国連安保理決議違反で終末に向かう金正恩政権—誤算の可能性高まる

2023/01/27
更新: 2023/01/27

北朝鮮は2022年、年明けと同じように、国連安全保障理事会の決議に反してミサイルを発射して年を終えた。 そして、昨年、今までにない頻度でミサイル発射を行った北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)は、2023年の年明けに核弾頭の保有量を「幾何学級数的」に増やすことを命じた。

もしそれが現実となり、金政権が核攻撃を命じたなら、韓国と米国の軍隊は、同盟・提携国とともに金政権を終わらせることを誓っている。

AP通信によると、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はビデオ会議で軍高官に対し、「新年を迎えたが、わが国の安全保障の状況は非常に厳しい。 わが軍は、敵からのあらゆる挑発に対し、一戦を辞さないという確固たる決意をもって断固として制裁しなければならない」と述べた。

フランス通信は、北朝鮮が2023年1月1日に、日本海(韓国名:東海)に向けて短距離弾道ミサイルを発射したと報じた。 韓国の統合参謀本部によれば、ミサイルは400キロ飛んで海に落下した。 専門家らは、北朝鮮は国連決議違反を繰り返すことで誤算のリスクを高め、北東アジアおよびその他地域の平和と安全の安定を脅かしているとみている。

韓国政府系報道機関の聯合ニュースによれば、韓国統合参謀本部は声明で、「わが軍は、北朝鮮の挑発に対し、圧倒的な対応能力をもって万全の準備態勢を維持する」と述べた。

日本は元旦に行われたミサイル発射に対し、北朝鮮に抗議した。 このような軍事活動は、「日本の安全保障にとって重大かつ切迫した脅威であり、地域および国際社会の平和と安全を著しく損なうものである」と日本の2022年国防白書は述べている。

日本は朝鮮半島の緊張が高まる中で、弾道ミサイル防衛を強化している。 ジャパンタイムズ紙によると、日本海上自衛隊は2022年11月、ハワイでSM -3ブロックIBとSM -3ブロックIIA迎撃ミサイルで短距離および中距離弾道ミサイル目標を撃墜する演習を行った。 日本と米国が開発した先進兵器であるSM-3ブロック IIAを日本の軍艦が発射したのはこれが初めてとなる。

「北朝鮮のミサイル実験は、米国とアジア同盟国に対する軍事的弱点を補うために核兵器を拡大しようとする北朝鮮の意図を示すもので、地域の緊張を高めるだけでなく、近隣諸国への脅威も高めるものだ。 しかし、北朝鮮はこれまで米国、日本、韓国の結束にくさびを打ち込もうとしてきたが、最新の動向を見ると、挑発を繰り返すことでかえって逆効果となっている」とジャパンタイムズは報じている。

2023年1月上旬の報道によると、日韓当局は、北朝鮮のミサイル発射をリアルタイムで捉えるレーダーデータを共有する方法を模索している。 NKニュースによると、情報共有の強化によりミサイル実験への対応改善が期待され、年内に合意に至る可能性がある。

東京大学先端科学技術研究センターの特任教授、山口亮氏(Ryo Hinata – Yamaguchi)氏はNKニュースに対し、「日本と韓国にとって最大の相互利益は、ミサイルの察知と追跡の精度が高まるということであり、それは迎撃と反撃の両方に不可欠だ」と語った。

2023年1月、韓国当局は、北朝鮮への共同対応を強化するために米国とも協力していると発表した。

2022年、北朝鮮は1日に23発を発射するなど、他のどの年よりも多くのミサイルを発射した。 CNNによると、北朝鮮は12月末までに90発以上の巡航ミサイルと弾道ミサイルを発射した。 2022年11月に韓国の李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防相は、ロイド・オースティン米国防長官と会談した後、両国は「戦術核兵器の使用も含め、北朝鮮によるいかなる核攻撃も容認できず、そうなれば同盟の圧倒的かつ断固とした対応で金正恩政権の終わりをもたらすだろう。 これは北朝鮮に対する強い警告だ」と述べた。

北朝鮮の挑発と地域の安定を脅かす行為に対して、オースティン米国防長官は米韓同盟は「堅固」なことを確認し、

「米国は引き続き韓国の防衛を全面的に約束し、 拡大抑止強化に対するコミットメントに揺るぎはない。 それには、核・従来型ミサイル防衛を含むあらゆる防衛能力が含まれる」と述べた。

金政権、「深刻な結果」に直面

米国国家防衛戦略(NDS)は、北朝鮮の脅威は中国やロシアの脅威とは比較にならないものの、米国とその同盟・提携国にとって抑止上のジレンマであるとしている。 NDSは、「北朝鮮は、化学兵器の備蓄も含め、核弾道ミサイルや核以外の戦闘能力を拡大、多様化、改善しており、米国本土とインド太平洋地域に持続的な脅威と危険の増大をもたらしている。 朝鮮半島で危機や紛争が発生すれば多数の核武装勢力が関与することになり、紛争拡大のリスクが生じるだろう」との見解を示している。

また、NDSは金政権が核兵器を使用すれば「深刻な結果」に直面することを明確に示し、韓国の李国防相と同じく、そうした攻撃は金政権の終わりになるとのメッセージを打ち出している。

NDSは、「核兵器を使用した場合、金政権が生き残る道はない。 核兵器を使わなくても、北朝鮮は東アジアで迅速な戦略的攻撃を行う可能性もある。 米国の核兵器は、引き続きそのような攻撃の抑止力となる」と述べている。

報道によると、クリスマスの翌日、北朝鮮は韓国領空に5機のドローンを5時間飛行させ、韓国軍は戦闘機、攻撃ヘリコプター、その他の航空機を緊急発進させた。 そのうち1機のドローンはソウルに到達し、その後韓国軍のレーダーから消失した。 韓国中央日報によれば、ドローンは大統領府には近づかず、韓国当局は「重要な施設近辺ではさらに優れた防衛システムが使われている」と述べた。

北朝鮮のミサイル精度に疑問

北朝鮮が、核実験とミサイル実験の停止を求める国連安全保障理事会決議に違反して無責任で無謀なミサイル発射を続ける中、誤算のリスクは依然として高い。

これまでのところ、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル (ICBM)実験は、近隣諸国への着弾を避けるために急角度で発射されている。 AP通信によると、ICBMは標準的な軌道による発射が行われておらず、北朝鮮の核兵器の信頼性は依然として疑問視される。 金正恩総書記の妹である金与正氏は、北朝鮮の兵器精度とスパイ衛星開発に対する疑念に反論した。 AP通信によると、北朝鮮は最近、最初の軍事偵察衛星をテストしたと主張、宇宙から撮影した韓国の都市の低解像度の写真を2枚公開している。 2022年12月下旬のスパイ衛星の主張が疑問視されていることに対し、金与正氏は、北朝鮮がその実行可能性と精度を証明するために太平洋に向かってミサイルを発射することもできると示唆した。

「自分は疑問を払拭できる。 我々が通常軌道でICBMを発射すればそれがすぐにわかるだろう」と朝鮮労働党中央委員会副部長の肩書を持つ金与正氏は述べた。 同氏は兄に次いで最も影響力のある高官とみなされている。

制裁と非核化を求める国際的圧力にもかかわらず、北朝鮮は防衛を強化することを誓っている。 金正恩氏は2022年9月、同政権は「核兵器を決して放棄せず、非核化も交渉も絶対にありえず、その過程で取引するための交渉の切り札もない」と述べた。

高まる脅威への対応強化

2022年10月、在韓米軍はソウルの南200キロメートルに位置する終末高高度防衛ミサイル(THAAD)システムに新たな装備を導入した。 韓国当局は、今回の強化について詳細は明らかにしなかったが、「北朝鮮のミサイル脅威から韓国国民を守り、中核資産の防衛能力をさらに強化するために、既存のTHAADシステムの防衛能力を向上させるもの」と述べた。

THAADは短距離、比較的短い中距離、中距離の弾道ミサイルを撃墜できる。 弾頭は装備していないが、高速で標的を攻撃し、破壊する。

米軍はまた、北朝鮮の弾道ミサイル発射を察知するために韓国で宇宙軍部隊を立ち上げた。 2022年12月に発足したこの新部隊は、ミサイル警告や位置・航法・時刻、地域内の衛星通信など、宇宙での活動とサービスを担当する。

CNNによれば、在韓米宇宙軍の指揮官ジョシュア・マッカリオン中佐は、「私とガーディアン(宇宙軍要員)は昼夜を問わず出撃する準備ができている」と表明し、 「敵がどの国であれ、(このメッセージを)受け止めてほしい」と述べた。

また、12月には、米国空軍のB-52爆撃機とF-22ステルス戦闘機が、F-35とF-15戦闘機を含む韓国の戦闘機と飛行し、済州島の南西部で軍事演習を行った。

 

Indo-Pacific Defence Forum