近年、深刻な財政危機に陥っている中国各地の地方政府では、ついに各種の公的資源まで売りに出す事態となった。なかでも市民の個人情報をふくむビッグデータまで競売にかけていることが明るみになり、非難を浴びている。
先月、湖南省衡陽市が、これまでに市が集めたビッグデータを公然と競売にかけたことがわかり、世論は沸騰した。市民の個人情報をふくむ膨大なデータを、公的機関が「売り」に出したことは、当然ながら市民の激しい怒りを買った。
11月10日、「衡陽市公共資源交易中心(衡陽市公共資源取引センター)」は、オンラインを通じて、「市の官公庁データ」などを18億元(約375億円)で競売にかけると公表した。
これは、中共当局による初の公然たるビッグデータの競売となる。そのため世論は沸騰し、ネット上では「市民のプライバシーへの侵害だ」「売れるものは何でも売るというのか」といった非難が殺到した。こうした世論の圧力により、5日後に競売の中止が発表されている。
この件について、ある法曹関係者は「公的なビッグデータには市民の個人情報などのプライバシーが含まれている。それを公然と販売することは、犯罪になる可能性がある」と指摘している。
本来ならば、政府役人の個人財産などはオープンで透明であるべきだが、中国共産党統治下の中国では「国家機密」とされている。しかし一方で、市民の個人情報はしばしば流出し、ひいては営利目的で譲渡されることさえある。
目下のことろ、中共当局が公然とビッグデータを売りに出す事件はないが、個人の追跡や個人情報などが闇サイト上で大量に取引されている。政府役人が秘密裏に市民の個人情報を売ることはよくあるケースだ。
また、多くの詐欺集団が手にしている大量の個人情報の出どころは、いずれも政府部門や、中国人の誰もがもっているスマホの通信会社だと言われている。
地方政府は近年、深刻な財政難から様々な公共資源を外部に売り渡している。さらには「数十年先までの未来における、各種公共サービスの経営権」などを高値で競売にかけるところもある。
例えば、四川省は当面の財政難を解消するため、2021年にユネスコ世界遺産に登録されている省内の「楽山大仏」の所在地「楽山大仏風景区」について、今後30年間の運営権を17億元(約354億円)で競売にかけたことが明るみに出た。
昨年8月、貴州省榕江県は、ある葬儀場の今後20年間までの運営権を1億2680万元(約25億円)で売却した。
同じく昨年7月、四川省南充市閬中市は1.8億元(約37.5億円)で、市の公的機構および公立学校向けの配食サービスに関する今後30年間の利権を競売に出した。この取引は、後に世論の非難を浴びて中止に追い込まれている。
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