「世界ユニバ」中国成都で開会 異常な厳戒態勢、開会式で観客は「おむつ」着用

2023/07/30
更新: 2023/07/30

四川省成都で今月28日、各国の大学生らが集まる国際的スポーツイベント「世界ユニバーシティー大会(2021/成都)」の開会式が開かれた。本来の予定は2021年開催であったが、コロナ禍の影響で今年に延期された。

開会式に首脳が出席した国は、インドネシア、モーリタニア、ブルンジ、ガイアナ、ジョージアの五カ国のみ。この必ずしも大国ではない国々の首脳が出席する今大会において、その厳戒態勢は異常なほどのレベルに達している。

「抗議活動の予告」に神経とがらす当局

開会式2日前の成都駅で撮影されたという動画のなかには、外地から成都への応援に動員された大勢の警察官の姿があった。

大会の開催に当たり、多くの工場や企業は操業停止を余儀なくされている。また、車両通行規制や住民の出入り制限など、各種の規制により市民生活への影響が大きく、不満が噴出している。

大会初日28日の早朝から、成都の街は警官や警察車両で溢れた。この日、成都では習近平国家主席の強権的な政治に対する抗議活動が呼びかけられていた。開会式当日、市内から式典会場までの道路は完全に閉鎖されている。封鎖された道路沿いの集合住宅では窓を開けることさえ禁じられたため、スマホで写真や動画の撮影もできない。

交通規制によって市内で車を運転できない市民のために、当局が街中で市民に「貸し出し自転車」を配っている様子を映した動画もある。

写真左は、住民の出入りを制限するための「臨時の出入り証」。写真右は、当局が街中で市民に自転車を配っている様子。

市内の多くの集合住宅では、住民の出入り回数を減らすため食料品をまとめて配送したり、住民に臨時の「出入り(許可)証」を発行するところもあるようだ。

なかには、「ゴミ収集車」を使って住民に食料品を配送しているところもあった。

関連画像がネット上にも流れているが、非常の手段とはいえ「まさか、ゴミ収集車で」と物議を醸している。こういった光景はゼロコロナ期間中の中国各地で多く見られたため、「まるで3年前のゼロコロナ時代にタイムスリップしたかのようだ」と呆れる人も多い。

「ゴミ収集車」を使って、住民へ食料品を配送している場面。(NTD新唐人テレビの報道番組より)
 

 

出入りを制限されている成都市民に配給された食料品。(NTD新唐人テレビの報道番組より)
 

 

動員された観客は「政治審査ずみ」

習主席の訪問に関連する地域では、米テスラ製の電気自動車(EV)の乗り入れが「またも」禁じられたことも関係者の話でわかった。

「またも」といったのは、ここ数年、テスラ車の車両に搭載されたカメラによって機密情報が収集されているという(中国側の)懸念があり、中国の軍事施設や習主席が訪問する地域への乗り入れがたびたび禁止されてきたからだ。

28日、大会の開幕式典では、盛大な花火ショーと大掛かりなパフォーマンスなどが行われた。大会の開会式には、習近平国家主席が出席し、世界113の国や地域から約6500人の選手が参加したと報じられている。

だが、この式典会場に入場するには「開始の8時間前にセキュリティ検査を受ける必要がある。検査後は(所定の場所に)移動するまでその場で待機しなければならず、トイレに行くこともできない。観客のなかには、おむつを着用する人もいる」と明かす関係者もいる。

さらに「開幕式前には(観客を動員しての)2回にわたるリハーサルがある。これには必ず参加しなければならず、途中退場もできない」という。

そういって内幕の一部を明かす関係者は「こんな式典のチケットを買いたい人がいるだろうか?」と問いかけた後、実は観客のなかには「選ばれた人たちもいる」と話した。

要するにこの式典は、中国版・紅白歌合戦である「春節聯歓晩会」の類と同様、多くの観客は当局が手配し、事前に「政治審査」をクリアした人たちだというのだ。

開会式の夜、成都市内の一部のバーではカラオケで歌をうたうことが禁止され、中央テレビのニュース番組か開会式のライブ放送の視聴のみが許されたようだ。関連画像がネット上に拡散されて物議を醸している。

式典を大々的に報道し、災害を伝えない官製メディア

中国の官製メディアは、成都大会の期間中その「盛況ぶり」を大々的に報道するだろう。ところが同じ時に、成都と同じ四川省の重慶や瀘州で起きている大規模洪水や土砂崩れの現状は、ほとんど伝えられていない。

ネット上に出回った大量の動画や写真からして、四川省南部の瀘州で27日に大規模な洪水が発生した模様だ。多くの町が一面の海と化し、大量の車両がまるでおもちゃのように水に流されている。だが、中国当局による情報封鎖によって、外部は災害の詳しい状況について知ることはできない。

四川省瀘州で起きた大規模な洪水。

 

四川省瀘州で起きた大規模な洪水。
四川省瀘州で起きた大規模な洪水。

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。