イスラエルの受けた攻撃について:台湾軍が検討すべき三つの重大事

2023/10/14
更新: 2023/10/14

イスラエルはイスラム過激派組織、ハマス(Hamas)からの広範な攻撃を受け、約千人がこの衝突で命を失い、少なくとも2600人が負傷した。イスラエルは直後、素早く異例の予備軍30万人を動員した。専門家たちは警鐘を鳴らしており、ハマスが米国とイスラエルの情報ネットワークをどのように掻い潜り、攻撃を始めたのかという点だ。もちろん、中国共産党(中共)も注視している。この新戦術から、台湾軍には検討すべき3つの要点が浮上してきた。

ハマスは10月7日、陸海空からの大規模な多面的同時侵入を行い、イスラエルの市民を殺害し、拉致し、国を混乱に陥れた。現在公表されている情報によれば、攻撃には千人が参加し、その中の400人はハマスの特殊エリート部隊だ。新訓練を受けた「パラグライダーあるはパラシュート部隊」が動力パラシュート(パラモーター)を利用して空から侵入し、ガザの境界壁を爆破、車両が直進できる状態を確保した。

また、ハマスはイスラエルに対し、5千発のロケットを発射し、多くの死傷者を出したと伝えられている。ウクライナ戦争で評価を受けた無人機も、今回のハマスの攻撃で使用されている。ロイター通信の報道によれば、ハマスは「Zouari」と名付けられた無人機を用いてイスラエルの防衛の状況を偵察し、銃撃手に対して進入ルートを可能にさせたと言う。

■専門家によると、中共の北斗衛星が情報を提供

退役少将で、前台湾国防大学政戦学院長の余宗基(ユ・ツォンジー)氏は「大紀元時報」のインタビューで、ハマスの作戦が、米国とイスラエルの先端的な偵察システムをいかにして回避したのか、またこれら二国の情報システムが、なぜ初めて失敗したのか、これはハマスの連携して敵を欺く認知戦争だけでなく、裏には確かに中共の北斗衛星システムの情報リソースが支援しており、無人機が探査を避け、イスラエルに対して閃光攻撃を行い、深刻なダメージを与えることができた、と語った。

余氏はハマスの戦術に注目し、ロシア・ウクライナ戦争におけるドローンの利用を参考にしつつ、海、空、地上からの全面的な攻撃が新たに加わったことを指摘した。また、ハマスは「動力パラグライダー」を利用して空から侵入し、イスラエルを完全に対処不能な状態に陥れ、イスラエル軍指揮官が寝ている間に逮捕を行うなどの活動を展開した、と述べた。

余氏は、この作戦は台湾軍にとって大きな衝撃と教育になり、台湾軍が研究すべき事態であると語った。彼はさらに、中共軍もハマスの戦術的奇襲を注視しており、いかにして世界で最も強固とされるイスラエルの防空システムを突破したのかをしっかり学んだと推測している。

■飽和攻撃とパラグライダーによる奇襲

余宗基氏は3つの観点を提出し、台湾軍に評価と検討を行うよう警告している。最初に取り上げられるのは、飽和攻撃である。国際法上問題と指摘された。

余氏によれば、イスラエルの「アイアンドーム(Iron Dome)」防衛システムは大量のロケットや迫撃砲に対応するために設計された戦術武器であり、イスラエルの経済の中心地であるテルアビブ市やその他の重要な場所に展開されている。現在、イスラエルの「アイアンドーム」防衛システムはおおよそ10個の連隊で編制されており、それぞれの連隊は約80個のアイアンドームシステムを装備している。従って、すべてのシステムが1回で最大800発のミサイルを発射し、ミサイルを迎撃することが可能である。

ところが、今回ハマスが発射したロケット弾は5000発を超え、過去と比較して2000発以上、ほぼ2倍の増加となっており、アイアンドームシステムの対処能力を完全に上回っていると余氏は指摘する。対照的に、台湾の防空ミサイルの密度はイスラエルに近く、中共軍は今後、長距離ロケットで台湾に飽和攻撃を行い、台湾のパトリオット防空ミサイルや高価な防空ミサイルを消耗させる可能性が高いと余氏は予測している。

次いで、動力パラグライダーによる奇襲。

余宗基氏は、台湾海峡の海上戦闘と地上戦闘が各々異なる性質を持つこと、および台湾の周囲の海風が平均して7級以上であることから、中共軍が大型輸送艦を利用してパラグライダー戦術を用いて台湾に侵入しようとする際に、その難度が増すことを指摘した。彼は台湾軍に対し、この問題を精査すべきだと述べた。

パラグライダーの速度は無風で時速30㎞であり、もし迎風が秒速8.3m/sに正対すると、対地速度は時速ゼロとなり、全く前に進まないことになる。しかし逆に追い風を受ければ、時速60㎞で飛んで行くことが可能だ。つまり強風時には一般的に危なくて使えないと言うことになる。

しかし微風で風向きに問題なければ、パラモーターなので、平地から離陸して、エンジンで高度3000m以上まで上昇し、エンジンを切っても滑空比6:1なので、18km先まで無音で滑空できるし、上空に上がらず地表3m程度の低空を、障害物を縫うようにも飛行できる。つまり、夜間であれば気づかれないし、低空を飛べばレーダーに捕捉されないということだ。簡単な車輪がついた二人乗りなら、一人が操縦、もう一人がマシンガンや手榴弾などで、地上攻撃も可能である。  

余宗基氏は、確かに台湾軍が20mm機関砲、30mm高速砲、40mm高速砲等の武器を使用して反撃を行ってはいるものの、中共軍が海面スレスレを飛行する動力パラグライダーの積極的な開発を進めており、その上、レーダーステーション等の重要施設を夜間に占拠し、非伝統的な戦術を展開することで、台湾軍に脅威をもたらす可能性があると指摘した。 

さらに、彼によれば、現行の台湾軍の演習は、主として中共による正規の上陸手段、すなわち台湾の港や空港への侵攻を前提としている。しかし、ハマスの如く空爆を介し、かつ民間衣装を身に纏った第五列(便衣兵:民間人に化けた兵士。南京事変で多用され、国際法上問題と指摘されている)と協力して指揮センターを奪取する方法には、充分な留意が払われていない。特に、イスラエルが実戦経験、訓練レベル、国防教育の各面において台湾を大いに凌駕しているにもかかわらず、ハマスの奇襲に成功した事例は、台湾軍にとって重大な警鐘となった。

■弾薬生産量、それが鍵である

第3の焦点として、弾薬の補給問題が挙げられる。

余宗基氏によると、イスラエルが弾薬を急激に消耗したのは、米軍がウクライナを優先し、弾薬の支援を行ったためだという。台湾は海に囲まれているため、戦時における外部からの補給は困難を極め、それゆえ国内における弾薬生産量がカギを握っている。

彼はまた、現在台湾で生産されているミサイルの数量が、昨年の800発から、今年には1000発を超え、年々増加していると述べた。既存の12の生産ラインは地下に移設すべきであり、万が一戦争が起きた場合、これらの生産ラインが優先的に攻撃される可能性が高いと言う。

余宗基氏は、米国および日本が、南西諸島と台湾周辺で石油と弾薬庫を拡張し続けている一方で、その量は依然として不足していると強調。また台湾は、戦時においては外部の援助に依存すべきでなく、現段階で民間の生産能力の強化が始められるべきだと述べた。

■専門家、ミサイル保管のための大規模な地下施設建設を勧告

台湾国防部のシンクタンク・国防安全研究院の研究者、蘇紫雲氏は「大紀元時報」のインタビューに応じ、ハマスの奇襲成功に対して、台湾が留意すべき複数のポイントが存在すると述べた。最初のポイントは、中共が客船に海上民兵を搭載し、台湾の港を奇襲する可能性があることだ。次いで、中国の小型無人機が台湾海峡を越えることはできないが、商船から発進させ、台湾海域で攻撃を行うことは可能であるという点だ。

蘇紫雲氏によれば、更なる注目すべきポイントは、戦闘員が民間の服装で浸透する第五列(便衣兵)活動である。これは過去のイスラエルの戦場で見られなかったものである。というのも、イスラエル人とパレスチナ人は識別が可能であるからだ。しかし、同様の戦術が台湾内で展開された場合、彼らが双方とも中国人であるため、識別は難しいであろう。また、蘇氏は台湾に対し、ウクライナの手法を参考に、民間防衛および心理的防衛の強化を提案した。

また、蘇氏は弾薬の備蓄についても、課題が存在していると指摘した。台湾とイスラエルの状況が異なるため、イスラエルが現在、主に消費しているのはアイアンドームシステムのミサイルであり、大規模なターゲットに対するパトリオットミサイルや軍事ミサイルは基本的に消費されていない。従って、イスラエルは現在、レーザー防空システムを空防システムに組み込むために、米国に資源を要請している。

蘇紫雲氏は、イスラエルが海上から弾薬を補給することは可能だが、台湾海峡で戦争が勃発した場合、台湾が封鎖される可能性があると指摘した。故に、台湾はミサイルを保管するための大規模な地下施設を建設すべきであり、「これは比較的緊急を要する事項である」と警告した。

 

吳旻洲