新型コロナ、自然発生説は「非科学的」 米国防総省報告書に記載

2023/05/18
更新: 2023/05/18

CDCファウチ博士新型コロナウイルスの自然起源説を提唱してきたが、その主張を真っ向から否定する報告書がパンデミックの早い時期に、米海軍の軍医らによって提出されていたことが明らかになった。

報告書を提出したのは、米国防高等研究計画局(DARPA)に勤務する海軍軍医のジャン=ポール・クレティエン中佐と、米国防情報局(DIA)所属の科学者であるロバート・カットリップ博士。ファウチ博士が自然起源説を証明するために用いた科学論文「SARS-CoV-2の近位起源(Proximal Origin of SARS-CoV-2)」に、論理的な欠陥があると指摘した。

「アンダーセンらによるSARS-CoV-2の近位起源に対する批判的分析」と題する報告書は2020年5月26日付のもので、今月15日、ウイルスの起源を探索するグループ「DRASTIC」を通じて一般に流出した。

「SARS-CoV-2の近位起源」が打ち出した自然起源説を科学的に否定したこの報告書は、「(論文著者である)アンダーセンらがSARS-CoV-2の自然起源説を支持するために用いた議論は、科学的分析ではなく不当な仮定に基づいている」と結論付けた。

つまり、米政府関係者は、パンデミックの初期に、新型コロナの自然起源説を支持できるエビデンスがないことを十分に認識していたということだ。それを証明するものとして、この米国防総省の内部文書は極めて重要と言える。

報告書が「SARS-CoV-2の近位起源」をひどく疑問視していたことから、国防総省の高官たちは、ファウチ氏がウイルス起源について誤った言説を広めようとしていたことに気づいていたはずだ。

ファウチ氏の自作自演

「SARS-CoV-2の近位起源」は、2020年2月1日に行われた秘密の電話会議にて、ファウチ氏が最初に考案した。この電話会議の表向きの目的は、新型コロナが研究室から流出した可能性から注意をそらし、自然起源説に焦点を移すことだった。

ファウチ氏は、スクリプス研究所のクリスチャン・アンダーセン氏とテュレーン医科大学のロバート・ギャリー氏をはじめとする多くの科学者に、研究所流出説を否定するために使用できる研究論文を執筆するよう指示した。

論文作成に直接関与し、その論旨を形成したにもかかわらず、ファウチ氏が果たした役割が世間に知られることはなかった。ファウチ氏はその後、アンダーセン氏とギャリー氏に多額の補助金を与えている。

昨年末、独立系ジャーナリストのジミー・トビアス氏が情報公開法に基づいて入手した電子メールによって、ネイチャー誌の査読者が「SARS-CoV-2の近位起源」の欠陥にすぐに気づいていたという事実が初めて明かにされた。

しかし、2020年3月17日、ジェレミー・ファーラー氏の協力を得て、同論文は国際学術誌ネイチャーメディシンに受理された。自然起源説の形成においてファウチ氏を助けたファーラー氏は現在、世界保健機関の主任研究員を務めている。

論文は実験室発生説について「ほとんど説得力がない」と結論づけた。

2020年4月17日、トランプ大統領は、新型コロナのパンデミックが中国の武漢ウイルス研究所で始まった可能性が高いことを確認した。いっぽう、同日行われたホワイトハウスの記者会見で、ファウチ氏は、ウイルスが研究所から流出した可能性を断固として否定し、裏付けとして論文「SARS-CoV-2の近位起源」を引用した。

その際、ファウチ氏は記者団に対し、「著者の名前は思い出せない」と語り、論文とは無関係の立場を装った。しかし、ファウチ氏が著者をよく知っていたどころか、自ら論文作成を主導していた。これらのことは当時はまだ知られていなかった。

ファウチ氏が「『SARS-CoV-2の近位起源』は、新型コロナが自然から出てきた証拠を提供している」と繰り返し主張したことで、同論文は自然起源説の権威となり、メディアで最も人気を集めた。最も読まれた新型コロナに関する論文となった上、史上最も引用された学術論文の1つにもなった。

こうして、ファウチ氏やメディアが「『SARS-CoV-2の近位起源』がウイルス起源に関する論争に終止符を打った」と世間に伝えている間に、米国防総省の研究者らは全く異なる結論に達していたのだ。

2022年5月17日、ワシントンのキャピトルヒルにあるダークセン上院オフィスビルにて、公聴会の開始を待つ米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長 (Alex Wong/Getty Images)

論文の論理的欠陥

論文「SARS-CoV-2の近位起源」において自然な進化の産物とされたウイルスの特徴に関して、国防総省の報告書は異なる見解を示した。

「アンダーセンらが示したSARS-CoV-2の特徴は、別のシナリオにも当てはまる。コロナウイルスの主要研究者が、ウイルスが細胞に感染して病気を引き起こす仕組みを調べ、動物のコロナウイルスが人に感染する可能性を評価し、薬やワクチンを開発するために一般的に用いている方法によって、SARS-CoV-2が実験室で作られたというシナリオだ」。

その特徴のひとつがフーリン切断部位だ。これにより、ウイルスはとりわけヒトに感染しやすいものとなる。しかし、自然界に存在するベータコロナウイルスではこのような特徴は一度も観察されたことがない。

しかし、ファウチ氏が関与した論文では、実験室で作られた既知のウイルスにはこのような特徴が見られなかったため、新型コロナウイルスは「自然な進化の過程」で生じたものに違いないと主張した。

同論文では、新型コロナウイルスの受容体結合ドメイン(ウイルスが細胞に侵入する際に必要な部分)に関しても、同様の非科学的な議論が行われたという。

国防総省の報告書はまた、コロナウイルスに対する特定の実験操作に関する文献が欠如しているが故に、「そのような操作はなかった」と論文が結論づけていることに着目し、大きな論理的欠陥だと指摘した。

国防総省の報告書の中で最も注目すべきは、ウイルスの機能獲得実験のパイオニアであるノースカロライナ大学のラルフ・バリック氏が、武漢ウイルス研究所の石正麗氏と共同研究を行っていることに言及した箇所だ。

報告書が指摘するように、バリック氏と石氏が2015年に実施した実験は、新型コロナウイルスが研究室でどのように操作されたかを反映している。いっぽう、新型コロナウイルスを作るのに必要なノウハウと武漢ウイルス研究所との間に直接的な関連性があったことについては、「SARS-CoV-2の近位起源」で言及されなかった。

報告書は、新型コロナの起源に関する明確な答えこそ提示しなかったものの、ファウチ氏が関与した論文は、研究所起源説の可能性を押し下げるものではないと結論付けた。しかし、同論文は研究所起源説を否定した。

「SARS-CoV-2の近位起源」が報告書によって真っ向から否定されていたにもかかわらず、このような情報はなぜ米国民に知らされなかったのだろうか。

当時の国防総省はなぜ、ウイルス起源に関するファウチ氏の誤ったシナリオを放置したのだろうか。

報告書の2人の著者のうち、カットリップ氏は2021年に国防総省を去っているが、退官の経緯は不明だ。同氏の公開された経歴によると、現在はウェストバージニア州のフェアモント州立大学で客員教授を勤めているようだ。

経歴には、カットリップ氏が「コロナウイルス対策本部」に所属し、米大統領に情報を提供していたことも記載されているが、トランプ大統領やバイデン大統領に自身の見解を伝えたかどうかは不明だ。

Epoch TVの番組「トゥルース・オーバー・ニュース(Truth Over News)」の共同司会者