日本の財務省が20日に発表した8月の貿易統計によると、中国向けの輸出額は昨年同月比で1割減、9か月連続の減少となった。韓国も輸出が11か月連続の減少を記録した。
中国の統計データは日韓に違いがあるが、同一のトレンドを反映しており、日中韓の貿易パートナーシップに現れた大きな変動を示している。3つの方面からこの変化を解釈する。
1 中国と日韓の部品貿易規模はピークを過ぎ、縮小し始めている
1972年、日本は中国共産党政権(中共)と国交を樹立した。中国側のデータによれば、1972年の日中間の貿易総額は10億3800ドルで、1978年には48億 2千万ドルに急増し(約4倍の増加)1981年には1千億ドルを突破した。
そして、1990年、2002年、2006年、そして2011年には、それぞれ200億ドル、1千億ドル、2千億ドル、3千億ドル台を超えた。しかし2012年の尖閣諸島問題をめぐって、日中の緊張が激化したことにより、双方の貿易額は2011年のピークから下落した。
その後は3千億ドル台で変動し、2021年には史上最高の3714億ドルを記録した(下図を参照)
しかし、2021年に日中では台湾海峡の問題で、外交上の対立が深刻化した。2022年以降、中国経済が不安定になり、日中貿易はマイナス成長に転じた。2022年の日中貿易額は3574億ドルで、前年比で3.7%減少。2023年の1~8月にかけて、輸出入総額は12.8%減少し、中国の輸出は8.6%減少し、輸入は16.7%減少した。
韓国の場合、1992年に韓国は中共と国交を樹立した。その後30年で、中韓の貿易額は約40倍増えた。中共のデータによれば、2021年には中韓の貿易額が3600億ドルを突破した。
韓国の中国への輸出は全体の約25%を占めていた。中韓の貿易額は、韓国と米国、日本、欧州との貿易額の合計とほぼ同じだった。しかし2022年は、中韓の貿易額は3622億ドルで、前年比でわずか0.1%の増加。2023年に入ってからは、中韓の貿易は大幅に減少して、1~8月の間に、輸出入総額は17.0%減少し、また中国からの輸出は7.8%減少し、中国への輸入は24.2%減少した。
2 中国は長期的な貿易赤字から黒字に転換
中国は16年連続で日本の最大の貿易パートナーであり、対中貿易は日本の対外輸入出の20%以上を占めていた。中国のデータによれば、日中貿易において、日本側は長期にわたり黒字を続けてきた(下図を参照)
しかし、2023年に入ってから、中国側が黒字に転じた。1〜8月の日中の輸出入総額は約2079億ドルで中国の輸出は1041億ドル、輸入は1038億ドルだった。同期間に、日本への輸入の減少幅は、日本への輸出の減少幅(中国からの日本への輸出は8.6%減少し、日本からの輸入は16.7%減少)よりも大きかった。
中国はかつて、韓国にとって最大の貿易黒字国だったが、現在は最大の貿易赤字国となっている。
2018年、韓国の対中国貿易収支は556.36億米ドルで、黒字規模は各国の中でトップだった。2023年に入り、年間を通して赤字がほぼ確定している。韓国の公式データによれば、1~7月までの間に、韓国の赤字規模は144億米ドルに達した。
中国のデータによれば、2022年の中韓貿易額は3622.9億米ドルで、中国の赤字は370.5億米ドルだった。2023年1~8月までの中韓貿易総額は2024億米ドル、中国の赤字は38億米ドル。中国のデータは広く疑問視されているため、本文では韓国のデータを使う。
実際に、中国のデータで分析しても、2022年以来、中国は日本と韓国に対して輸入が減少し、輸出が増加している。例えば、2022年、中国の日本への輸出は4.4%増加し、輸入は10.2%減少、韓国への輸出は9.5%増加し、輸入は6.5%減少した。これは、中国が日本と韓国との貿易で赤字から黒字への転換が避けられないことを示している。
3 日中韓の産業構造は、相互補完関係から競争へ
中国と日本及び韓国との貿易額の減少には、いくつかの特別な要因がある。例えば、中共が日本の処理水の海洋放出をめぐり、日本の水産物の輸入を禁止したため、8月には日本の水産物を含む食品の対中輸出は前年同期比で41.2%減少した。
また、中共の「内循環」戦略、日韓の「経済安全保障」政策、そして西側の「デカップリング、リスク軽減」戦略も中国の輸出に大きな影響を与えている。しかし、根本的な原因は、およそ10年来の日中韓の産業構造が相互補完関係から競争へと変化していることにある。
現在、日、中、韓の競争は、主に資本集約的で技術集約的な製造業とハイテク製造業、主にコンピューター、電子・電気機器製造業と機械・設備製造業に集中している。
以前は、日韓の産業は中国をリードしていた。しかし中国は産業構造を次第に改善しアップグレードして、日韓との差は徐々に縮まっている。
日中韓の産業競争はますます激しくなっている。 例えば、以前は日本の家電製品が中国に輸出されていたが、今では中国の家電製品が日本に輸出されることが増えている。
韓国が比較的優位性を持つ液晶パネル、スマホ、EV、新エネルギー電池の分野で、韓国の最大の競争相手は中国企業になった。日本や韓国が設備や技術、部品を中国に輸出し、中国がそれを最終製品に組み立てて世界に輸出するという、これまでの日中韓の中間財貿易モデルは、2022年に変わり始めた。 これは日韓の対中貿易が黒字から赤字に転じる大きな要因だと考えられる。
2012年、日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の開始が宣言された。これまで16回も交渉会議が行われたが、大きな進展はなかった。一方で、CPTPP(包括的かつ先進的な環太平洋パートナーシップ協定)およびRCEP(地域的包括的経済連携協定)はそれぞれ2018年と2022年に正式に発効した。
なぜ日中韓FTA交渉は難航しているのか。根本理由は、日韓の中共に対する不信のためだ。2022年に、中国のGDP規模は日本の約4倍、韓国の約10倍だった。日韓は中共の対内抑圧と対外膨張に危機感を覚え、中共の利益誘引、浸透に警戒せずにはいられず、あらゆる手段を講じて中国経済への依存度を下げなければならなかったのだ。
また、中国と日韓の貿易状況の大きな変化は、中共と日韓の経済利益の衝突が激化していることを示している。
現在の国際的状況下で、中共が方針を変えない限り、FTAの交渉は進みにくいだろう。しかし、中共が方針を変えるというのはほぼ不可能だ。そのため、中共がFTAの交渉を行き詰まらせてしまったと言えるだろう。
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