焦点:ロシア穀物合意離脱にアフリカ衝撃、食料価格2倍予測も

2023/07/18
更新: 2023/07/20

[モガディシオ 17日 ロイター] – ロシアが黒海穀物合意からの離脱を発表したことにソマリアなどアフリカの貧困国は衝撃を受けている。こうした国々の多くは既にインフレや気候変動、紛争などに翻弄されており、合意停止に伴う穀物価格の上昇が追い打ちとなるためだ。

国連とトルコが仲介して2022年7月に成立した黒海穀物合意は世界的な食料価格の押し下げに寄与。援助機関は、緊急性が高まり、資金が不足する状況にあって、数十万トンの食料を手に入れることができた。

ソマリアの首都モガディシオでは、ロシアによるウクライナ侵攻で2倍に跳ね上がった小麦の価格が黒海穀物合意の調印後に25%下落した。今回のロシアによる合意離脱の発表に、トレーダーからパン屋、国内の武力紛争や干ばつの被害者に至るまで、みんな恐怖に慄いている。

5人の子どもの母親でモガディシオの難民キャンプで暮らすハリマ・フセインさんは、「どうやって生き抜いたらいいか分からない」と途方に暮れている。「援助機関は私たちの生活を支えるために最善を尽くしてくれている。できる限りのことをしている」と話す。

モガディシオのトレーダーの間では、小麦は1袋50キロの価格が今の20ドルから30ドル近くまで跳ね上がるとの予想も出ている。

ケニアの外務省幹部は、既に歴史的な高値となっている食料が一段と値上がりし、2倍程度になるとの見通しを示した。

国連のデータによると、ソマリアは昨年のウクライナからの小麦輸入が8万4000トンと、前年の3万1000トンから増加した。

それほどひっ迫していない国も危機感を抱きそうだ。世界最大の小麦輸入国であるエジプトはウクライナ戦争勃発後の世界的な小麦価格高騰で、何百万人もの国民に補助金付きのパンを支給し、財政を圧迫した。食料配給を担当する供給省は先月ロイターの取材に、「世界市場を落ち着かせる上で重要」なため、合意の延長を望んでいると述べていた。

<価格高騰>

ロシアは17日、同国産の穀物と肥料の輸出改善を要求したのに実現していないとして合意からの離脱を発表。貧困国に十分な穀物が届いていないことにも不満を示した。一方で国連は、合意が世界全体の食料価格を20%以上引き下げることに貢献したと主張している。

国連世界食糧計画(WFP)も、ソマリア、イエメン、アフガニスタンなど紛争や異常気象に苦しむ国々における食糧支援で、ウクライナ産穀物に大きく依存している。

アナリストによると、ロシアが合意離脱を決めたことで一部主要な食料の価格は上昇する可能性が高いが、穀物はロシアやブラジルなどの生産国からの供給が増えたため、ウクライナ戦争開始以来、世界的に入手しやすくなっている。

一方、国際救済委員会(IRC)の東アフリカ緊急責任者であるシャシュワット・サラフ氏は、「アフリカの角」と呼ばれる地域に属し、過去数十年で最悪の干ばつに直面しているソマリア、エチオピア、ケニアでは影響が広範囲に及ぶと予想した。

世界最大級の穀物供給国のひとつであるウクライナからの供給が減ることによる直接的な影響に加えて、世界的に市場が不安定になれば、少ないながらも余剰穀物在庫を抱える国々も輸出を手控える恐れがあるという。

IRCのような援助機関は食料価格が上昇すれば予算が苦しくなり、支給対象者を減らさざるを得なくなるのではないかと、シャシュワット氏は危惧している。

17日にモガディシオでは既に買いだめの動きが起きていた。

商店主のモハメド・オスマンさんは、「大手が価格を吊り上げる前に、今すぐ小麦を買い足さなければ。そうしないと貧しい客は小麦など値上がりした食料を買えなくなる」と話した。

(Abdi Sheikh記者、Aaron Ross記者)

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Reuters
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