中国・北京で、3月5日から開かれていた全国人民代表大会(全人代)は13日、閉幕した。政治協商会議(政協)は3月4日から開かれている。この二つの重要会議を「両会」と呼ぶ。
山東省の人民代表である趙潤田氏は、開催中の両会で「50万元(約980万円)を超える賄賂を受けた官僚は死刑にすべきだ」という衝撃的な発言をしたことがわかった。
「50万元の収賄で死刑」に顔をそむける面々
国会にあたる全人代に提出される「議案」は、採択されれば法律としての効力をもつ。これに対して、国政に助言する機関である政協に提出される「提案」は、採択されても法的な拘束力をもたない。
趙潤田氏は全人代の人民代表であるので、先の意見提出は前者のほうになる。実際にこれだけで法律化される可能性は低いが、その特殊な内容から注目度は高い。
ところが、この「史上最優秀の提案」とも言える趙氏の発言に対して、支持はおろか、誰一人として反応すら示さなかったという。
この趙氏の画期的な提案を中国メディアなどが報じているが、ネットユーザーからは大絶賛され、大いに支持されたものの、「実現は、やはりありえない」といった悲観的な声が圧倒的だ。
いずれも「脛に傷もつ者」ばかり
「50万元の収賄で死刑」は、腐敗撲滅を旗に掲げる習近平体制としては誠に勇ましく、褒められる掛け声であるはずだが、なぜこうも「笛吹けども踊らず」なのか。
端的に言えば「いずれも脛(すね)に傷もつ者ばかり」だからであろう。つまり、その金額は異なるが、ほぼ全員が汚職官僚なのである。さらに突き詰めると、これが本当に法制化されれば「死刑」の適用者が中国全土にあふれかえることにもなる。
その点、ネットユーザーの反応が、誠に正直であると言える。
「これが実現すれば、いま財政難である(中国の)国民年金基金も医療保険基金も持ち直すのでは」
「現段階で50万元という設定は、まずい。これでは死刑になる官僚があまりにも多くなる。ライン設定をもう少し上げるべき。いくらに設定するかは二の次で、何より汚職官僚を容認しない態度が重要だ」
そんな声がある一方、以下のような悲観的な声も目立つ。
「真っ先に殺されるのは提案者の趙潤田だろう」
「この提案が通れば、党員は全員殺され、中国共産党は消滅する」
「ただのショーだ。ニラ(人民)たちを少し興奮させるだけで、結局は空言だ」
両会代表の半数以上が「逃げ場所」を用意
著名な中国人調査記者である趙蘭健氏によると、3千人の両会代表のうち、57%が二重国籍を持っており、その「第二の母国」はいずれも中国とは体制を異にする自由主義国家であるという。
万一の事態に備えて「逃げ場所」を用意している中共党員が多いことは、もはや誰もが知る公然の事実であるが、そのように海外の逃亡先を準備できるのも、蓄財の手段をもつ特権官僚であることと無関係ではない。
こうした「人民代表」に、コロナ禍と経済的窮乏にあえぐ末端の人民の生活を守るための協議を両会に期待することは、もとより実現不可能な願いと言うしかない。
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