政府の奨学金で海外に留学した30人以上の中国人博士課程の学生が、中国共産党への忠誠を誓う契約書などに署名させられていたことが明らかになった。契約書は「政府に意義を唱えない」といった内容で、違反した場合は家族が賠償責任を負う。スウェーデン紙「ダーゲンス・ニュヘテル」12日付が報じた。
ダーゲンス・ニュヘテルが入手した文書によれば、学生らは中国教育部の管下にある中国国家留学基金管理委員会(CSC)を通じて名門ルンド大学やカロリンスカ研究所、スウェーデン王立工科大学などに留学している。
中国国家留学基金管理委員会は名目上、世界中の大学との国際学術交流を推進し、毎年数百人の中国人留学生を日本や米国、欧州諸国に送り出している。
報道によると、学生は中国共産党に忠誠を誓うだけでなく、「政府の利益に奉仕する」「当局の意に反する『活動』をしない」といった内容の契約書に署名させられた。学生が契約書に違反したり、学業を「中断」したりした場合、保証人(通常は近親者)は奨学金の約3分の1の返済を求められる。
そのほか契約書には、学生の保証人は、留学中のいかなる期間も中国から出国することが許されないと明記されていた。
中国は2021年に2万7000人の学生を公費で海外留学させると発表していたが、留学終了後に「帰国して国のために尽くす」といった誓約を含む、党への忠誠を条件としていた。ラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、この慣行は10年以上前から行われているという。
発覚したきっかけ
この問題が表面化したのは、ルンド大学の中国人留学生が、学業不振を理由に進学を断られたことがきっかけだった。学生は契約書に違反することになるため、「家族が損害を受ける」と懸念する言葉をこぼしていたという。
問題発覚後、ルンド大学が調査を行なったところ、別の中国留学生も同様の契約書に署名させられていたことがわかった。
スウェーデンの他の大学でも調査を進めており、カロリンスカ研究所は「当面の間、中国国家留学基金管理委員会を通した留学生の受け入れは停止する」と述べた。
留学生の言動に目を光らせる中国共産党
中国共産党から迫害を受け米国に逃れた界立建氏によれば、中国共産党との契約を破った場合、罰せられるのは親族だけではない。
「大学の講師や推薦者、そして大学も連帯責任を負うことになる。これは共同処罰に等しい」とラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に答えた。
さらに華僑総会、学友会、同郷会なども海外に渡った中国人の言動を監視し、党に忠誠を示す政治活動を主導しているという。
例えば、中国の高官や代表団が海外を訪問する場合、彼らを歓迎するための横断幕、ポスターなどを手配するための資金が用意される。党に忠誠を示すスローガンを叫ぶリハーサルやイベントでの各個人のパフォーマンスも細かくチェックされると界氏は述べた。
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