スマート電球や電気自動車であなたを監視…中国、IoT機器から情報収集=報告書

2023/01/29
更新: 2023/01/29

中国共産党は、電気自動車や家電製品などに使われるマイクロチップを通じて米国の武器配備情報や一般人の生活を監視する可能性があるーー。英国の中国研究者で元外交官のチャールズ・パートン氏は、中国製のIoT(モノのインターネット)による情報収集に警告を発している。

パートン氏はコンサルティング会社OODAを通して発表した報告書の中で、携帯電話の通信を使いIoTに接続する「セルラーIoT」の危険性を指摘した。

IoTとは、データを受送信するほか相互通信もでき、収集された情報に基づいて行動する機器もある。つまり党の利益のためのスパイ活動や知的財産の窃盗も、従来よりも簡単に実行できるようになる。

中国共産党がIoTを駆使して世界中の情報網を管理しようとするのはなぜか。パートン氏は報告の中で、党の長期戦略である「中華民族の偉大なる復興」を2049年までに達成することにあると指摘する。これは、「米国に取って代わる超大国となり、権威主義的な統治システムを強化して世界秩序を再設定」することを意図していると説明する。

「中国共産党は超大国になるために、経済発展や軍事力増強のみならず、新興技術を強く重視している。党はデータを『戦略的資源』とみなし、軍事、経済、政治、文化などあらゆる領域で党の利益に貢献できる」

スマートデバイス分野、中国企業が世界市場で大手

中国製IoTデバイスは、米国の兵器配備情報の漏洩といった国家安全保障のリスクも招きかねない。報告書によれば、中国の情報機関はサプライチェーンや物流システムに組み込まれた国内外のIoTデバイスを通じて「予備部品や兵器システムがどこにどれだけ運ばれたのか、正確に把握」できてしまうという。

このほか、中国共産党は政府システムや家庭用電化製品などのIoTデバイスを通して、個人の身元、習慣、連絡先などの情報を収集し、政府要人の追跡や反体制派の弾圧に使用する可能性があるとした。

こうしたスマートデバイス分野はすでに世界市場で中国企業が強く、中国企業3社(クエクテル、フィボコム、中国移動通信)で、世界市場の54%を占める。

中国共産党は「互恵関係(ウィンウィン)」や「持続可能な(サスティナビリティ)」など党の都合次第で西側が発信した言葉の定義を塗り替えている。パートン氏は「スマートシティ」も例外ではないとした。

「クエクテル、フィボコム、ハイクビジョンのカメラ、ハイシリコンの半導体、華為の5Gインフラが連携すれば『スマートシティ』は完成する。しかし、これは新疆ウイグル自治区のような監視社会を婉曲した表現にすぎない」

経済と安全保障のリスク

パートン氏は、各国は中国製IoTデバイスが政府機器や重要な国家インフラに組み込まれているかを「徹底的に監査」し、2025年末までに中国製IoTデバイスの新規購入禁止、既存製品の交換など、サプライチェーンから追放する措置を早急に取るべきだしている。

今月初旬には、英政府の公用車をから中国製の追跡デバイスが発見されたことが明らかになり、中国のスパイウェアに対する懸念が高まっている。

英政府あてに報告書を送ったパートン氏は英デイリー・テレグラフの取材に次のように語った。

「我々はこの脅威に気付いていない。中国は、この市場の支配を目論んでいる。そうなれば、各国が対中依存を強めるだけでなく、中国に膨大なデータを吸われてしまうことになる」

Lily Zhou