気候科学者の告白 「山火事は温暖化のせい」に話を合わせるしかなかった

2023/09/18
更新: 2023/09/18

カリフォルニア州で多発する山火事をめぐり、米国の主流メディアは温暖化による影響を分析したある論文をこぞって引用してきた。しかし、その論文は、科学雑誌が好むナラティブに合わせるため、意図的に重要な事実を見過ごしていたという。

今月5日、論文の筆頭著者で気候科学の専門家であるパトリック・ブラウン氏が、米メディア『The Free Press』への寄稿文で以下のように語った。

「私の研究では、気候変動以外の重要な側面を定量化しようとはしなかった。なぜなら、ネイチャー誌やそのライバル誌であるサイエンス誌のような権威ある雑誌が伝えたいストーリーを薄めてしまうからだ」

ブラウン氏の論文「カリフォルニア州では温暖化により1日に発生する山火事のリスクが増大している(Climate warming increases extreme daily wildfire growth risk in California)」は先月30日にネイチャー誌に発表された。

ブラウン氏と7人の共著者は、焼失面積が1日に1万エーカー以上拡大する山火事を「極端な山火事の拡大」と定義し、気候変動が「極端な山火事の拡大」にどのような影響を与えたかを分析した。

2003〜20年の間にカリフォルニア州で発生した約1万8千件の火災を機械学習モデルを用いて分析したところ、1日に発生する極端な山火事の頻度が気温上昇によって全体として平均25%増加していることが分かった。

ブラウン氏によると、気温上昇の他にも、より重要とは言わないが同じくらい重要な要素はあったという。森林管理の不備や、偶然または故意に山火事を起こす人の増加などだ。それらも極端な山火事のリスクを高めているが、主流派のナラティブに合わせるために、それらについては敢えて議論しなかったという。

ブラウン氏は、気候科学者として、このような明らかに関連性のある他の要因による影響についてはわざわざ調べなかったと説明した上で、米国の山火事の80%以上が人為的に引き起こされていることを指摘した。

「そういったことを考慮に入れたら、もっと現実的かつ有益な分析になると分かっていたかって?もちろんだ。しかし、そんなことをすれば、気候変動がもたらす悪影響に焦点を当てたクリーンなナラティブを損なうことになり、ネイチャー誌の編集者や査読者の審査に通る確率が下がることも分かっていた」

暗黙のルールは3つ

ブラウン氏によると、「聡明な気候科学者」には守るべき暗黙のルールがあるという。1つ目は、自分の研究は主流派のナラティブをサポートすべきだと理解することだ。

そのナラティブでは、気候変動による影響は「広範かつ壊滅的」であり、それに対処するための最善策は、温室効果ガス排出量の削減を目的とした「大規模な政府助成プログラム」によって講じられるとされる。

より復元力の高いインフラの整備、より多くの空調設備の設置、山火事防止のためのより良い森林管理といった、脆弱性を改善するための適応策は最善策とはみなされない。

「率直に言って、気候科学は世界の複雑さを理解できなくなってきており、一般の人々に気候変動の危険性を執拗に警告するカサンドラ(誰も信じていない予言者、という意味)になった」

「その勘がもっともなものだとしても、多くの気候科学研究を歪め、一般大衆に誤情報を与える。そしてなにより、現実的な解決策はより実現困難になる」

その一例として、ブラウン氏は、最近ネイチャー誌で発表された別の論文に言及した。この論文では、1トンの二酸化炭素排出につき、熱中症関連の死亡と農作物への被害による185ドル相当の「社会的費用」が生じていると指摘している。

しかし論文の著者は、気候変動がこれら2つの影響のいずれにおいても主要な原因ではないことには全く触れていないという。

それどころか、ブラウン氏によれば、数十年にわたり、熱中症による死亡者数は減少し、農作物の収穫量は増加しているという。

しかし、こうした事実を論文に含めれば、「聡明な気候科学者」が守るべき2つ目の暗黙のルールに違反することになるとブラウン氏は指摘する。

その2つ目の暗黙のルールとは、気候変動の悪影響を克服するために人々が実際に取ることのできる行動を無視、または軽視することだという。

「こういうことを認めると、気候変動が起こっているのにある部分では世界がうまく行っているということになる。そうすれば、排出削減の意欲を損なうことになる」

そして、3つ目の暗黙のルールは、目を見張るような数値を叩き出す測定基準を使用することだという。

カリフォルニア州の山火事に関するブラウン氏らの論文では、焼失面積が1日に1万エーカー以上となる山火事のリスクを検討した。その測定基準自体には実用的な価値はあまりないが、そこから導かれる数値は研究者や査読者、そしてメディアに印象を与える。

「なぜこのような複雑で使いにくい測定基準が広まっているのか?それは、他の計算法よりも大きな倍率が得られるからだ。より大きな数値が出れば、自分の研究の重要性、『ネイチャー』誌や『サイエンス』誌でのしかるべき位置づけ、そしてメディアでの拡散を正当化できる」

気候変動に執着するメディア

ブラウン氏は寄稿文の冒頭に、AP通信、PBSニュースアワー、ニューヨーク・タイムズ、ブルームバーグの記事を貼り付けている。それらの記事は、この夏にカナダや欧州、ハワイで起こった火災のほとんどが気候変動の結果であるかのような印象を与えているという。

「気候変動は、世界の多くの地域における山火事に影響を与える重要な要因ではあるが、私たちが唯一注目すべき要因とは言い難い」

ブラウン氏は、気候についてのより幅広い議論が可能となるような、学界と旧来メディアの双方にわたる文化の変化を見てみたいと呼びかけた。

「例えばメディアは、論文を額面通りに受け取るのではなく、何かが抜け落ちていないか調査すべきだ。著名な学術誌の編集者は、温室効果ガスの排出削減を推し進めることに焦点を絞らず、もっと視野を広げないといけない。そして、研究者自身も編集者に立ち向かうか、あるいは他に研究発表の場を探さないといけない」

エポックタイムズはネイチャー誌にコメントを求めたが、記事作成時までに返事はなかった。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
Bill Pan
エポックタイムズ記者