プレミアム報道 「信頼の置けるインターネット」の構築で加速する「陰謀論」や「誤情報」との戦い

【プレミアム報道】国連によるオンライン上の言論統制計画の内幕(上)

2023/12/09
更新: 2024/01/03

国連という強力な国際機関が、ソーシャルメディアやオンラインコミュニケーションを規制し、「虚偽情報」や「陰謀論」を取り締まる計画を発表したことで、言論の自由を擁護する人々や米国の有力議員の間で警戒感が高まっている。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)は先月、59ページからなる報告書を発表。「政府、規制当局、市民社会、そしてプラットフォーム自身といったすべてのステークホルダー(利害関係者)が実施すべき具体的な対策」の一連を概説した。

このアプローチは、政府や企業といった機関を通じて、「文化の多様性」や「ジェンダー平等」といった目的を推進しながら、さまざまな言論の拡散を阻止するための世界的な政策を押し付けている。

国連は特に、いわゆる「誤情報」「偽情報」「ヘイトスピーチ」「陰謀論」を標的にすることで、「信頼の置けるインターネット」の構築を目指している。

停止や制限の対象となる表現の例としては、選挙に関する懸念、公衆衛生対策、差別扇動となりうる主張などが挙げられる。

2020年11月17日、ワシントンで開かれた上院司法委員会の公聴会「検閲、弾圧、2020年選挙」で遠隔証言するフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏(Bill Clark-Pool/Getty Images)

批評家たちは、「偽情報」や「陰謀論」の申し立てが、政府やビッグテックにおける強力な勢力によって、真実の情報や核心的な政治的言論さえも封じるために、ますます利用されるようになっていると警告している。

ちょうど先月、米下院司法委員会は「偽情報の疑似科学」を非難する報告書を発表した。

同委員会によると、議員たちが「検閲産業複合体」と呼ぶものによって、この「疑似科学」が「武器化」されているという。

その目的は、憲法で保護された政治的言論を封じるためで、主に保守派が狙われているという。

「偽情報の疑似科学は、今も昔も一般的なシナリオに反する意見を持つコミュニティや個人を一番に標的にした政治的策略に過ぎない」と、報告書は述べている。

実際、ユネスコが求めているポリシーの多くは、米国を拠点とするデジタル・プラットフォームによってすでに実装されており、その多くはバイデン政権の要請によるものであることが、最新の議会報告書で明らかになっている。

 2021年3月31日、古文書を見るユネスコのシン・クー副局長(右から2人目)。(MICHELE CATTANI/AFP via Getty Images)

いっぽう、ユネスコの新計画に懸念を表明した米国の連邦議員もいた。

「私は、バイデン政権がユネスコに再加盟するという誤った決断を下したことで、米国の納税者が何億ドルもの負担を強いられることになることを、繰り返し公然と批判してきた」と、マイケル・マッコール下院外交委員長(テキサス州選出)は、ソーシャルメディア計画についてエポックタイムズに語った。

マッコール氏は、ユネスコを「深い欠陥がある組織」と呼び、特に「中国共産党を含む権威主義政権の利益を促進する」組織であることを懸念している。

実際、ユネスコは他の多くの国連機関と同様、中国共産党の曲星副事務局長など複数の中国共産党員を指導層に抱えている。

中国共産党員は、国際機関で働いていても、共産党の命令に従うことが期待されている。中国共産党はそのことを繰り返し明らかにしてきた。

国際機関を扱う下院歳出小委員会の議員らは現在、税金が不適切に使われているとして、さまざまな国連機関への資金を削減または減額しようとしている。

すでに米国政府は、レーガン政権下とトランプ政権下で2度、ユネスコから脱退している。過激主義、米国の価値観に対する敵対心、その他の問題を懸念しての脱退だった。

バイデン政権は今年初め、議員らの反対を押し切って再加盟した。

 2023年7月25日、パリのユネスコ本部にある彫刻の航空写真。2018年にドナルド・トランプ大統領がユネスコから脱退したが、後にジョー・バイデン大統領が米国をユネスコに復帰させた(BERTRAND GUAY/AFP via Getty Images)

ユネスコ・プラン

ユネスコの新たな規制体制は、表現の自由を守る計画として売り出されている一方、「政治的・経済的利益から守られた」「独立した」規制当局による国際的な検閲を求めている。

「国内、地域、そしてグローバルなガバナンスシステムは、国際人権法および基準のもとで制限される可能性のある内容に対処する上で、協力し、実践を共有する(中略)ことができるはずだ」と報告書は説明する。

政府が言論や報道の自由を侵害することは、米国憲法修正第1条で禁じられている。しかし、ユネスコは、「人権」に関する国際的な文書を列挙し、どのような言論なら自由を侵害してよいかを決定すべきとしている。

これらの協定には、市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)が含まれている。同規約は「表現の自由を制限することは法律で規定されなければならず、また正当な目的にかなうものでなければならない」としている。

国連の人権委員会は最近の報告で米国政府に対し、合衆国憲法の改正を要求し、ICCPRを遵守するために「ヘイトスピーチ」の阻止と処罰を強化するよう要求した。

 2021年5月18日、ワシントンの連邦議会議事堂でCOVID-19ヘイトクライム法について演説するナンシー・ペロシ下院議長(カリフォルニア州選出)。(Kevin Dietsch/Getty Images)

国連のもう一つの重要な文書が世界人権宣言であり、その第29条には「権利および自由は、いかなる場合にも、国連の目的および原則に反して行使されることはない」と明記されている。

ユネスコの報告書によれば、制限されるべき内容が発見された場合、ソーシャルメディア・プラットフォームは、アルゴリズム抑制(シャドーバンニング)の利用や内容に関するユーザーへの警告から、マネタイズ解除、さらには削除に至るまで、対策を講じる必要があるという。

「国際人権法のもとで制限される可能性のあるコンテンツに対処していない」ことが判明したデジタルプラットフォームは、強制措置によって責任を果たすべきだと報告書は述べている。

元フランス文化大臣(社会党)でユネスコ事務局長のオードレ・アズレイ氏は、世界的な計画を正当化するために、社会へのリスクを挙げた。

2023年11月8日、パリのユネスコ本部で演説するオードレ・アズレイ事務局長(GEOFFROY VAN DER HASSELT/AFP via Getty Images)

「デジタル技術は、言論の自由に関する計り知れない進歩を可能にした。しかし、ソーシャルメディア・プラットフォームは、虚偽情報やヘイトスピーチの拡散を加速・増幅させ、社会の結束、平和、安定に大きなリスクをもたらしている」

「情報へのアクセスを守るためには、これらのプラットフォームを遅滞なく規制し、同時に表現の自由と人権を守らなければならない」

アズレイ氏は、ブルガリア共産党の指導者であったイリーナ・ボコヴァ氏からユネスコ事務局長を引き継いだ。

「デジタルプラットフォームのガバナンスのためのガイドライン」と題された新たな報告書の前書きで、アズレイ氏は、ある種の言論を止め、同時に「表現の自由」を守ることに「矛盾はない」と述べている。

さらに、ユネスコが自ら依頼した調査を引用して、世界中のほとんどの人々が同機関のアジェンダを支持していると述べた。

ユネスコによれば、この報告書とガイドラインは、政府、企業、非営利団体などのステークホルダー(利害関係者)から1500件以上の提案と1万件以上のコメントを含む協議プロセスを経て作成されたという。

ユネスコは、この規制体制を世界中で実施するために、政府や企業と協力していくと述べている。

「ユネスコはデジタルプラットフォームの規制を提案しているわけではない」と、ユネスコの広報担当者が匿名でエポックタイムズに語った。

「しかし私たちは、世界中の数十の政府がすでにそのための法案を起草しており、その中には国際人権基準に沿わないものもあり、表現の自由を危険にさらす可能性さえあることを意識している」

「同様に、プラットフォーム自体も、独自の規範に基づき、内容の節度やキュレーション(情報を選んで集めて整理すること)に関して、人間による判断や自動化された判断をすでに1日に数百万件も下している」

すでにネット上での表現の自由に厳しい制限を課している欧州連合(EU)が、世界中で実施するための資金を提供している、とユネスコは付け加えた。

バイデン政権はエポックタイムズに対し、この計画の策定には関与していないと語った。国務省はメールで、「この計画を慎重に検討し終えるまで、コメントは差し控える」と述べた。

受賞歴のある国際ジャーナリスト、教育者、作家、コンサルタント。フリーランス寄稿者として、エポックタイムズに記事を掲載している。共同執筆した著書に『教育者の犯罪:米国の子供を破壊するために夢想家らはいかに官立学校を利用しているのか』など。米国内外のさまざまな出版物に寄稿している。
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