「軍事作戦演習のオリンピック」で提携国の即応性と相互運用性を強化

2023/08/14
更新: 2023/08/14

多国籍軍の水陸両用強襲から革新的な陸上兵站作戦、人命救助のためのウェアラブル・テクノロジーの試験に至るまで、タリスマン・セイバー2023は、インド太平洋の平和と安定を確保するための「統一された決意」を示すと同時に、十数か国の同盟国・提携国から集まった3万人の部隊の即応態勢を磨き、関係を強化した。

2年ごとに開催され、今回で第10回目となる豪米演習は、7月から8月にかけての2週間、オーストラリア全土の基地やその他の場所で、実戦的な訓練や模擬訓練が行なわれ、「軍事作戦演習のオリンピック」として、その規模と範囲において前例のないものとなった。 演習には、カナダ、フィジー、フランス、ドイツ、インドネシア、日本、ニュージーランド、パプアニューギニア、韓国、トンガ、英国が参加し、インド、フィリピン、シンガポール、タイがオブザーバーとして参加した。

オーストラリア国防軍(ADF)の戦闘訓練センター司令官を務めるベン・マクレナン(Ben McLennan)陸軍大佐は、ブリスベンから北に約1,100キロ離れたクイーンズランド州北東部にあるオーストラリア国防軍の広大なタウンズヴィル実動訓練場で、新戦力の演習への統合は「驚くほどスムーズだった」とFORUMに語った。 「20年足らずの間に、2か国から13か国、そして次回は17か国になる可能性があるという事実は、まさに驚異的だ。

統合は、人、プロセス、プラットフォームにまたがるものだ」とマクレナン大佐は演習のフォース・オン・フォース部分で、部隊、戦車、ヘリコプター、軍艦の赤と青の模型が各軍の位置と資産を示す、およそ8×16メートルのフロアマップの横に座りながら述べた。 「志を同じくする国から来た参加者は、かなりうまく溶け込んでいる。 そこには真摯さがあり、協力すること、連携すること、一緒にチームを組むことを心から望む気持ちがある。

我々は似ているところもあれば違うところもある。だからこそ、このような活動は、複数の国の人々に通用する共通のプロセスを開発するのに役立つ素晴らしいものだ」と述べた。

タリスマン・セイバーに100人以上の要員を派遣したインドネシア国軍は、多国間協力の貢献者であり受益者のひとつだ。 第501空挺大隊の司令官を務めるインドネシア陸軍のアリーフ・ウィディヤント(Arief Widyanto)中佐はFORUMの取材に対し、「演習の計画段階から、すでに多くのことを学んだ」と語り、

「インドネシア軍にとって、国外でこのような大規模な演習に参加し、同盟軍の能力を知ることができるのは素晴らしい経験だ」と述べた。

タリスマン・セイバーで披露された新たなテクノロジーと能力は、きわめて小規模なものから大規模なものまで含まれていた。 米国国防総省の化学・生物・放射性物質・核防衛統合計画事務局の上級科学者、ネイサン・フィッシャー(Nathan Fisher)博士によれば、米国軍兵士は、熱ストレスの兆候を監視するために心臓に装着する携帯電話接続装置を含む、ヘルス・レディネス・パフォーマンス・システムを試験した。

「これは心拍数、心拍変動、呼吸数、脈拍酸素レベル活動、その他いくつかの生理学的指標を測定し、予測アルゴリズムがその隊員のデータを分析し、その隊員や分隊長、衛生兵にアラームを発してその隊員を観察することを可能にするものだ」とフィッシャー博士はニュースリリースで述べている。

また、米国軍はオーストラリア軍と協力して、クイーンズランド州沿岸で車両や機材を船から陸まで運ぶための浮き土手道を建設した。これは、過酷な環境や港湾施設が利用できない場合に不可欠な機能を発揮する。

米国陸軍第8戦域支援司令部のジェレッド・ヘルウィグ(Jered Helwig) 少将は声明の中で、「紛争中の兵站環境では、インド太平洋全域の作戦ニーズに対応するため、支援活動は順応性と柔軟性を持つ必要がある」と述べた。

トンガのような小さな発展途上国にとって、タリスマン・セイバーは「地域の安全保障体制の一部」となる貴重な機会であったと、演習に参加した太平洋島嶼国40名の部隊の司令官であるタウ・アホレレイ(Tau Aholelei)中佐は語った。

「我々は皆、安全保障に関するそれぞれ固有の関心がある。 同時に、我々には安全保障上の共通の関心事もある」と、トンガの3倍の面積を持つ2,300平方キロメートルの演習場タウンズヴィル・フィールドで、アホレレイ中佐はFORUMに語った。 また、「最も小規模な参加国のひとつである我が国は、単に貢献するだけでなく、貢献することで作戦に付加価値を与え、提携国に付加価値を与え、安全保障業務に関して信頼でき、信用に足る存在であることを示したいと願っている」と述べ、

「それはまた、我々に多くの援助とサポートを与えてくれる この地域への恩返しの一環でもある」と語った。

中国共産党による東シナ海や南シナ海、自治権を持つ台湾周辺での攻撃的な姿勢、北朝鮮の相次ぐミサイル発射、ロシアによる不当なウクライナ侵攻は、地域の安定に対する懸念を高めている。 タリスマン・セイバーの数か月前、オーストラリア政府は包括的な「国防戦略見直し」を発表し、地政学的な悪化を強調するとともに、長距離攻撃能力の開発、北部軍事基地のインフラ強化、同盟国や提携国(特に米国)との関係強化を求めた。

タリスマン・セイバーが2週目に入る頃、米国のロイド・オースティン(Lloyd Austin)国防長官とアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官がブリスベンを訪問し、オーストラリアのリチャード・マールズ(Richard Marles)国防相、ペニー・ウォン(Penny Wong)外務相と会談した。 なかでも両国の軍事・外交トップは、米国海軍潜水艦のオーストラリア訪問を増やし、誘導多連装ロケットシステムなどの兵器生産で協力することで合意した。

共同声明の中で、両国の同盟関係はかつてないほど強固なものになっていると指摘した上で、「共通の価値観の絆に基づき、安定、繁栄、平和を維持するという共通の決意を前提とした、戦略的利益をもたらすパートナーシップであり続けている」と述べた。

タリスマン・セイバーはその絆を象徴している、と演習計画担当者らは言う。 「全体として、素晴らしい成果だと思う」とマクレナン大佐はFORUMに語った。 そして「共に活動し、共に訓練し、そして、共に戦う可能性のある、より良い存在になるための、共通の、統一された決意とコミットメントの証だと思う」と述べた。

Indo-Pacific Defence Forum
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