今の中国において、病院をはじめとする医療現場の「闇」は限りなく深い。
安徽省蕪湖市にある、同市でもトップレベルの医療を誇る病院がこのほど、医療費の過剰請求で摘発された。過剰な検査や無駄な治療、薬の過剰処方などをしていたという。
最近、その内情を暴露する、ある文章が中国のSNSで拡散されて話題になっている。その文章につけられたタイトルは、次のようなものだった。
「名門校出身の博士が語る:私は、病院が私の父親から10万元(約206万円)の医療費を過剰請求したことを、いかにして突き止めたのか」
この文章は、ICU(集中治療室)で117日間の治療を受けた後に亡くなった安徽省のある患者の遺族が、各種の請求書を精査分析した結果、病院がみだりに医療費を請求していた事実を突き止めた内容となっている。
12月3日、安徽省の医療保障局は、医療レベルなどが市内でもトップを誇る「蕪湖市第二人民医院」において、過度の診察や検査、薬の過剰処方、重複請求、標準的な費用を上回る請求などの問題が存在していることを明らかにした。同病院は総額21万元(約433万円)に及ぶ医療費を、不正請求をしていたという。
世論の圧力が高まったことによって、当局は「蕪湖市第二人民医院」の看護師部門の責任者やICU責任者など、同件の関係者に対して「警告」や「左遷」などの処罰を下している。
だが、ネット上では「これでは処罰が軽すぎる」「たかが看護師長に、そんな権限があるとは思えない(もっと上の人間の仕業だ)」「氷山の一角だろう」といった不満が広がっている。
地元住民によると「市内の高度なレベルの病院が、医療費を過剰請求する問題は普遍的に存在している。しかし一般市民は、あの博士(告発者)のように詳しく分析することができないため、被害を受けてもわからない」という。
実は、このたび医療費の過剰請求で摘発された「蕪湖市第二人民医院」は、それ以上の「凶悪犯罪」を犯していたことが判明した。
米ニューヨークに拠点をおくNGO団体「追査国際(WOIPFG)」が公表した「法輪功学習者をターゲットとする、臓器狩りに関与した疑いのある医療機関およびスタッフのリスト」のなかに、同病院およびそのスタッフや関係者が多数含まれていたのだ。
つまり、今回名前が挙がった「蕪湖市第二人民医院」は、中国に複数あるうちの一つとはいえ「臓器狩り」に関与した病院であった。
「臓器狩り」のプロセスのなかでも、健常な人の臓器を奪いとることは、必ずしも高度な技術や医療設備を必要としない。摘出するだけなら、専門の外科医でなくても、他の科の医師でも可能だと言われている。とにかく(ドナーは死ぬ前提で)手早く、臓器だけを取り出してしまえば良いからだ。
その次に、どこかで奪い取った臓器が運ばれてきて、それをレシピエントの体内に移植する際には、極めて高度な技術と整った設備が求められる。移植手術後、入院中のケアも必要であろう。
この2点から考えて、技術・設備ともに市内トップレベルの誉れ高い「蕪湖市第二人民医院」は、レシピエントに移植するほうをやっていたのか。
カネの魔力は、人命を救うはずの医療を「悪魔の錬金術」に変えてしまう。この病院が「臓器狩り」に手を染めていたならば、医療費を過剰請求するぐらい何の罪悪感もないだろう。
そこで先述の、関係者への「処罰」について再度言及する。
地元当局は、病院長など高層の人間ではなく、看護師部門の責任者やICU責任者などに対して「警告」や「左遷」などの処罰を下した、としている。
しかし、ここが「臓器狩り」病院であったとすれば、監督するべき安徽省の医療保障局からして「それを知っていながら、まるごと隠蔽している」構図が浮かび上がってくるのだ。
今回の告発をきっかけにして、この病院の「もっと大きい罪業」まで暴露されては地元政府としても困る。「とにかく穏便に始末するため、下っ端の人間だけを軽く処罰しておこう」。本来ならば、刑事事件になってもおかしくない事例であるが、当局が、そんな手心を加えた形跡が見えることもまた事実である。
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