その7「党のメディアは党の宣伝道具」 反対する者は無事ではない
2016年2月19日、習近平氏は「党の報道・世論工作に関するシンポジウム」で、「党のメディアは党と政府の宣伝の陣地であり、姓を党と名乗らなければならない(中国共産党と中国政府のメディアは中国共産党の代弁者である)と述べた。 この言葉が中国共産党(中共)の報道・世論工作の基本的な指針となった。
その核心は、すべての党メディアは政治的、思想的、運営的に党中央委員会と高度に一致するべきだということだ。
こうした言葉の指導の下で、すべての宣伝手段は中共の代弁者となっており、中共への反対意見や対立意見を発言することは非常に困難になる。それは事実上「世論の画一化」を意味する。異を唱えたり、反対したりする者は「残忍な闘争と無慈悲な攻撃」を受ける可能性があり、その結果、言葉で有罪判決を受ける者が増えている。
習氏のアプローチは、父である習仲勲が晩年に提唱した「反対意見を尊重し、保護する」というものとは正反対だ。
その8 日本「核処理水」は統一戦線の道具に
8月24日、福島第一原子力発電所は、「多核種除去設備(ALPS)等」による処理後の水の海洋放出を始めた。
これは、国際原子力機関(IAEA)が徹底的な調査と準備、そして誠実で透明性の高い情報の公開を経て承認した作業だった。
2023年7月4日、IAEAは「審査報告書」を発表し、福島の処理水の海洋放出計画は国際的な安全基準に適合しており、人や環境への影響は無視できると結論づけた。
中国はIAEAのメンバーでもあり、その代表が関連文書に署名している。したがって、この行動も中国によって事前に承認されたものである。
清華大学の研究者が行ったシミュレーション実験によると、海流の影響により、核処理水の排出によって最も影響を受ける国は日本であり、次いで米国、カナダ、メキシコ、豪州、ニュージーランド、そして中国、韓国、その他のアジア諸国である。
中国原子力産業協会(CNEA)の統計によると、2021年に中国の13基の原子力発電所から海に排出された廃水のトリチウム含有量は、福島第一原発からの計画排出量を1年で上回る。
なかでも浙江省の秦山原子力発電所からのトリチウム排出量は、2021年には218兆ベクレルに達し、これは福島の1年間の最大トリチウム排出量の約10倍に相当する。
しかし、習氏は日本の原子力発電所の排水を利用して、また反日感情をかき立てている。
中国商務部、外交部、生態環境部は断固とした反対と強い非難を表明した。 中国関税局は、日本産水産物の輸入を全面的に停止すると発表した。 中国の孫維東外務次官は、樽井秀雄駐中国日本大使を召喚し、「厳粛な陳情」を行った。
中共のメディアは一斉に日本を非難し、各地で反日行動が展開され、「小粉紅」と呼ばれている極端なネット民族主義者からの嫌がらせ電話は日本の多くの企業や個人をかき乱した。
常識、科学的データ、日中関係、中国と他国との関係、そして中国自身に与えられるかもしれない一連の深刻な害を無視して作られたこの反日の波は、中国にとって害になるだけで、少しも良いことはない。
その9 台湾に「極度の圧力」
台湾問題の核心は、統一か独立かという問題ではなく、2300万人の台湾人の心の問題である。台湾の人々の心を掴む者は台湾を勝ち取ることができ、台湾の人々の心を失う者は台湾を失うことになる。
習近平氏にとって、2300万人の台湾の人々の心をいかにして掴むかが最大の関心事であるはずだ。
1941年1月6日、世界の多くの国や地域の人々がファシズムの侵略に苦しんでいたとき、米国のルーズベルト大統領は議会での一般教書演説で、世界中の人々が「言論と表現の自由」「すべての個人がそれぞれの方法で神を礼拝する自由」「欠乏からの自由」「恐怖からの自由」の4つの基本的な自由を享受すべきであると提案した。
第二次世界大戦の終結後、米国を含む多くの国や地域の人々には「4つの自由」がすぐに与えられた。英国統治下の香港の人々にも「4つの自由」が与えられた。国民党と民進党の交互統治下にあった台湾の人々にも「4つの自由」が与えられた。
1945年9月12日、共産党の指導者である毛沢東は、重慶でロイターのインタビューで、「『自由で民主的な中国』とは、地方政府から中央政府に至るまで、普遍的で平等な無記名選挙によって選ばれるものだ。それは孫文の『三民主義』リンカーンの『人民の、人民による、人民のための政治』ルーズベルトの『四つの自由』を実現するものと考える」と述べた。
2023年、中共は建党から74年を迎えた。「4つの自由」について、中国人民は4つのうちのたった1つの自由も得られていない。習氏にとって、いかに中国人民に「4つの自由」を享受させるかは、台湾人民の心を勝ち取る4つの重要な指標である。
しかし習氏はこのような方向ではなく、「台湾統一」を歴史に名を残す大事業だと考えている。
そのため、2020年にコロナが武漢から中国全土、全世界に広がり、世界各国の民衆が依然としてウイルスに苦しめられている時でも、習氏は渤海、黄海、東シナ海、南シナ海で、これまで例がないくらい最も頻繁に軍事演習を行い、台湾の武力統一のために準備をしている。
同時に習氏は経済や政治などあらゆる面で、台湾の参加に反対し、台湾に「極端な圧力」をかけ、台湾海峡の情勢を急に上昇させた。英誌「エコノミスト」は「台湾海峡は世界で最も危険な場所」と評している。
終わりに
習氏が党・政・軍の最高指導者になったのは、習氏の父親・習仲勲が開明派だったことが大きく関係している。
習仲勲の生涯を見ると、後世に4大遺産を残した。第1に仏陀への尊敬、第2に気功への支持、第3に「雪中送炭」(困窮している人に援助の手を差し伸べる)と子供たちに求めたこと、第4に反対意見の尊重と保護である。
習氏は就任した最初の5年間、父親の長所をいくつか体現している。例えば2014年1月7日、全国政法工作会議で、習氏は「頭上三尺には神様がいますから、畏敬の念を持ってください」と述べ、習氏の初期目の5年間は、全体としてよくできたものだった。
しかし「2期目」以降、習氏は急速に姿勢を転換した。これら9つの誤った決断もほとんど2期目に起きたものだ。それはなぜだろうか。
最も重要な理由としてあげられるものとして、マルクス・レーニン主義に完全に立ち返り、これらの思想を指針として堅持することがあるだろう。
習氏は中共第19回全国代表大会で、王滬寧氏を中国共産党政治局常務委員(思想担当)に任命した。王滬寧氏は江沢民、曽慶紅が抜擢した「御用文人」だ。
王滬寧氏は就任後、中共政治局によるマルクスの「共産党宣言」の集団学習、マルクス生誕200年の「盛大な記念行事」など、習氏の頭にマルクス・レーニン主義を注入し続け、一歩一歩マルクス・レーニン主義に立ち返らせた。
マルクス・レーニン原理主義の本質とは何か。 それは「虚偽、悪、戦い」である。政治レベルにおけるその集中的な現れとは何か。権力の独占、経済の独占、「真理」の独占である。 それを一言で言えば、全体主義である。
こうして習氏の2期目、3期目は徐々に全体主義に移行し、今日、習氏は権力の頂点に達している。同時に、基本的にもはや真実を聞くことができず、次々と誤算を犯し、その結果、上記のように少なくとも9つの重大な誤った決断を犯している。
習氏が本当に安全であり続けたいのであれば、マルクス・レーニン主義を捨て、常識、理性、伝統的で普遍的な価値観に立ち戻らなければならないだろう。
(完)
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