「白髪革命」武漢で再び大規模デモ、大連にも飛び火、医療改革めぐり

2023/02/16
更新: 2023/05/26

湖北省武漢市で15日、医薬品補助の削減を伴う制度改革に抗議して「二度目」となる大規模デモが発生した。デモ参加者の多くが退職者などの高齢者であることから、ネット上では白紙革命ならぬ「白髪(はくはつ)革命」と呼ばれている。

武漢と同日、大連でも連帯の抗議デモが発生

これに先立ち、同市では8日にも1万人以上が参加したデモが起きていた。その際「政府が問題を解決しない場合は、15日にもっと大規模な抗議行動を行う」ことが予告されていた。つまり今回のデモは予告通りに起きたことになる。

前回は武漢市の市政府庁舎前の1カ所のみだったが、今回は武漢だけでなく、これと連帯する形で1千キロ以上離れた遼寧省大連市でも、同じ15日に、医療補助削減反対の大規模なデモが発生した。

この日、抗議のために武漢市街に繰り出した市民は数万から数十万人と言われている。

著名な中国人調査記者である趙蘭健氏は同日「市最大の繁華街である解放大道は身動きがとれないほどの混雑ぶりだ。地下鉄の出入り口や市内の住宅地は封鎖された」とツイートするとともに、数々の現場映像も添えた。

趙氏は「ついに最初の一発が撃たれた。このようなデモは今後、後を絶たないだろう。しかし昔(六四天安門事件の)学生たちのハンガーストライキにすら無関心だったのに(当局は)今回の老人の散歩を気にするだろうか?」と疑問を呈しながらも、「現場の警察は大慌てだった」と書いている。

趙氏によると「制度改革後のスズメの涙ほどのお金だけでは、どうせ生きられない。なんならいっそここで死んでもいい、と腹を括っている老人が多い」という。

さらに趙氏は「今回は(若者中心の)白紙革命より手ごわいぞ。亀の甲より年の功だ。このご老人たちは全員、あの凄惨な文化大革命を生き残った精鋭だ。闘争においては、お手の物さ」「これほどの人数だ、さあどうやって逮捕する?しかも死を恐れない年寄りばかりだ」と綴っている。

容認できない医療改革

今月1日から実施された医療保険制度の改革により、高齢者たちはこれまで毎月260元(約5000円)もらえていた医薬品補助が83元(約1600円)に減らされた。地方によってはもっと少ないケースもあるようだ。

「以前の補助金ならなんとかやっていけたが、改正後の金額では薬一つ買えない」「医薬費の払い戻しを受けられる金額はわずかで、有用な薬は医療保険リストに載っていない。医療保険を使えるのは、役に立たない薬ばかりなのが現状だ。もはやほとんど自費医療に等しい」と訴える武漢市民の音声ファイルがネット上で広く拡散されている。

「このままでは、人々は反乱を起こすしかない」と武漢市民の徐さんは大紀元の記者に訴えた。

混乱する現場

15日、武漢のデモ現場で老人たちはスピーチしたり、スローガンを叫んだり、革命歌の「国際歌(インターナショナル)」を歌うなどして抗議の意を表し、医療保険改革の撤回を求めた。

現場には大量の警察官が配備された。警察はデモ隊の排除を強行したため、一部の高齢者が地面に倒れる様子などを捉えた映像がネット上に拡散されている。

市民によって撮影された現場映像のなかには、地面に倒れた老人が意識を失っている様子や「警察が暴力を振るった」などと叫ぶ老人たちの姿があった。

怒り心頭の老人たちは警察を罵り、なかには「銃で我々を全員殺せ」と凄んだり「打倒、反動政府」のスローガンを叫ぶ人もいた。

抗議デモをめぐっては、逮捕者も出ているようだ。「抗議現場へ行った友人が警察に逮捕された」と明かす市民もいる。

武漢市民の徐さんは15日、大紀元の取材に対し「警察が現場で抗議する高齢者を列から引きずり出し、路上に停めてあった4、5台のバスの中へ詰め込む様子を目撃した」と明かした。

武漢市民の常さん(仮名)も同日大紀元に対し、「政府の医療改革は人々の生存を脅かしている」「これまで声を上げることができなかった人たちまで、みんな街に繰り出した。武漢では、外へ出られる人は全て街に繰り出した」と話した。

子供を「人質」にする新措置

前出の趙蘭健氏は16日、このたび「中国政府が発動した新措置」を暴露した。

趙氏が自身のツイートに添付した、武漢市民と思われる投稿のスクリーンショットにはこう書かれている。

「今時の教師は、保護者を管理することも仕事なのか?子供の通う学校の教師から初めて受けた電話の内容は、なんと武漢の医療改革の件について『子供の保護者から家族の老人に、集会に参加したり騒いだりしないよう説得する。何かあれば教師に知らせるように』だった。このような電話を、一人ひとりの保護者にかけるよう教師に求めたのは教育当局だそうだ」

趙氏は「これが中国政府が発動した新措置だ。子供を人質にして、老人たちがおとなしく言うこと聞くよう脅迫している。これ見て、あなたはそれでも(中国で)子供を産みたいと思うか?中国では、子は親の首に巻かれる赤い鎖なのだ」と綴った。

武漢の抗議デモで、力強い「お年寄り」たちが歌っていた革命歌「国際歌(インターナショナル)」のなかに「我們要做天下的主人(我らは天下の主人となるのだ)」という歌詞がある。

その歌詞に呼応するように、武漢や大連での人民による勇気ある行動に対し、ネット上では歓迎の声があふれている。「よくやった!これこそ、国民が真に”主人”になれる唯一の方法だ」ー-。

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。