工場閉鎖の説明
テキサス州のサウスウェスタン・エレクトリック・パワー社(SWEPCO)のスポークスマンであるスコット・ブレイク氏は、「継続的な運転コストと褐炭(石炭)の高コストが、発電所閉鎖の主な理由だ」とエポックタイムズに説明した。
「パーキー石炭発電所の燃料費は15年以上上昇を続けており、SWEPCOの他の同様の発電所よりも高いままであることが予想された」
「コンプライアンス・コストと継続的な運転・燃料コストの上昇を回避することで、顧客が推定7,4億ドルから12億ドルを節約できることが分析によって分かったので、2020年にパーキー石炭発電所の閉鎖を決定するに至った」
テキサス州は現在、再生可能エネルギーへの移行において米国をリードしており、2008年にはほとんどゼロだった風力発電と太陽光発電は、現在では合わせて発電量の45%にまで増加している。同州は石炭火力発電所を閉鎖し、風力発電と太陽光発電にほぼ置き換えている。
電力会社は、風力発電や太陽光発電の限界コストは石油やガスよりも低いため、電気料金は安くなると主張している。しかし、はたして消費者がそれを実感できるのか。批評家らの見方は懐疑的だ。
重複する発電システムのコストに加え、電力需要が集中する都市部と風や日差しの強い遠隔地を結ぶ大規模な送電網の建設コストもかかる。
これらのコストは、エネルギー料金の値上げという形で消費者に転嫁されることが多い。
ドイツのエネルギー経済学者ラース・シェルニカウ氏は「風力発電と太陽光発電は、電力網規模で総コストを増加させる」と指摘した。
「1キロワット時の限界コストではなく、総システムコストを見るべきだ。風力発電と太陽光発電を導入すればするほど、システム全体のコストは常に上昇する」
また、風力発電や太陽光発電の擁護者は、蓄電池システムを構築すればバックアップ発電システムが不要になり、問題を解決できると主張しているが、多くのアナリストはこれに疑問を呈している。
「電力網規模のバッテリーに蓄電するコストは、必要なときに発電するために天然ガスを貯蔵するコストの約200倍かかる」とマンハッタン研究所のシニアフェロー、マーク・ミルズ氏は報告書に書いている。
「石油1バレルを貯蔵するには、20万ドル相当のテスラのバッテリー(重量合計2万ポンド以上)が必要だ。たとえ基礎となるバッテリーの経済性と技術が200%向上しても、この差は縮まらない」
ドイツを離れる産業
電気料金高騰の影響を被るのは消費者だけではない。企業も、生産コスト上昇や競争力低下といった影響を受ける。
シェルニカウ氏によれば、ドイツの「エネルギーヴェンデ(エネルギー転換)」の結果、多くの製造企業がアジアに工場を移転しているという。
「重工業はこの国から離れつつある。実業家や家族経営者は『代替案を検討しなければならない。電気代が高すぎるし、信頼性も低下している。これでは工業生産は回らない』と言っている」
風力や太陽光の擁護者の多くは、石炭やガスの火力発電所を停止させれば地球温暖化を食い止めるので、リスクとコストをかける価値があると主張している。しかし、その目標が達成される可能性は低い。
2006年以来、米国はCO2排出量を削減し、2022年には50億トン/年にまで落とした。これは、1979年の60億トン/年とほぼ同じレベルにまで削減したことになる。
しかし、こうした欧米での排出量削減の成功は、発展途上国の急成長に圧倒されている。
中国は同期間のCO2排出量を65億トンから115億トンにほぼ倍増させ、今後数年間で100基の石炭火力発電所を新設する計画を発表した。この間、インドのCO2排出量も倍増しており、現在は25億トンに達している。
また、採掘によるCO2排出や、風力タービンやソーラーパネルの生産によるCO2排出が環境会計で考慮されることもない。風力タービンやソーラーパネルの設置や稼働によって、手つかずの土地や海が利用され、環境破壊が進むことがしばしばあるが、それについても説明はない。
左派のシンクタンクであるブルッキングス研究所の報告書には、「発電所や送電線は産業開発に不慣れな地域に立地し、反対運動を引き起こす可能性がある」とある。
「化石燃料の生産と輸送のために取られる土地も含め、石炭やガスの火力発電所と比べて、風力発電と太陽光発電は発電量あたり少なくとも10倍の土地を必要とする」と報告書にはある。
ネットゼロ義務からの撤退
ドイツは昨年、風力発電や太陽光発電が信頼できるエネルギーを供給できなかったことに加え、ロシアが天然ガスの供給を拒否したことで、約20基の石炭火力発電所の再稼働や閉鎖延期を余儀なくされた。
これは、現在欧州諸国がさまざまな方面から取り組んでいる、ネットゼロ義務からの脱却の一環だ。欧州では今、内燃機関やガスコンロの使用禁止なども延期されている。
ドイツでは、総エネルギー消費量に占める風力・太陽光エネルギーの割合はわずか5%程度であり、化石燃料への需要が続いていることを示している。
欧州政府は、再生可能エネルギーへの転換を目指して努力してきた。しかし、それにもかかわらず、化石燃料は依然として欧州の総エネルギー消費の70%を占めている。
世界では化石燃料がエネルギー消費の80%を占めており、中国やインドなどの国々は新設される石炭火力発電所に多額の投資をしている。
「私にとって、これは政治的な問題ではない。経済と環境の観点から何をすべきかという、純粋な論理だ。残念ながら、風力発電と太陽光発電は、電力網規模で考えて正しい選択ではない」とシェルニカウ氏は語った。
「風車が悪いわけでも、ソーラーパネルが悪いわけでもない。しかし、システムを取って代えようとすれば問題が生じる。ドイツはその典型だ」
欧州が再生可能エネルギーへの移行について見直しを図り、アジアが石炭火力発電の建設に邁進する一方で、米国は風力発電と太陽光発電への依存を加速させている。
エネルギー専門家でニュースコメンテーターのスティーブン・ミロイ氏はこう述べている。
「我々は今、非常に恐ろしい状況にある。レンガの壁にぶつかろうとしているのに、誰も何もしていない」
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