今年のハロウィン(万聖節)では、例えば上海の若者たちによる「当局への皮肉」や「社会風刺」を盛り込んだ様々な仮装が話題になった。
ハロウィン期間中、上海の若者たちは、白い防護服で市民に横暴を尽くした防疫要員の「大白(ダーバイ)」のほか、習近平をあてこする「くまのプーさん」姿の皇帝に扮したり、体じゅうに白い紙を張り付けて「白紙革命」を連想させるコスプレ、ひどい労働環境で「死にそうな顔の労働者」や「鴨のネズミ」など、現代中国の世相を反映した仮装を披露した。
仮装に込めたのは「市民の本音」
それらは、そのまま中国共産党体制に対する痛烈な風刺であった。ハロウィンの仮装のなかに、市民を苦しめるばかりの無能な為政者を茶化し、揶揄する彼らの本音が含まれていたのである。
例えば、中国で驚異的なヒット作となった愛国プロパガンダ映画「戦狼2」で監督と主演を務めたウー・ジン(呉京)に扮した人は「雖遠必誅(遠きにありても必ず誅せん)」と書かれた看板を掲げ、実際には「口先ばかりで、何もしない政府プロパガンダ」を笑って批判した。
映画「戦狼2」は、アフリカのある国で、反政府組織が武装蜂起するなかで、取り残された華人や一般市民を救出する主人公の超人的な活躍を描いている。しかし実際には、中国共産党の政府が「そのような人道的な動きを、するはずがない」と、コスプレの主人公は訴えているのだ。
また、監視大国・チャイナそのものである「監視カメラ」のコスプレをする人もいる。
手の込んだ仮装としては、かつての名作映画『覇王別姬』のなかに描かれた、文化大革命の批判闘争大会に引きずり出された京劇の女形スター・程蝶衣に扮して「市中引き回し」の場面を再現する演出もあった。
実のところ、これらはハロウィンだからこそできる仮装だ。通常であれば、警察が飛んできて連行されるほどの「きわどいコスプレ」である。それでも、当局の「敏感なところ」に触れたためか、一部仮装者は警察にとがめられ、尋問や連行されていったシーンもみられた。
次々と「清算される」コスプレイヤー
しかし、ハロウィンから3週間経った今ごろになって、中共体制を揶揄する「きわどいコスプレ」をした市民が相次いで当局によって逮捕されるなど、次々と「清算」されていることがわかった。
華人圏のSNSにも、ハロウィン期間中に仮装した若者が相次いで逮捕されたり、警察に呼ばれて警告や説教されたという投稿が多くみられる。
仮装した市民の逮捕だけではない。中国の国家インターネット情報弁公室(通称:国家網信辦)は中国版TikTok「抖音」やSNS「小紅書」やテンセント社の責任者を呼び出し、ネット動画の管理方法について議論した、と米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)が情報筋の話を引用して報じている。
これらの中国SNSでは、ハロウィン期間中にみられた「社会主義核心価値に反する作品」の発表を禁じるよう求められたという。
RFAによると、上海に在住するコスプレイヤーのほか、そのとき現場で写真撮影をしていた友人までが警察の調査対象になっているという。
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