台湾で“麻生節”炸裂…「お金をかけた防衛力、持っているだけではダメ」

2023/08/09
更新: 2023/08/08

台湾訪問中の自民党・麻生太郎副総裁は8日、台北市内で講演し、日本や台湾を取り巻く国際環境は「着実に有事、非常時へと変わっていっている」と指摘した。軍備を拡張する中国共産党を念頭に「この地域で戦争を起こさせない」との意気込みを示すべきであり、日米台は「戦う覚悟」が求められていると強調した。

麻生氏は台湾のシンクタンク「遠景基金会」主催の国際フォーラム「ケタガラン・フォーラム」で講演し、台北でも”麻生節”を振るった。抑止力について「能力、意志、国民的合意」の3つから成り立つと説明し、「お金をかけた防衛力は持っているだけでダメだ。力を使う意思を持つ、国民的合意もある、それらを相手に明確に伝える。その3つ揃ってこそ抑止力である」と強調した。

イギリスとアルゼンチンの間で起きたフォークランド戦争などを例に挙げ、防衛の意志を相手に明確に伝えなければ戦争につながると訴えた。

12年前の台湾訪問時の状況を引き合いに出し、「少しずつではあるが間違いなく有事、非常時へと確実に変わっていっている」と指摘した。さらに「変化は突然現れたものではない。基本的には構造的にはあった懸念やリスクは潜在的に存在していた。より顕在化してきたんだということだと思っている」と語った。

中国共産党の軍事的野心にも言及し、「台湾海峡の平和と安定」はG7サミットの声明にも記載されるなど、国際社会の重大な関心事になっていると指摘。「この地域で戦争を起こさせない」ためには、中国側にはっきりと意志を伝えるとともに、日台米をはじめとする同志国で強い抑止力を機能させ、「戦う覚悟」を持つことが重要だと訴えた。

台湾の新型コロナ対策における実績を讃え、国際的地位の向上を強く支持する姿勢を示した。また、日本が議長国を務める環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)への加盟申請を歓迎した。世界の半導体産業における台湾の重要性に触れ、日台で連携することで経済安全保障を強化することができると語った。

フォーラムでは蔡英文総統やエストニアのアンシプ元首相、呉釗燮外相らも登壇した。台湾情勢が世界に与える影響や、情報戦・認知戦が民主主義に与える影響、経済安全保障における国際サプライチェーンの構築と台湾の役割をテーマに議論を交わした。

麻生氏は7日から9日にかけて台湾を訪問している。7日には台北近郊の軍人墓地「国軍示範公墓」を訪れ、李登輝元総裁(20年没)の墓の前で手を合わせた。李氏の次女で李登輝基金会の董事長、李安妮氏とも面会した。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。