「ウィズコロナ」へ急転換の中国 封鎖解除は良薬か劇薬か

2022/12/14
更新: 2022/12/13

先月下旬から全国で相次いだ「ゼロコロナ」政策への抗議運動「白紙革命」を受けて、中国当局は方向を急転換し、封鎖解除と「ウィズコロナ」へと舵を切った。国際社会と歩調を合わせる動きを歓迎する声もあるが、厳格な統治が3年間続いただけに、その反動への懸念も高まっている。

感染拡大のリスク

中国の李克強首相は9日、安徽省黄山で国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事らと会談した。ゲオルギエワ氏は中国がゼロコロナ政策を放棄したことについて歓迎すると同時に、ワクチン接種等の努力を怠ってはならないと述べた。

中国共産党の厳格なゼロコロナ政策では、感染者の隔離ばかり強調されてきた。ワクチン接種や医療・公共衛生部門の準備が整わないなか、感染拡大のリスクも高まっている。

国立感染症対策センター(CCDC)の元副所長である馮子健(ふう・しけん)氏は6日、国内トップ大学の清華大学での内部報告で「第一波の大規模感染がピークに達したとき、感染率は約60%に達し、その後徐々に安定期に入るだろう。最終的には人口の80〜90%が感染を経験するかもしれない」と述べた。中国青年報が報じた。

各地の病院の発熱外来に長蛇の列ができる様子は、動画として中国のSNSにアップされている。政府は8日、感染者の自宅治療の手引を発表した。感染者急増で検査キットや解熱剤などの薬の調達が追いつかず、薬局では薬が売り切れて価格が高騰している。いっぽう、政府発表の感染者数は12月に入ってから47%減少している。

コロナの「後遺症」

当局がゼロコロナ政策を緩和しても、民衆の心に植え付けられた恐怖は取り除くことができない。中国国内の医師によると、発熱等の症状が現れた患者が複数種類の薬を摂取し、急性の肝不全を起こして集中治療室に送られるケースが複数報告されているという。

地方の政府部門ではゼロコロナ政策の緩和にまつわる混乱も発生している。

ゼロコロナ政策の緩和が発表されると、一部地域では隔離用の臨時施設や検査スポットが相次ぎ撤去され、廃材を回収する業者が街中を回り始めた。いっぽう、中国国家衛生健康委員会は9日、感染の再拡大に備えて、「隔離用の臨時施設を病院に改築する」と発表した。各地方当局の対応はまちまちで、隔離用の臨時施設を建設中の地域と解体工事を行う地域が併存する奇妙な現象が見られた。

ゼロコロナ政策の実行者らに対する扱いも一変した。一時は法執行機関と比肩する権力を持っていた、「大白(ダーバイ)」と呼ばれる白い防護服に身を包んだ感染防止要員は職を失った。給料の未払いが発生するケースもあり、感染防止要員がデモを行う様子などがSNS上に投稿されている。

数々の蛮行が記録されているだけに、感染防止要員に向けられる民衆の視線は冷たい。「感染防止要員を務めたことのある人や当局の嘘を簡単に信じる人を採用しない」という通達を出す企業も現れている。

政策は本末転倒

中国の税関総署が発表した11月の貿易統計では、輸出入ともに市場の予想を上回る落ち込みとなった。直接的な要因はコロナ関連規制による国内の生産混乱などとされているが、世界で起きている『脱中国』の流れが根本的な原因だろう。

規制緩和を見越して、中国の各地方政府は海外からの投資を誘致しようと、経済代表団を日本やドイツ、韓国などに派遣している。ハイテク産業の誘致を旗印に掲げ、地場産業の発達と雇用の創出を謳っている。

なお、地方政府のこのような動きに対する中国ネットユーザーの否定的な意見が複数見られた。「地方政府の役人が家族のために用意した買い物旅行ではないか」「撤退する外資を無視して新規を呼び込むのか」との意見に加え、平時は外国製品への不買を呼びかけながら困窮すると外資にすがる政府を「破廉恥」だと批判する声もあった。

中国の対外貿易額が激減する背景には、当然ながら厳格なゼロコロナ政策の影響がある。しかし、中国共産党政権が他国との関係を悪化させ、世界で「脱中国」の流れを巻き起こしたことこそ問題の本質ではないだろうか。外資の呼び込みを行うことこそ本末転倒に他ならない。

(翻訳編集・李凌)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
秦鵬
時事評論家。自身の動画番組「秦鵬政経観察」で国際情勢、米中の政治・経済分野を解説。中国清華大学MBA取得。長年、企業コンサルタントを務めた。米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)、新唐人テレビ(NTD)などにも評論家として出演。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。
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