なんと建材は発泡スチロール 上海の新築高級物件も「おから工事か?」

2023/11/23
更新: 2023/11/24

上海で完成間近の「高級住宅」であるはずの新築物件が、ひび割れ、漏水、破損個所だらけであったことが、物件購入者に披露する「内覧会」で分かった。

「上海の新築高級物件でさえも、おから工事手抜き工事)か?」。その衝撃は、ため息とともに広がった。

新築の高級物件も「ひどいレベル」

当該の物件は、建物の外観からして設計のものとは異なっている。そればかりか、建物そのものに致命的な品質問題が複数あることが明らかになった。

「上海の新築高級住宅」の品質問題が露呈して世論の関心が高まると、物件を建てたデベロッパーは「補修する」と言ったが、それがどこまで信用できるのか。しかも「次の内覧会の予定はない」と発表したため、いっそう信頼を損ね、物議を醸すことになった。

中国の不動産関連指標を扱う「中国指数研究院」が発表した今年9月の主要100都市の平均新築住宅価格が1平方メートル(㎡)当たり1.6万元(約33万円)であるのに対して、今回問題が露呈した上海の新築物件の価格は1㎡あたり10万元(約210万円)と平均価格の6倍に相当する、まさに「高級住宅」である。

中国メディア「新民晚報」21日付によると、問題が見つかったこの集合住宅「上海普陀區蘇河望楼盤(名称)」は来月(12月)引き渡しの予定だった。しかし、このほどデベロッパーが開催した購入者への「内覧会」で、数多くの問題が露呈することになる。

 

問題となった物件の部屋の様子を今年6月に撮影した画像。床面はひび割れ、あちこちで漏水している状態だった。(中国のネットより)

 

建物内を見渡しても、まっすぐの壁面はほとんど見られず、どこもゆがんでいる。とくに低層階では、あちこちで漏水が見られ、塗装の剥離やひび割れを無数に見つけることができるという。

新築の引き渡し前だというのに、一部の窓枠や壁はすでにひどく傷んでいた。しかも、破れた箇所から見えた装飾の一部に使用されていた材料が、なんと「発泡スチロール(EPS)」だったという。

「物件の販売公告や売買契約書には、外壁の大面積の装飾面以外で、発泡スチロール(EPS)を使用するという記載はない」と、一部の物件購入者は問題を指摘している。

また、建物全体のデザインも「完成予想図とは明らかなギャップがある」との指摘も出ている。エントランスや子供の遊び場などの共有施設も含めて、販売時に宣伝された完成予想図には程遠く、施工業者からの受渡しに関する「検査報告書」もないという。

 

画像(上)は宣伝していた完成予想図。実際の物件は(下)で両者の違いは明らか。

 

「不動産を買うなら、完成物件を買うべき」

ネット上には、中国の社会問題となった「おから工事」への嘆きとともに、ネットユーザーがまとめた「教訓」も見られた。

「おから工事以外の何物でもない。これが1平方メートルあたり10万元の品質か?」

「今後、もし不動産を買うなら絶対に完成した物件を買うべきだ。未完成の物件を先物買いすると、爤尾楼(建築工事が途中で停止した建物)になったり、品質不良の問題が出るなど、事前には予測不可能な事態があまりにも多い」

かつて、中国で不動産バブルが過熱していた90年代には、目を血走らせた投資家たちが、まだ形も見えていない「未完成物件」を先を争って買った。「今買えば、必ず値上がりする」というのが、彼らにとって「絶対の信仰」になっていたからだ。しかし中国のバブル崩壊後、その結果はどうであったか。

中国の各地には、まさに爤尾楼(ランウェイロウ)という未完成のまま放置されたマンションなどの建物が林立する、異様な光景が出現した。そうした世にも恐るべき光景は、鬼城(ゴーストタウン)とも呼ばれている。

中国で、住宅の「おから工事」が社会問題となってから、10数年が経つ。2008年5月12日の四川大地震(汶川大地震)では、規定数の鉄筋が入っておらず、粗悪なセメント材を使った典型的な「おから工事」の校舎が完全崩壊して、1万9千人ともいわれる小・中学生が犠牲となった。

その悲劇を知らない中国人はいないはずであり、住宅を購入する側もそれなりに物件の品質を吟味したに違いないが、売り手のプレゼンテーションが巧妙(あるいは狡猾)だったためか、このような結果となった。

今回の事例は「上海の高級物件でさえ、この品質か?」という意味で、中国の不動産市場に新たな衝撃を与えたと言ってよい。
 

(中国のおから工事住宅。手で曲げられる鉄筋。SNS投稿動画)
 

(中国のおから工事住宅。マンション高層階の手すりが抜けた。SNS投稿動画)
 

(中国のおから工事住宅。水浸しになる室内。SNS投稿動画)
 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。