走るバイクの前に障害物を投げ込む 人命は全く無視、中国交通警察の「荒すぎる公務執行」

2023/06/18
更新: 2023/06/18

日本であれば、「道路交通法」第六条(警察官等の交通規制)にも明記されている通り、警察官が必要に応じて車両の通行を禁止または制限することができる。

もちろん、そこには「必要な限度において」という但し書きがつく。車やバイクの運転者も(日本であれば)警察官の指示に速やかに従い、必ず停車する。

当たり前のことを前置きするのは、これが昨今の中国になると、日本とは全く事情が異なるからだ。

本記事の主な内容は、視点を「警察官の停止指示に従わない暴走バイク」に当てたものではなく、運転者の生命や権利を全く無視した「あまりにも暴力的な警察官の職務ぶり」である。日本では想像もつかない異様な光景が、以下に続く。

警官が「走るバイク」を突き飛ばす

華人圏のSNS上では、ほとんど「故意傷害レベル」と言えるような、中国の一部の警察による荒々しい公務執行ぶりに関する投稿が絶えない。

「もはや人間としての最低限の優しさすら持ち合わせていない」「人命を何とも思わないのか」などと指摘される、中国の公権力による数々の「荒過ぎる検問のやり方」に対して、世間の批判が高まっている。

湖南省株洲市で今月15日、交通警察が走行中のバイクを2度も突き飛ばし、道路脇へ転落させる事件が起きた。

確かに、はじめはバイクが警察官にぶつかったようにも見える。その点はバイク側にも全く非がないとはいえないが、その後の警察官の行動はやはり常軌を逸している。

警察官に突き飛ばされて、バイクは道路脇へ落ち、運転者はさらに前方へ飛ばされた。重傷を負っても全くおかしくない状況である。

この関連動画は華人圏で広く拡散されており、物議を醸している。事故(事件?)の翌日、市当局が介入し、この件について調査を始めたようだ。メディア「澎湃新聞」などが報じた。

 

ネット上には「市当局の対応」を楽観視しない声が広がった。関連動画の投稿に寄せられたネットユーザーからのコメントには、市当局の対応の「結果」を予測したものが数多くみられた。

不思議なことに、それらの予測は見事に「一致」していた。「これは、補助警察かアルバイトがやったことだ」。つまり、正規の警察官がやったことではないから「警察に責任はない、と市当局は言うだろう」というのが大方の予測である。

実際に市当局がそう言ったかどうかは定かでないが、世論からみた「中国の公職」の信頼性がどの程度であるかが伺われる一例かもしれない。

ほかにも、「本当はバイクのブレーキが利かなくなっていた。警察は停車できるよう手を貸しただけだ。感謝状を贈るべきだ」など、いかにも当局がネット民を偽装して言い出しそうな「珍妙な主張」もコメントのなかにあった。

 警官2人が「鉄のチェーンを張る」

山東省で今月13日夜に撮影されたとされる動画のなかに、交通警察が2人1組で「鉄のチェーン」を道路上に張り、走行するバイクを止めようとするシーンがあった。

もちろんバイクは、急ハンドルを切って避けている。こうなると警察官の指示に従うかどうかではなく、バイクのほうが避けなければ危険なのだ。

この恐るべき「公務執行現場」を投稿したネットユーザーは、「お金(罰金)だけでなく、命まで取る気なのか?」と書いた。

 

警棒を振り回し、飛び出す警察

上海の「楊浦大橋」付近で撮影されたとされる動画では、2人の交通警察がいきなり飛び出し、警棒を振って高速で走行するバイクを止めようとするシーンもあった。

バイクに取り付けられたカメラには、恐るべき「公務執行」の一部始終が映されていた。運転者の視点から見れば、警察官の行動は危険行為そのものである。

 

 

動画投稿者は「人命など、彼ら(中国語原文:它)からすれば、何でもないのだ」と書いた。

ここで投稿者は、人間を指す時の「他」ではなく、あえて動物やモノを指す場合の漢字「它」を使っている。おそらく「この連中(警察)は人間ではない」という投稿者の思いが込められたものだろう。

走るバイクの前に「障害物を投げ込む」

SNS上には、たとえ高速道路上だろうと、暗いトンネル内であろうとお構いなく、まったく恣意的に検問を設け、どんな口実をつけてでも「違反切符」を切ろうとする一部の交通警察の動画が拡散されている。

しかも、その車両を止める手段は、運転者や周囲の道路状況の安全など全く考えていない。そのような「一部の交通警察」による乱暴な止め方で、実際に命を落とすドライバーもいる。

本当に「一部の交通警察」に限ると思いたいが、証拠となる映像が各地で撮られているので、もはやこれは中国では普遍的な事実と言わざるを得ない。

ある警官は、走行するバイクの前に、三角錐の雪糕筒(カラーコーン)を故意に投げ込んだ。バイクは転倒。ライダーは投げ出された。

同様の映像は複数あり、なかには確実に重傷を負ったと思われるような、ひどい転倒をしている例もある。ここまでくると「警察官による犯罪」と呼ぶしかない。

 

 

 

「罰金とり」に躍起、背景は地方の財政難か?

近年、中国の交通管理部門による「不当な罰金徴収」に関する事件が相次いでおり、ネット上でも物議を醸している。その背景にあるのは地方政府の財政難とみられている。

例えば、河南省安陽市內黃県の交通部門によって道路に設置された、車重測りの機械が「どうも怪しい」ことが、中国メディアによっても報じられている。

出発前に車重を測ったら重量オーバーしていないトラックが、当局設置の電子測りでは「重量オーバー」と表示される。そこで当然、罰金が科せられる。

「数か月後、ときには1年後になって、罰金の告知書が届くこともある。その時、こちらが重量オーバーしていない証拠は、もうなくなっている」。そう言って泣き寝入りする運転手も少なくないという。

中国メディアによると、一部の地域では、平坦で見通しも良い道路に、わざと「低い速度制限」を設けたり、同じ道路でも「複数の最高時速の制限」を設けるところもあるという。

内モンゴルのある高速道路では、制限速度が時速100キロから突然20キロに変わる。もちろん、そこには監視カメラがついている。うっかり標識を見落として違反すれば、あとで高額の罰金は免れない。

こうして運転手が交通違反するように、まさに「落とし穴を掘る方法」で罰金を稼いでいる地方も少なくないという。

(制限速度が、時速100キロからいきなり20キロに変わる標識。SNS投稿動画よりスクリーンショット)

(SNS投稿動画、「運転手が悲鳴を上げている。内モンゴルの高速道路では制限速度が時速100キロからいきなり20キロに変わる。すぐそこには監視カメラつき。地面にはブレーキ痕がいっぱいだ」という。違反すれば、高額の罰金は免れない)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。