コロナ後遺症、ワクチン接種後の発症、その治療法について

2022/11/01
更新: 2022/11/01

複数の研究により、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質は、宿主に病変を引き起こすことができる非常に毒性の高い炎症性タンパク質であることが示されている。

スパイクタンパク質の存在は、コロナ後遺症ワクチン接種後に発症する症状(post-vaccine syndrome)と密接に関連している。研究によると、スパイクタンパク質は、感染やワクチン接種の数カ月後にも体内に存在することがある。

米国では、後遺症に苦しむ患者が増加しており、ますます医療上の問題になっている。

米国疾病対策予防センター(CDC)のデータによると、現在、米国人の約7%が後遺症の症状を訴えており、その数は1500万人以上に上ると推定される。後遺症に苦しむ人たちのなかには、仕事に行けないほど衰弱している人もいるが、ワクチン接種後に発症する症状を経験した人たちにも同様のことが報告されている。

ワクチン有害事象報告システム(VAERS)のデータベースには、コロナワクチン接種後の有害事象が88万件以上報告されている。

しかし、統計学者たちはこれらの数は氷山の一角に過ぎないと主張する。

カナダの分子生物学者ジェシカ・ローズ氏は、過少報告係数を31と推定しており、実際には2700万人以上の米国人がワクチン接種後の有害事象に苦しんでいる可能性があると述べた。

15日に行われたFront Line COVID-19 Critical Care Alliance (FLCCC)の会議ではピエール・コリー博士が「ワクチンの被害者数は膨大」だとした上で十分なサービスが受けられていないと訴えた。

こうしたなか、多くの医師がワクチン後遺症の治療に取り組んでいる。FLCCCは臨床観察、患者からのフィードバック、広範な研究に基づいて最新の治療推奨事項を発表した。

FLCCCの共同創設者で最高科学責任者のポール・マリク博士は、エポックタイムズの取材に対し、推奨事項は患者のフィードバックや新しい治療法に関する研究に基づいて常に変更される可能性があると述べた。

しかし、治療法の選択肢を理解するためには、まずスパイクタンパク質がどのようにダメージを与えているのかを理解する必要がある。

 

スパイクタンパク質の病態

コロナ後遺症とワクチン接種後に発症する症状は、いずれもスパイクタンパク質の長期的な存在と関連しているため、類似した症状を起こすことが多い。

「ワクチン接種後の症候群の中核的な問題は、慢性的な免疫調節異常だ」と、マリク氏はFLCCCの会議で発言した。

スパイクタンパク質は慢性的な炎症を引き起こす可能性がある。炎症は、細胞のストレス、損傷、そして死に至ることもあることが、研究によって明らかになっている。 細胞は組織を構成し、異なる組織は臓器を形成し、臓器は私たち自身の生理システムの一部を構成している。したがって、スパイクタンパク質による傷害は、全身的な症候群であると言える。

スパイクタンパク質は、免疫異常を引き起こすことによって、慢性炎症を誘発する。スパイク蛋白は免疫細胞に入り込み、正常な免疫反応のスイッチを切り、代わりに炎症性経路を誘発する。

感染した免疫細胞の正常な免疫応答は、1型インターフェロンを放出し、他の免疫細胞にシグナルを送ってウイルス粒子に対する防御を強化することである。しかし、スパイクタンパク質は感染細胞のこのシグナル伝達を低下させ、感染が制御不能になると、非感染細胞もスパイクタンパク質を取り込んでダメージを受ける。

マリク氏によれば、スパイクタンパク質による長期的な損傷は、損傷を受けた細胞を再利用するオートファジー(細胞が自己成分を分解する機能)を阻害するという。通常、細胞がウイルス粒子に感染した場合、細胞はこれらの粒子を分解し、廃棄物として除去しようとする。

しかし、新型コロナウイルスの研究では、感染した患者のオートファジーのプロセスが低下し、最初の感染から数カ月後もスパイクタンパク質が体内に留まっていることが示された。

「スパイクタンパク質は、実に厄介な蛋白質だ」とマリク氏。「オートファジーのスイッチを切るので、スパイクは、これほど長い間、細胞内に留まることができる」

Front Line COVID-19 Critical Care Alliance(FLCCC)の共同創設者のポール・マリク博士。2022年10月14日撮影 (The Epoch Times)

免疫細胞の機能不全

スパイクタンパク質による免疫機能障害は、炎症を引き起こすだけでなく、がんの増殖、自己免疫疾患(免疫機構が自分自身に働いてしまい引き起こされた病気)の原因にもなると考えられている。

研究により、スパイクタンパク質はT細胞やナチュラルキラー細胞の働きを低下させ、疲弊させることが明らかになっている。この2つの細胞はがん細胞やウイルスに感染した細胞などの異常な細胞を殺す役割を担っている。そのため、これらの細胞による細胞性免疫の低下はスパイクに感染した細胞のクリアランスのタイミングを狂わせる一因となる可能性がある。

スパイクタンパク質の損傷はDNAの損傷につながるほか、スパイクタンパク質がDNAの修復を低下させることも研究で明らかになっている。DNAは紫外線、汚染物質、酸化剤などの内的・外的要因により日常的に傷つけられているため、常に修復を必要としている。

傷ついたDNAは細胞をがん化させる危険性があるが、T細胞やナチュラルキラー細胞の活性が低下していると、潜在的ながん細胞の増殖が抑制されなくなる可能性がある。

また、ワクチン接種後の機能障害として、自己免疫疾患も報告されている。

スパイクタンパク質は人体の他のタンパク質と類似した領域を多く持っている。つまり、これらの病気は、分子模倣性の高いスパイクタンパク質と関係している可能性がある。

そのため、免疫系がスパイクタンパク質を攻撃する際、構造の類似性から、スパイクタンパク質の領域に対して作られた抗体が、体内のタンパク質や組織に対しても反応する可能性がある。スパイクタンパク質に対して作られた抗体は、自己の組織にも結合して攻撃することが研究で明らかにされている。

 

スパイクプロテインは疲労の原因

スパイクタンパク質は、ミトコンドリアの機能不全にも関連している。細胞の発電所と一般的にいわれるミトコンドリアは、摂取した糖質からエネルギーを産出する役割を担っている。

スパイクタンパク質を投与したヒト神経細胞では、活性酸素の発生が多くなることが示されている。これはミトコンドリアの機能不全を示すもので、エネルギー産生の減少の可能性が示唆されている。

コロナ後遺症やワクチン接種後の症候で苦しんでいる人は、しばしば慢性疲労、ブレインフォグ(脳の霧)、運動不耐性、筋力低下を経験する。これらの症状は、ミトコンドリア機能障害を持つ人にもしばしば見られることから、関連がある可能性が指摘されている。

米フロリダ州オーランドで開催されたFLCCCカンファレンスで発表されたポール・マリク博士のスライド(提供:FLCCC)

 

スパイクタンパク質の血管や臓器へのダメージ

スパイクタンパク質は、特に血管を構成する細胞にダメージを与えることが示されている。スパイクタンパク質はACE2およびCD147受容体に結合し、炎症経路を誘発することができる。

マリク氏によれば、スパイクタンパク質によるダメージは病気というより、むしろ全身性の症候群に近いという。

「これは病気ではない。従来の病気のモデルには当てはまらない。これは、あらゆる臓器に影響を与える症候群だと言える。スパイクはどこにでも行く…だから、これは多系統の病気であり、一つの症状、一つの診断という、従来の病気のパラダイムには当てはまらない」

 

FLCCCのファーストライン治療法

コロナ後遺症とワクチン接種後に発症した症状は、いずれもスパイクタンパク質の存在に関連しているため、FLCCCが推奨する第一に施すべきファーストライン治療法は、主に2つのステップに分かれている。

まず、スパイクタンパク質を除去すること、次にその毒性を軽減することである。

ファーストライン治療法のほとんどは、オートファジーを再活性化することによって、スパイクタンパクを除去することに焦点を合わせてきた。

生活習慣では、断続的断食や日光を浴びるフォトバイオモジュレーション(光線療法)によってオートファジーを促進することができる。日光には、細胞のオートファジーを促進する赤外線が含まれている。

断続的断食は、インスリン感受性の改善、体重減少、炎症と自己免疫の減少など、さまざまな健康上の利点をもたらすことができる。

しかし、断食は成長を妨げる可能性があるため、18歳未満の人、妊娠中や授乳中の女性には推奨されていない。糖尿病や腎臓病を患っている人も、断続的断食を検討する前に主治医に確認することが推奨されている。

 

イベルメクチン

イベルメクチンは、安価で入手しやすいほか、安全性が高く、奏効率が高いという理由で、FLCCCや新型コロナの治療に携わる多くの医師から高く推奨されている。

イベルメクチンは、オートファジーを高め、スパイクタンパク質の除去を促すことができる。イベルメクチンはスパイクタンパクに対する親和性が高く、その領域に結合し、効果的に中和・固定化し破壊することが研究で示されている。

(Sonis Photography/Shutterstock)
 

FLCCCの医師は、イベルメクチンと断食が「相乗的」に作用して体内のスパイクタンパク質を除去できるとし、イベルメクチンを食前あるいは食後に服用することを勧めるとしている。

また、イベルメクチンはACE2やCD147と結合することができるため、細胞にスパイクタンパクが侵入して炎症を誘発することをブロックする。また、イベルメクチンは低酸素状態でもミトコンドリアが作り出すエネルギーを維持できることが研究で明らかにされている。

前出のコリー氏によると、ワクチン接種後何らかの症状を発症した患者の約7割〜9割がイベルメクチンを服用した10日以内に同薬に反応するという。

「患者はイベルメクチン反応者と非反応者に分類される。非反応者は、実際には治療がより困難な患者群だ」とマリク氏は指摘。4〜6週間治療しても反応がない患者には、より積極的な治療を行うことが推奨されるという。

一方で、イベルメクチンは過剰摂取すると混乱や意識障害を引き起こし、場合によっては死に至ることもある。しかし、この薬は適切な量を服用すれば、安全性が高いとされる。妊婦の服用に関する文献はほとんどないため、FLCCCは妊娠中の使用に対しては、慎重を要するとしている。

イベルメクチンを開発した大村智博士は共著の中で「イベルメクチンは、ヒトへの使用において驚くほど安全であることが証明されてきた」「イベルメクチンは副作用が少なく、安全な薬なので、医療従事者でなくても、ごく基本的で適切な訓練を受けていれば、服用することができる」と述べている。

 

低用量ナルトレキソン

低用量ナルトレキソン(LDN)療法は、コロナ後遺症治療の選択肢として最近話題になっている。

マリク氏は低用量ナルトレキソンについて、「非常に強力な抗炎症薬だ。多くの慢性炎症性疾患に使用されている」と述べた。

FLCCCの医師は、LDNによる治療後、多くの患者の症状が改善されるのを確認しているという。一方で効果がはっきりと現れるまでには、数ヶ月かかる可能性もある。

オピオイドやアルコール中毒の治療薬として認可されているナルトレキソン (innovationcompounding.com/screenshot by The Epoch Times)

 

ナルトレキソンは一般的には麻薬中毒などの治療薬として使われている。これらの治療薬として使われる場合、30~50mgという高用量で投与されているが、10分の1以下の1〜4.5mgほどの少量のナルトレキソン投与は、Toll様受容体を遮断し、炎症性サイトカインの産生を抑えことが研究で示されている。

臨床的には、LDNはワクチン後に発症した神経症状に対して有効であることが示されている。神経炎症を抑える作用があるため、FLCCCでは神経障害性疼痛、ブレインフォグ(脳の霧)、疲労やベル麻痺に有効であると記載されている。

 

レスベラトロール

レスベラトロールは抗酸化作用を持つポリフェノールの一種で、赤ワインやブルーベリー、ぶどう、ピーナッツなどに含まれている。

レスベラトロールは、抗炎症作用と抗酸化作用があり、がん細胞の成長を抑制することができると、研究により示されている。DNA修復経路を活性化するため、細胞のストレスを軽減し、がん細胞の形成を防ぐことができる。

ストレスを受けた細胞では、レスベラトロールはミトコンドリアが産生する活性酸素を減少させ、オートファジーを促進することができる。ミバエや線虫を用いた動物実験では、レスベラトロールを使用すると延命効果があることが示されている。

FLCCCはケルセチンとの摂取を推奨している。

 

低用量アスピリン

イベルメクチンと同様に、アスピリンも健康に多面的な影響を与えることが分かっている薬である。

アスピリンは、抗炎症作用と抗凝固作用があるため、血管内で微小な血栓が形成される可能性を低減させる。また、研究により、炎症経路や酸化ストレスを軽減し、神経保護作用もあることが示されている。

神経認知障害は、ワクチン接種後に発症する症状に悩む多くの人々の主な訴えとなっている。これには、ブレインフォグや末梢神経障害性疼痛が含まれる。

動物実験では、アスピリンを投与したネズミは認知機能の低下が低いことが示された。神経を損傷したネズミの研究では、アスピリンはその抗炎症性により神経保護作用があることも示唆された。

一方で、妊娠中のアスピリンの服用は出血などの副作用を引き起こす可能性がある。

 

メラトニン

メラトニンは、松果体から分泌されるホルモンで、安眠を促す効果があり、抗炎症作用と抗酸化作用を併せ持っている。

細胞内では、メラトニンは活性酸素を減らすことでミトコンドリアの健康を促進する。ミトコンドリアは多くの酸素を使うため、放射線やスパイクタンパク質の暴露などの環境毒素によってストレスを受けると、活性酸素を発生することがある。

そのため、抗酸化物質であるメラトニンは、酸化ダメージを防ぐことができる。また、ミトコンドリアからの電子の漏出を防ぐことで、エネルギー産生を最大化することが研究で明らかになっている。

また、オートファジー経路のブロックを解除することでオートファジーを促進し、細胞によるスパイクタンパク質の分解を促し、これらの有毒タンパク質の除去を後押しする。

抗酸化作用があるため、メラトニンはフリーラジカルによって損傷したDNAを修復する。また、メラトニンは、DNA修復を促進する遺伝子を活性化し、DNAの損傷につながる可能性のある遺伝子活性を抑制する。

FLCCCは、コロナ後遺症やワクチン接種後に発症する耳鳴り治療にもメラトニンを推奨している。

メラトニン(By Sergey Tarasov/Shutterstock)
 

 

コロナ後遺症とワクチン接種後に発症した症状の違い

コロナ後遺症と接種後に発症した症状は、どちらもスパイクタンパク質の負荷とスパイク曝露によるダメージが原因であるため、治療法も共通する部分が多い。

しかし、この2つにわずかな違いがあるとしてFLCCCは異なる治療法を推奨している。

「ワクチン接種後に発症した症状の場合、主な症状や主な臓器は神経系である」とマリク氏は言う。同氏の観察によると、およそ 「ワクチン接種後に症状を発症した患者の80%以上に、ある程度の神経障害がある」

マリク氏によると、ワクチン接種後に発症した症状は、後遺症よりも治療が難しく、より持続的で、2年近く衰弱した症状を呈する患者もいるという。

そのため、ワクチン接種後に発症した症状に対する治療は「より積極的で、より脳をターゲットにしたものになる」とマリク氏は述べた。

「コロナ後遺症は、時間とともによくなる傾向にある。持続する患者もいるが、ある程度は自己解決するようだ」とマリク氏は述べた。「問題はワクチン接種後に発症した症状が持続する可能性があることだ」

「この2つは似ているが、ワクチン接種後に発症した症状の方がはるかに治療が難しいので、より重点を置いている」
 

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。