「多様な食文化を知る楽しさと自然回帰への視点」台湾優良食品展を終えて

2022/12/26
更新: 2022/12/26

食文化とは、その民族が生きてきた確かな歴史であるとともに、現在(さらには未来も)その国や地域に、人間が健康に生きている何よりの証です。

「食文化」を失うことの代償

日本には、ユネスコ無形文化遺産にも登録された誇らしい和食文化があります。それと同様に、他の国にもまた、健康的で魅力あふれる食文化がたくさんあるに違いないのです。

そのように考えられる豊かな想像力と、互いの文化を楽しみながら需要できる双方向的な感覚をもてることは、現代の私たちにとって、あえて言えば国際理解や世界平和の第一歩とも言えるほど、重要な条件となっているのではないでしょうか。

人は、良質な食物をとることで健康的に生きられるものです。
また、健康であるからこそ食事そのものを人生の楽しみにもできます。

それは必ずしも一流レストランで高額な料理を食べることではなく、むしろ日常の食生活のなかで作られる、愛情あふれた手料理として実践されるべきものと言えます。

さて、そう考えたとき、とくに20世紀後半から21世紀初めの現在に至るまでの数十年間に、私たちの食生活はどのように変化したでしょうか。

戦後の日本を考えてみても、確かに食べ物は贅沢になりました。栄養豊富な食品ばかりで、米飯以外の油脂や小麦から摂取するカロリーも、あり余るほどです。

今は誰でも、保健や栄養学の知識を、それなりには有しているでしょう。だからこそ「不足しがちな栄養素はサプリメントを飲めばよい」と考えるのです。

今の時代は、それも手軽な栄養摂取の方法であり、全てを否定するべきではないかもしれません。しかし、それを食文化の喪失という視点から見ると、そこには大きな懸念材料があるのではないでしょうか。

「これ、おいしいですね」と日本では珍しい「麻辣麺」を試食する来場者(大紀元)

 

不足する栄養素は「サプリで補充?」

医療技術の発達により、世界一と言われるほど日本の平均寿命が延びたのは誠に結構なことです。しかし、日本人が心身ともに健康であり、本当に幸せであるかというと、それはまた別の問題になるようです。

戦前の日本ではむしろ少なかったはずの生活習慣病や成人病、さらには「2人に1人が罹患する」と言われる各種の癌など、実に厄介な疾病が私たちの身近にあるのは、一体なぜなのでしょうか。

その問いの答えは一つではないと思われますが、やはり食物の種類や内容など、現代の食生活に関連する原因が第一に挙げられるでしょう。つまりは、私たちが日常的に食べているものが、現代病の大きな要因の一つとなっているのです。

そこでよく指摘されるのが、素材に対して過剰な加工をくわえ、添加物や保存料をたっぷり入れた「超加工食品」を食べ過ぎるという問題です。

それを分かっていても、例えば、今日の昼食にコンビニで買ったお弁当の中身を思い出してみると「避けたいものが、ずいぶん入っていたなあ」というのが正直なところではないでしょうか。

「こんにゃく球の3Q果が入ったドリンク、飲んでみたいな」(大紀元)

 

「自然の恵みに感謝して、そのまま食べる」

11月11日から13日、同18日から20日、12月16日から18日の3期にわたり、東京の誠品生活日本橋で、書籍売り場のイベントコーナーを借りて「台湾優良食品展示会」が行われました。

今回の催しは、会場での販売はなく、日本の顧客を対象とする商品紹介に重点をおいたものです。台湾の老舗から新進気鋭の食品メーカー延べ23社が、自社の理念や理想を具現化した自慢の食品を出展するという、なかなか盛大なイベントとなりました。

「優良食品」の名の通り、どの商品も台湾産の良質な原材料を使い、防腐剤はもちろん、香料や色素などの人工添加物は不使用。身体に優しく、消費者の健康を第一に考えた食品ばかりです。

もちろん台湾側にすれば、今回のイベントはビジネスの第一段階であり、将来的には、日本市場に販路を開いて多く輸出したいというのが台湾メーカーの希望です。

ただ、それ以上に「日本の皆さんに、ぜひ台湾の優良食品を食べていただきたい」という純粋な熱意があることは間違いありません。

こうした優良食品の基本コンセプトは何かというと、「自然の恵みに感謝して、できるだけ加工せず、自然に近い状態で食べる」ということに尽きます。

言葉を換えれば、食物のなかに「神様」の存在を意識すること。それはちょうど、日本語の「いただきます」に近い感覚でしょう。有機栽培の農産物や新鮮な海産物を「工場の産品」にするのではなく、できるだけ「自然のまま」を消費者の食卓へ届けることが、それを商品化するメーカーの使命なのです。

「いかがですか?」香り豊かな台湾の「高山極品茶」を試飲。(大紀元)

 

「美味しく、ヘルシー」は不可欠な車の両輪

何といっても美味しくなければ、食事の楽しみはありません。

日常の食事における「美味しい」という感覚は、普段から食べ慣れている食品であることが多いのですが、今回の「台湾優良食品展示会」では来場者に試食や試飲をしていただき、初めて味わう台湾食品との楽しい出会いを体験してもらうことを目指しました。

出品された食品は、いずれも各メーカー自慢の厳選された「優良食品」ばかり。

美味しくてヘルシー(健康的)であることは、どちらも欠かせない車の両輪です。
なぜ厳選された優良食品であるかというと(これは台湾でも日本でも似たような事情ですが)やはり健康面から見て「あまり優良とは言えない食品」が市場に多く出回っているからなのです。

台湾でも近年、健康志向が非常に高まっており、日常的な食事にしても「美味しく、ヘルシーな食品」へのニーズが主流となっています。そうした激戦を勝ち抜いた優良食品のなかの「精鋭部隊」が、今回、日本の消費者にお披露目されたということです。

台湾の調味料「滷味包」を使うと本格的な台湾料理になります(大紀元)

 

「腐る自然現象」を薬剤で防止する反自然

今回の展示会で紹介された食品のほとんどが、防腐剤をふくむ「添加物不使用」をうたっています。

食物は、ある一定の期間が過ぎれば自然に劣化して味が落ち、やがて腐敗して食べられなくなります。それは全く自然な現象なのですが、もちろんお店に並ぶ商品としては、あまりに早く腐敗しては困るし、消費者に健康被害を出すことは絶対に避けなければなりません。

そこで品質を長く保つために、防腐剤をふくむ各種の添加物(保存料、香料、着色料、甘味料など)がそのなかに加えられることになります。

商品であるという前提で言えば、添加物の必要性を完全には否定できませんが、やはり本来の考え方からすれば「反自然」ということになるのではないでしょうか。

食品に防腐剤を加えることと、おにぎりの具に梅干を入れることとは根本的に違うのです。

大豆タンパクなど「植物性のお肉」でできたチキンナゲット(大紀元)

 

大腸がんを予防する「菜食」への再評価

台湾には人口の10%にあたる素食者(ベジタリアン)がいます。
台湾の総人口が約2300万人とすると、単純に計算して「230万人」ということになりますので、決して少ない数字ではありません。

そのような菜食主義者を対象とする食品は「素」という字で表記されます。この「素」の食品が台湾では非常に発達しており、チキンナゲットからインスタント麺まで、何でもあるのです。

台湾のベジタリアンは、主として宗教や信仰上の理由から菜食を実践している人たちですが、なかには近年の健康志向の考え方から、特に信仰とは関係なく、菜食中心にしている人も少なくありません。

日本人が罹患する各種の癌のなかで、大腸がんは特に多いと言われています。その大腸がんが発生する部位は、大腸の最後部であるS字結腸から直腸部分であることが分かっています。この部位に、発がん性物質が便となって長時間たまることが大腸がんの要因になると考えられています。

食物の種類で言うと、ベーコンやソーセージなどの加工肉製品、および豚肉や牛肉の赤身肉を食べ過ぎることで大腸がんのリスクが高くなると言われています。

そこで台湾のみならず、日本で再評価していただきたいのが、完全菜食ではないにしても「菜食を中心とする食生活」なのです。

もちろん、ベジタリアンであってもなくても、健康維持に不可欠なタンパク質は何らかの方法で摂らなければなりません。

そこで今回の展示会でも紹介されていた各種のベジミート(植物性のお肉)が、その代替品になります。けっこう良い味の「お肉」が楽しめて、来場者にも好評でした。

プロの調理師さんも来て、ベジミートを使った料理を披露してくれました(大紀元)

プロの調理師さんも来て、ベジミートを使った料理を披露してくれました(大紀元)

 

グルテンフリーは「お米の麺」で解決

近年よく耳にするグルテンフリーとは、セリアック病の患者を対象とする食事療法のことです。

セリアック病は、小麦のタンパク質を主とする「グルテン」に小腸が異常反応を起こす病気です。遺伝的な体質が主な要因ですが、自己免疫系が小腸の組織を攻撃することで炎症が起き、小腸の細胞が破壊されてしまうため、栄養の吸収率が低下するほか、腹痛や下痢、倦怠感などの症状がでます。

その治療には小麦の食事を避けることが第一ですが、ここで困ることは、自分が小麦に合わない体質であることを知らない場合が多いことなのです。

洋の東西を問わず、小麦が世界の主要穀物であることは言うまでもありません。
パンも、麺も、おいしいケーキやクッキーも、小麦粉があってこそできるものです。そこで、あくまでも「小麦が合わない体質の人」に限ってのことですが、小麦を避けるグルテンフリーを試してみたら体調が明らかに良くなったという事例が多く見られたのです。

さて、皆様はいかがでしょうか。もしかしたら、ご自身が小麦にあまり合わない体質でありながら、何十年も気づかずに、パンやうどんを食べてきたということはないでしょうか。

そこで皆様にご提案ですが、試しに4週間、小麦食品を避けるグルテンフリーを実践してみてはいかがでしょう。

もちろんダイエットが目的ではないので、主食もふくめて健康維持に必要な各種の栄養はきちんと摂ります。そのようにして、もし体調の改善が見られたら、あなたは「小麦が合わない体質」だったのかも知れません。

小麦粉の麺に替わるものとしてお薦めなのが、今回の展示会でも紹介された聖光牌の永盛米粉シリーズです。台湾産100%のインディカ米を使った米粉(ビーフン)で、グルテンフリーの食事にはうってつけ。作り方も簡単で、味も日本人に合うと好評でした。

「浦田竹塩」の社長・陳村栄さんも、会場でプレゼンしてくれました(大紀元)

 

「体に良い塩」との新たな出会い

日本では長らく、高血圧の最大の要因として「塩分の過剰摂取」を目の敵にしてきました。

しかし、その考えは、少し極端ではなかったでしょうか。
確かに塩分の過剰摂取は良くありません。その前提は訂正しなくて良いのですが、体が必要とするミネラルのなかでも発汗などで常に失われる塩分は、むしろ必ず適量を補給しなければならない重要な栄養素の一つでもあるはずです。

今回の展覧会でも紹介された「浦田竹鹽(塩)」は、台湾産の桂竹に海塩をぎっしり詰め、竹筒ごと高温で三日三晩かけて焼くことによって得られる貴重な塩です。

こうした過程を経て、竹のミネラル分が塩に移るとともに、海塩のナトリウム分が1/3に抑えられることで、非常に体に優しく、料理の味を引き立てる「絶品の塩」になります。

塩分不足は、筋肉の痙攣や全身の倦怠感、脱力感などをもたらします。高血圧ばかりを気にして塩をむやみに忌避するのではなく、良質な塩を選択し、適量をきちんと摂ることが肝心なのです。

12月の展示会では、「浦田竹鹽」の社長・陳村栄さんも台湾から来日して、現場でプレゼンをしてくれました。

陳村栄さんは「このイベントを通じ、日本の皆様に喜んでいただくことができて本当に嬉しいです。私の浦田竹鹽だけでなく、台湾の優良食品を、ぜひ日本の皆様にたくさん食べていただきたいですね」と話します。

今回の展示会を良い機会として、「おいしく、ヘルシー」な新しい食文化を日台共同で築き上げていけたら、こんなに素晴らしいことはありません。

「竹のなかで焼いたお塩は体に優しいんだって」(大紀元)

 

鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。