電動バイクがダメなら、これで代用?「電動車いす」で移動する若者集団=中国 広州

2023/07/13
更新: 2023/07/13

電動車いす」は本来、高齢者や障害者などの歩行が困難な人が、必要に応じて使用するものである。ところが昨今の中国では、健康な市民や若者たちが「電動車いす」を日常の移動の手段にしているばかりか、もはや一種のブームにさえなっているという。

「電動車いす」が、なぜブームに?

そのような奇妙なブームが生まれた背景として、中国各地の地方政府が逼迫する財政の足しにするため、あらゆる種類の「罰金とり」に躍起になっていることが挙げられる。

なかでも、免許なしで運転できる電動自転車や電動バイクへの取り締まりを強化している。とにかく一枚でも多く「違反キップ」を切るため、血眼になった交通警察が街中をうようよしているのだ。

こうした公権力に対する一種のレジスタンス(抵抗)という意味もあってか、電動バイクのかわりに、現在はまだ規制の対象ではない「電動車いす」で移動する市民が急増したというのだ。

SNS上には各地の街を移動する「電動車いすの大軍」を捉えた動画が数多く投稿されており、特に若者の間では人気のようだ。若者たちは、お気に入りの「電動車いす」で出かけるばかりか、これで観光地巡りをしたり、もちろん日常の買い物や通勤もする。

なかには「電動車いす」を運転する女性(男性は体が大きく、同乗者も好まないので難しい)が、これをタクシー代わりに客を乗せて「料金」をとるケースもあるらしい。もちろん白タク行為は違法だが「たまたま街で会った友達を、乗せてあげた」ということにしてしまうのだ。

中国各地の街でみられる「電動車いす」の大軍。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

こうした各種の「新しい用途」による電動車いすの利用者は、「スピードは遅いが、これなら交通警察の取り締まり対象ではないし、ヘルメットをかぶる必要もない。駐車スペースを探す必要もないし、通行を制限されることもないから、とても便利だ」と語っている。

中国では今のところ、電動車いすに関する規定や規制がないため、交通警察もこれを違反あつかいできないと法律家も分析している。

繰り返すが「電動車いす」は本来、高齢者や障害者が使用するためにある。

中国の街中をうろつく「電動車いすの大軍」の動画を見た海外のネットユーザーは、相次ぎ「中国はおかしな国だ。国民をどこまで追い詰めるのか」「中国社会に起きる問題は、全て当局の強制管理の結果だろう」「呆れる事の多い国だ」といった嘆きのコメントを寄せた。

 

「電動バイクへの新規制」が呼び水に

広州市では今月1日から、電動バイクに関する新たな規制が導入された。これにより、従来は不要だった運転免許取得が必須となり、ヘルメットを着用したうえで、市の定めた審査に合格した電動バイクのみ公道を走ることが許可される。

中国メディアの「中新財経」によると、広州市がこのほど導入した新規制の影響をうけたため、現在広州では「電動車いす」の売れ行きが極めて好調。今年上半期の注文件数は60%も増えたという。

また、この電動バイクへの新規制では「横断歩道では降りて押さなければならない」「身長120cmを超える児童を載せてはならない」「一部の区間では、時間帯により走行禁止」といった厳しい規則が設けられている。もちろん違反すれば多額の罰金か、電動バイクを没収される。

一部の地方の交通部門は、罰金ではなく、たとえ所有者が目の前にいて、泣きながら跪いて懇願しようが構わずに電動バイクを没収している。その様子は、まさに強盗そのものである。没収した電動バイクは、交通部門によって売り飛ばされるのだ。

なかには、電動自転車や電動バイクの乗り入れを全面的に禁じている地方もある。理由が明らかでないそのやり方について、「自動車を買わせるように、内需拡大を狙っているのではないか」とさえ囁かれている。

今年4月、河南省商丘市では電動自転車や電動バイクを全面的に禁止する新政策を導入した。

代わりの移動手段の利用を余儀なくされた市民は、電動車いすや、人間が引っ張る「人力車」に乗り換えた人も少なくない。

そのため商丘市の街中には、百年前の中華民国時代のように「客待ち」をする人力車集団が出現した。

今年4月、河南省商丘市の街中に出現した「客待ち」の人力車集団。(中国のネットより)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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