中国企業が余剰の液化天然ガス(LNG)をエネルギー不足の欧州に転売し、莫大な収益を得ている。一部の専門家は、中国はエネルギー市場での影響力を強めようとしていると指摘した。英紙フィナンシャル・タイムズなどが報じた。
報道によると、今年に入ってから中国企業は約400万トンの液化天然ガスを国際市場で販売した。これは今年上半期のヨーロッパの天然ガス輸入量の7%に相当する。
ウクライナ侵攻後、ロシアは中国向けの天然ガスの輸出を大幅に増やした。ブルームバーグの統計では、中国は今年上半期にロシアから350億ドル(約5兆579億円)のエネルギーを購入し、前年の200億ドル(約2兆8902億円)から急増した。ロシアは値下げして中国に液化天然ガスを販売しているという。
ロシアの中国向け液化天然ガスの販売強化と、米国エネルギー企業との長期契約が主因で、中国は需要を上回る液化天然ガスを購入している。しかし中共ウイルス(新型コロナウイルス)の大流行による経済減速で中国国内のエネルギー需要が大幅に減少している。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、2021年以降、米エネルギー企業は中国企業との間で17件の契約を結び、年間1900万トンの液化天然ガスを供給すると報じた。米市場情報会社ICISは、中国は今年、米国から7200万トンの液化天然ガスを購入するとの見通しを示した。ただ、中国の実際の需要は6600万トンにとどまる。
フィンランドの研究機関「エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)」のアナリスト、ラウリ・ミリビルタ(Lauri Myllyvirta)氏は米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、中国は中東のカタールからも液化天然ガスを購入していると話した。
同氏は「中国は今年、多すぎるほどの天然ガスを獲得した」とした。
中国石油大手シノペック(中国石油化工)は4月の財務報告会議で、同社は余剰の液化天然ガスを国際市場で販売していると明らかにした。
ヨーロッパが中国企業の主な転売先だ。天然ガスの最大供給源であるロシアが、ウクライナ侵攻後にヨーロッパへの供給を削減したためだ。
米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)の専門家、サム・レイノルズ(Sam Reynolds)氏は、現在の市場価格で、液化天然ガス船1隻(約6トン)を転売すれば、中国は約1.2億ドル(約173億円)から1.4億ドル(約202億円)の収益を得られると示した。
一部の専門家は、ロシアと友好関係にある中国政府は、ロシアに代わり欧州連合(EU)への影響力をさらに強めるのではと懸念する。
ロシアのエネルギー相であるアレクサンダー・ノバク氏は9月、バルト海経由で欧州に輸送する天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」計画について、中国につなぐパイプライン「シベリアの力2」に切り替えると明らかにした。「シベリアの力2」は年間500億立方メートルの天然ガスを中国に輸送するという。
米テキサス大学エネルギー管理・イノベーションセンターの共同所長、エフド・ロン(Ehud I. Ronn)氏は「中国は国際価格より安い値段でロシアのエネルギーを購入している。ロシアを支援しながら、自らも巨額の利益を得ている。これは欧米の対露制裁に反している」と批判した。
サム・レイノルズ氏は、国際エネルギー市場の再調整で今後、中国の液化天然ガスの輸出量は減るとの考えを示した。
同氏によると、北米や中東などでは液化天然ガス生産施設が新たに建てられている。
「ヨーロッパや北東アジアにおける液化天然ガス価格は将来数年間で、合理的な水準まで下がる。中国企業は転売できなくなるだろう」
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