社ブラックオプス・パートナーズ(BlackOps Partners)のケイシー・フレミング最高経営責任者(CEO)は新唐人テレビに出演した際、「キー入力した文字や数字は中国に送信され、中国共産党の監督の下で記録されている」と指摘。その中には、パスワードやメールアカウント情報のほか「メール内容や誰とメールしているのか」などすべてが含まれていると述べた。
フレミング氏はTikTokを「スパイ活動用アプリ」と表現し、非軍事的な手段で軍事目的を達成しようとする中国共産党の「ハイブリッド戦争」の一環として利用されている可能性が高いと危機感を示した。同氏によると、アプリは親中プロパガンダの拡散や知的財産の窃盗のほか、入手した米国人の情報を「脅迫の手段」とする可能性もあるという。
「外国の影響力を米国内で決して容認してはならないという法律や政策が必要だ」とフレミング氏。米国と価値観を共有しない中国のアプリの普及を許容し続ければ「自由社会を維持することはできない」と強調した。
(翻訳編集・山中蓮夏、Wenliang Wang)
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