中国共産党の干渉に対抗…党と国民の明確な区別が必要=報告書

2023/05/27
更新: 2024/04/22

中国とカナダ関係に関する議会の特別委員会は17日、国家主権を脅かすことに対処する報告書を発表し、悪政による恣意的な拘束からカナダ人を守る方法を模索するよう国際関係省に求めた。また、中国共産党と中国人とを区別する重要性を訴えた。

カナダ政府が今月、野党・保守党のマイケル・チョン議員と香港在住の親族を脅迫したとして、在トロント中国領事館の外交官の追放を発表して以来、越境弾圧への対処が喫緊の課題となっている。マルコ・メンディチーノ公安大臣は、早急に外国人工作員登録制度を導入することを公約した。

報告書は、海外で恣意的に拘束されたカナダ人のための専任擁護者を指定するよう国際関係省に求めた。この擁護者は、国や多国間組織と協力し、国と国の関係において「恣意的抑留に反対する宣言」をより多くの司法管轄区に広めることになる。さらに、恣意的な拘束に直面しているカナダ人に関連する領事業務を支援し、特に国家間の関係において、この慣行からカナダ人を保護するための方策を検討する。

また報告書は中国共産党が影響力、監視、脅迫を通じて、中国系カナダ人の「動員・武器化」を目論んでいると警告する一方、「中国国民と中国共産党を区別する」必要性も強調した。

トロント大学で国際関係を担当するリネット・オン准教授は、中国共産党の情報機関「統一戦線工作部門」が越境弾圧に関与するなど中国共産党の干渉手段について理解する必要があると述べた。

現在各国で問題となっている中国海外警察署はその一例で、中国共産党の情報機関「統一戦線工作部門」と連携し、異論を唱える人権活動家などの帰国を迫る拠点になっている。

その一方で、「中国から離れた人々を政府の受動的・非政治的な代理人ではないことを認識することも重要」と強調、「党と中国国民を混同してはならない」と警告した。

さらに報告書は、中国共産党の関係者やカナダの中国系ディアスポラコミュニティーを標的とした誤報や偽情報に対抗するためのイニシアチブを制定することを推奨した。

拘束後は安否不明

この報告書は、2回の国会会期中に委員会に出席した50人の証人の証言をまとめたもので、多くの証人が、中国政権による威嚇や嫌がらせの経験談を語った。

オタワ大学公共国際問題大学院のシニアフェローであるアレックス・ニーブ氏は中国当局に2017年に拘束された法輪功学習者の孫茜氏を挙げた。ニーブ氏は孫氏が不当に3年間拘束されたのち2020年に懲役8年の判決を言い渡されたあと「自ら」カナダ国籍を放棄し、2年以上音信不通になっていると述べた。

法輪功情報サイト「明慧ネット」によれば、孫茜氏は拘束中に鉄椅子に座らされたり、唐辛子入りの水を噴霧されたりなど数々の拷問を受けていたという。

アムネスティ・インターナショナル・カナダの元事務局長であるニーブ氏は、16年以上拘束されているウイグル系カナダ人で人権活動家のフセイン・セリル氏の状況についても懸念を表明した。カナダ政府は、5年間消息を絶っているセリル氏との面会を求め中国当局に圧力をかけているが実現していない。