『我が闘争』をフェミニスト的主張に書き換えた論文 学術誌で出版

2023/03/07
更新: 2023/03/07

一部の左翼的な米国の学者たちは、不条理や倫理に反する内容にもかかわらず、米社会の既存価値を破壊したり「男性優位主義」を打開する名目で、学術ジャーナルにいくつかの偽論文を発表した。米国の価値観が挑戦を受けている。

最近、アドルフ・ヒトラーの著書『我が闘争』を、あざけりや極左の流行語に差し替えた3人の学者による「研究論文」が、フェミニスト志向の雑誌に発表された。プレスリリースによると、論文は人種、ジェンダー、セクシュアリティなど、人文科学研究分野における政治的偏向に焦点をあてる3人の学者によって書かれた。

作者のひとりでポートランド州立大学の哲学助教授であるボゴシアン氏は、このヒトラー著書をめぐるこれまでの大学講義や政治家の活動、ジャーナリストらの主張は「文化的現実の本質を誤らせており、大きな問題だ」と捉えていると述べた。

そのあざけりを含む論文内容はツイッターユーザーの指摘で発覚。3人はこの論文作成の「実験」を中断した。FOXニュースやタイムス・オブ・イスラエルなどがこの話を取り上げると、著者が使っていた匿名アカウントの1つが暴露された。

「1年かけてこれらの分野の専門家になって、活動家やソーシャルメディアの暴徒がそれを利用したときの分裂と破壊の効果を目撃できた」と同アカウントは述べている。

特権」に対する我が闘争

『我が闘争』を書き換えた論文は、ヒトラーの反ユダヤ主義的放言の第1巻第12章の一部を盗用したもの。ここではナチス党がなぜ必要で、党員に何を要求するかが述べられている。しかし偽の論文は、ユダヤ人や国家社会主義への言及を「特権」、「フェミニズム」、「抑圧」といった言葉に置き換えている。そして、その主張のいくつかを既存のポストモダン文献の注釈をつけて架空の「証明」を装った。

「そのため、特権は常に自分自身を維持しようとすることを繰り返し指摘しなければならない(Bailey, 2014, 2017; Dotson, 2014)。それゆえ、特権は常に押し返される。これは、故意または戦略的な無知、(不注意な)不正直さによるものであり、(Bailey, 2017; Dotson, 2011)、それゆえ、解放に対して時折出てくる真実でさえ、主により大きな改竄を覆うことを意図し、その結果、非真実または認識論的排除や抑圧の道具として作用する(Dotson, 2014)」と述べている。

それは、ヒトラーの「ユダヤ人とその新聞は常に嘘をつき、時々の真実もより大きな偽りを隠すためのものに過ぎず、したがってそれ自体が意図的な非真実であることを、この運動の信奉者、そして広い意味で全人民に何度も何度も指摘しなければならない」との言葉を書き直したものであった。

この論文は、Journal of Women and Social Workの雑誌である『Affilia』に受理された。その出版社であるSAGE Journalsは、コメントの要請に応じなかった。すべての論文は、”Feminist Activist Collective for Truth “などの偽名や存在しない機関を通じて投稿された。

ドッグパーク

3人はジェンダー研究、男性学、クィア研究、セクシュアリティ研究、精神分析、批判的人種論、批判的白人論、脂肪研究、社会学、教育哲学などの分野で粗野な論文を20本も作成した。そのうち7本は出版が認められ、4本はすでに出版されている。

この論文のひとつは「男性優位の覇権を止める」ため、男性を「犬のように訓練すること」を提案するよう結論づけるものがある。論文はGender, Place & CultureやA Journal of Feminist Geographyに掲載され、フェミニスト地理学の代表的な12編の1編として表彰した。

論文は『Human Reactions to Rape Culture and Queer Performativity in Urban Dog Parks in Portland, Oregon (仮邦訳・オレゴン州ポートランドの都市部ドッグパークにおけるレイプ文化とクィアパフォーマンスに対する人間の反応)』と名付けられた。それは、犬の運動場であるドッグパークを「レイプ・コンドミニアム空間」とし、犬のレイプ文化が横行、虐げられた犬に対する制度的抑圧を見出したと指摘。両問題に対する人間の態度を測定できると紹介した。

同誌の広報担当者は、この論文については懸念を表明しており「デマが明らかになる前に、すでに撤回が進められており、現在は学術的な記録から削除されている」と述べた。

「我々は編集者と協力して、デマ投稿の特徴を見抜く方法と、個々の論文に何らかの疑いがある場合の取るべき手順についてガイダンスを提供する予定だ」とした。

とりとめもないナンセンス

こうした偏向性のある学者による悪ふざけは、10代風に詩を自動作成するウェブサイトから書き換えて滑稽な文章を作る試みもあった。

著者は「女性のセクシュアリティとスピリチュアリティに関する勝手気ままな自伝的考察」を詩の中に散りばめ、論文にまとめた。論考は詩の雑誌に受理させた。

この11ページの論文は、数学の博士号を持つ男性が6時間も掛けずに作成したものだった。その目的は「十分に女性寄りで暗黙のうちに反男性寄りになり、徹底的に反理性的である場合、とりとめのないナンセンスだったとしても受け入れるかどうかを確かめること」であった。

同誌の編集者であるニコラス・マッツァ氏は、論文が査読を経て掲載が認められたことをエポックタイムズはメールで確認した。

フロリダ州立大学ソーシャルワーク学部の学部長兼名誉教授であるマッツァ氏は、「(ウォール・ストリート・ジャーナルの記者を通じて)著者が詐欺師であることを知り、私はすぐに記事を撤回した」と述べている。

(翻訳編集・大室誠、佐渡道世)

Petr Svab
ニューヨーク担当記者。以前は政治、経済、教育、法執行機関など国内のトピックを担当。