時事 ロバート・ライトハイザー新著、中国との戦略的でカプリングを呼びかけ

米中貿易は「愚か者の取引」トランプ政権高官が語るデカップリングの理由

2023/07/28
更新: 2023/07/31

トランプ前政権で通商代表を務めたロバート・ライトハイザー氏は、中国との貿易赤字が何十年も続いていることを「国の富の流失」と見なしている。

ライトハイザー氏はこのほど、エポックタイムズの取材に応じた。インタビューで、同氏は戦略的デカップリングによって中国を打ち負かすプレイブックを概説した。

ライトハイザー氏の新著『No Trade Is Free: Changing Course, Taking on China, and Helping America’s Workers(自由な貿易はない: 路線変更、中国に立ち向かい、米国労働者を助ける)』では、2017年11月に北京で出席した会議を振り返り、習近平氏に対し、米中貿易関係が不公平であると伝えたことを記している。

そしてそれ以降、ライトハイザー氏は、それまでは曖昧な約束の繰り返しで、行動のフォローアップがなく、米国の新政権が誕生するたびにリセットされていた貿易協議のスタイルを変えた。

「国富の流失」

ライトハイザー氏にとって、一国が他国と短期間に貿易赤字を抱えることは問題ではありません。しかし、数十年にわたり数千億ドル規模の赤字が積み重なることは、基本的に「富の純移転」であると彼は述べています。

商務省経済分析局によると、2001年中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、米中貿易赤字はほぼ4倍増えた。2002~22年までの貿易赤字総額は5兆ドル(約700兆円)以上、2022年米国GDPの1/5に相当する。

同時期に、米国の純資産負債残高(米国人が全世界にどれだけ保有している資産から世界の他の国々が米国で資産をどれだけ保有しているかの差異)は6倍近く増加し、2022年にはマイナス16兆ドルとなった。

「私たちはこれらのTシャツや3台目、4台目のテレビを安く手に入れているが、それは我々の国の資産を海外に移転させることを代償としている」とライトハイザー氏はインタビューで語った。

同氏はエッセイ「The Free Trade Folly(自由貿易の愚行)」で、「私たちは文字通り、国の将来の支配権や子供や孫の富を、より安価なテレビやスニーカーといった現在の消費と引き換えにしている」と指摘した。

自由貿易神話の綻び

またライトハイザー氏は自由貿易を「false religion(偽りの宗教)」と称している。

「誰も自由貿易を実践していない。大きな黒字を出している大国を見てみると、それらの国には自由貿易がない。中国では、自由貿易とは全くかけ離れている。資本主義ですらない。ドイツには自由貿易がない。欧州には自由貿易がない。それはすべて偽りの神であり、文字通り存在しない」と同氏は語った。

ライトハイザー氏は中国は世界支配を達成する計画を持っており、国内で金儲けに飢えている外国人を利用してきたと考えている。

「中共(中国共産党)が、『私はあなたを金持ちにする 』と決めた。そうすると、その人たちは中共の擁護者になる。それは多かれ少なかれ二律背反なのだ。外国を助けるために米国人を利用し、個人を儲けさせるという考え方は、中国人が最初ではない」

戦略的デカップリングのプレイブック

ライトハイザー氏は、米国が中国との関係を戦略的に切り離すことが必要だと主張。また、G7諸国が脱中国依存としてサプライチェーンを多角化する「リスク軽減」戦略を「正しい方向への小さな一歩だ」と呼んだ。

ライトハイザー氏は、「これは正しいことを試みる一方で、中国から輸入をする非常に裕福な米国企業を喜ばせようとする試みだ」と思っている。

ライトハイザー氏の戦略的デカップリングプレイブックには、バランスのとれた貿易の達成、中国への米国技術流出の遮断、対内投資と対外投資の管理が含まれている。

同氏はトランプ前大統領の関税政策が米中貿易のバランスとりに有効だった。2018年7月に最初の関税が課されてから、米国の対中貿易赤字は2020年まで減少し続けた。2021年に貿易赤字が再び増加した原因について、ライトハイザー氏は、米政府のパンデミック対策による需要刺激と、国内製造業の停止が重なって、海外からの購入が増えたことが要因だと説明している。

ライトハイザー氏は、貿易赤字を減らすためのもう1つの有効な手段は、ウォーレン・バフェット氏が提案した輸入・輸出証明書のアイデアだと語った。

2003年の記事で、バフェット氏は企業が輸出額に基づいてドル対ドルの価値で輸入証明書を取得するという提案を示した。したがって、輸入が輸出よりも多い企業は市場で輸入証明書を購入する必要がある。それは、貿易のバランスをとる方法を市場に考えさせるというライトハイザー氏の考えだった。

同氏は、どの国も国際貿易においては最善の利益を図っている一方、中国の貿易には技術窃盗という「邪悪な目的が含まれている」と述べた。

これに対抗するには、中共による強制的な技術移転を阻止し、中国からの投資と中国への投資を管理することが必要である。ライトハイザー氏は米国の技術や資金で中共の世界支配の野望を助長することに終止符を打つと語っている。

 

エポックタイムズのシニアエディター。EPOCH TVの番組「米国思想リーダー」のパーソナリティーを務める。アカデミア、メディア、国際人権活動など幅広いキャリアを持つ。2009年にエポックタイムズに入社してからは、ウェブサイトの編集長をはじめ、さまざまな役職を歴任。ホロコーストサヴァイバーを追ったドキュメンタリー作品『Finding Manny』 では、プロデューサーとしての受賞歴もある。
Terri Wu