独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)の中国法人トップが最近、新疆ウイグル自治区にある乗用車工場を訪問し「強制労働の証拠は見られなかった」と述べた。同地区での人権侵害を訴える国際議連の創設者やウイグル人団体は同氏の発言を批判している。
中国法人トップのラルフ・ブラントシュテッター氏は2月16日と17日、新疆ウイグル自治区ウルムチ市にある中国自動車大手の上海汽車集団(SAIC)との合弁工場を視察した。
ブランドシュテッター氏は訪問した際にウイグル人やカザフ人など労働者7人と、英語またはVWが選んだ通訳者を介して個別に意見を交わした。中国当局の関係者は同行していないという。
「もちろん私たちは批判的な報告を認識しており、非常に深刻に受け止めている」としたうえで、「工場での人権侵害の証拠は見られなかった」「矛盾点は見当たらず、得られた情報や受けた印象を疑う理由もない。それでも、引き続き監視を続ける」と述べた。
同工場で働く従業員約240人の約29%が少数民族で、そのうち17%がウイグル人だ。
新疆での強制労働問題は昨年8月、国連の小保方智也氏(現代的形態の奴隷制担当)が報告書を発表し、新疆で少数民族の強制労働が行われていると「結論付けるのが妥当」と指摘。過剰な監視や移動の自由の制限など「人道に反する犯罪である奴隷状態に相当する可能性がある」とした。
ブランドシュテッター氏の発言に対し、国際議連の創設者やウイグル人団体などが反論している。
日米欧などの議員で構成する「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の共同創設者で、英保守党の人権委員会に所属しているルーク・デ・プルフォード氏は、「ウイグル人が身の危険を感じている限り自由な発言はできず、新疆の労働基準を検証することはできない」と反論した。
また亡命ウイグル人でつくる「世界ウイグル会議」のメンバーらは、ブランドシュテッター氏の訪問および労働者との会話は、VWが中国当局と事前に調整・計画していた可能性が高いと分析した。
VW株主の上位20位に入る投資会社デカ・インベストメントの持続可能性・企業統治部門の責任者インゴ・シュパイヒ氏は、「VWは新疆での風評リスクから抜け出せない状況に陥っている」と指摘した。
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