女子寮にドアもなく、壁はカビだらけ 全寮制高校の劣悪な学生寮=中国

2023/09/05
更新: 2023/09/05

日本では、多くの学校で9月1日から夏休みが開け、2学期が始まった。お隣の中国でも9月1日から新学期が始まったが、中国は欧米と同じように9月始まりなので、ここが新学年のスタートになる。

さて、新学年の新学期が始まるにあたり、これから親元を離れて学校の寄宿舎に入る全寮制の学校では、子供が生活する学校の宿舎を親たちが訪れている。ところが、ある学校の学生寮では、その劣悪な環境に親たちが驚き、カメラに収めて相次ぎSNSに投稿している。

なお、中国の初級中学(初中)は日本の中学校。高級中学(高中)は日本の高校に相当する。

まるで集中営(強制収容所)か刑務所

いまSNS上には学校の寄宿舎関連の動画が多く流出しているが、一部の学生寮は、深刻な老朽化や極めて不衛生な状態にあることが明るみに出て、ネット上で物議を醸している。

親たちによるSNS投稿が相次ぎ、学生寮の「実態」が世論の注目を集めたことで、寮の撮影を禁止する地方も現れている。

 

中国の一部の学校の学生宿舎。(SNS投稿動画よりスクリーンショット/合成)
広西省のある中学・高校の宿舎。写真左は入り口。写真中央は、シャワールーム。写真右は、穴が開いただけのトイレ。まるで刑務所のようだ。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

 

 

ぞっとするような「カビだらけの壁」

ある学校の女子寮の環境は、極めて劣悪であった。ぞっとするような、カビだらけの壁。錆びでボロボロになったベッドフレーム。廊下と部屋の間にはドアがない。通気は良いだろうが、これでは女子生徒が丸見えである。

こうした環境について「生徒たちに、寒い冬をどう過ごせというのか」「これは学校ではない。刑務所だ」「強制収容所のほうが、まだ待遇は良い」といった批判がネット上に飛び交っている。

さらに驚いたことに、同じく廊下との間に扉すら取り付けられていない女子寮の一つが、なんと「四川省の校風模範高校」の称号を持ち、同省内江市資中県の県教育局直属の高校である「四川省资中县龙结中学」だという。

県教育局直属の模範高校である「四川省资中县龙结中学」の外観。表向きは非常に良い。(中国のネットより)

 

(廊下との間にドアもない「四川省资中县龙结中学」の女子寮)

しかし、そうした表向きの良さと対照的に、コンクリートがむき出しの寮の内部は、なんとも殺伐とした感さえある。

1つのベッドに「2人で寝る」

8月27日、広西省欽州市の学校に通う子を持つ保護者が撮影した動画のなかには、多くの2段ベッドがぎっしり詰め込まれ、見るからにぎゅうぎゅう詰めの部屋があった。

ベッドとベッドの間の通路は、わずか1人しか通れないほど狭い。この保護者によると、1つの部屋には2段ベッドが15基で、30人の生徒が住まわされている。ただし、2段ベッドの上下に一人ずつではなく(上段は荷物などで)下段のほうに生徒2人で寝ているのだという。(関連動画はこちら

そのほか、河北省廊坊市の大香河小学校の動画で、小学生サイズの長さ1.2メートル、幅55センチの3段ベッド宿舎の様子もSNSに流れている。(関連動画はこちら

 

(河南省のある学校の宿舎。「ベッドとベッドの間に隙間はない。2~3㎡に6人が住む。これはプライバシー云々の前に、隣人トラブルが多発するだろう」と投稿者は書いている)

 

これが学校の施設だろうか?

(SNS投稿動画、中国の中学の宿舎。まるで「強制収容所レベル」)

(SNS投稿動画、広西省の中学・高校宿舎。これが学校の施設だろうか)

 

農村部の学校では、専用の宿舎棟がほとんどなく、使わなくなった教室や倉庫などを学生寮に改造して生徒に住まわせている現状がある。

しかし、たとえ簡素な設備であったとしても、生徒や学生の健康を維持するために、十分に清潔で、心安らぐ環境を用意することは学校の義務ではないか。カビだらけの宿舎など、もってのほかである。

一部のネットユーザーからは「中国政府がアフリカなど発展途上国の教育に無償援助するが、なぜ自国の教育に関心がないのか」「政府は、たとえお金がなくても、教育だけは手を抜いてはダメだ(再窮不能窮教育)と言っている。あれは、ただの中身がないスローガンだったのか」といった批判の声も上がっている。

寝具は「学校指定店で購入」が義務

ある投稿によると、重慶の学校では「ふとんなどの寝具は自己負担で、全て学校指定の店で購入することが義務付けられている」という。しかも価格は268元(約5300円)と、やはり市場よりは割高だ。

値段なりの良い品質なのかと思うと、コメント欄には「実はそうでもない」という指摘もある。「学校指定の寝具は品質の悪い綿が使用されていて、長く使うと皮膚病にかかる。私は元被害者だ」という、ちょっと怖いコメントがあった。

この寝具関連の投稿には「どうせ学校は、その店からキックバックをもらうんだろう」「きっと校長の親戚がやってる店だ」といった営利志向の学校を皮肉るコメントが寄せられている。

 

寝具に限らず、中国の学校では、教科書のほか、練習ドリルやノートなどの教材まで学校指定の店での購入を義務付けている学校が多い。その値段は、多くの場合市販品より高額である。中国のSNSには、指定店の商品の値段が高すぎるほか、質も悪いなどの不満が溢れている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。