今月5日、英国・ロンドンにあるブリックレーン(Brick Lane)エリアの「落書きの壁」が、何者かによって白く塗られ、その上に「自由」「平等」「法治」「愛国」といった中国政府の宣伝する「社会主義核心価値観」が上書きされていたことがわかった。
書かれたのはもちろん漢字だが、今の中国で使われる「簡体字」であることが興味深い。
それだけでも一つのニュースだが、この話には続きがある。誰かが中国の「社会主義核心価値観」に反感を覚えたのか、それを最初に書いた人とは明らかに異なる人物によって、ちょっとした「付け足し」がなされる事態となった。
例えば「民主」の文字の前には、中国語で「没有(ない)」が付け足された。「没有民主」つまり「(今の中国には)民主がない」となる。
その下には、中国のインターネットで検索した際に「ページが見つかりません」を意味するエラーメッセージ「404」が落書きされていた。これらはどうやら、中国当局による情報封鎖を皮肉る狙いがあるとみられる。
ほかにも「文明」「和諧(調和)」「自由」「平等」などの文字の前には、いずれもNoやNotを意味する「無」や「不」の漢字が書き加えられていた。「法治」の前には「偽」の文字が付けられ、後ろには「?」があった。人の目を引く、なかなか良くできたアートになっている。
「李老师不是你老师(李先生はあなたの先生ではない)」をはじめとする著名インフルエンサーによるこの「落書の壁」関連投稿を見て、この「社会主義宣伝の壁」に「二次創作」をするためにわざわざ「ブリックレーン」を訪れる市民も多いという。
街中に溢れるグラフィックアートで知られるブリックレーン(Brick Lane)は、ロンドンでも特に有名なエリアで、地元の人だけでなく観光客も多く集まる。
白く塗り替えられる前、この「落書の壁」にはアート作品が多く施されていた。なお「落書き」そのものはロンドンでも違法行為であり、見つかれば罰金の対象になるという。
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