衰退、というより、すでに崩壊状態にあるといっても過言ではない昨今の中国経済であるが、それに対して中共政府は何をしているのだろうか。
端的に言えば、中共は「あたかも国内経済が良いように見せかけること」に必死なのだ。
もちろん、そうした虚飾の一方では、はるかに真実にちかいマイナスの情報を続々と発信するネット民に対して、さまざまな圧力をかけ、これを阻止しようとするのが関の山である。
つまるところ、実質的な景気回復につながる経済再建策を何一つ打ち出せないのが、現在の中国共産党の政府ということになる。
このほど、中国版ツイッターともいわれるSNSウェイボー(微博)では、金融や経済系の情報を発信する有名人に対して、ある「警告」を開始した。さらには、中共政府の情報機関である国家安全部(国安部)まで加わって、当局に邪魔なネットユーザー(つまり本当のことを言うユーザー)への「脅迫」に乗り出した。
今月12日まで2日間、北京で来年の経済運営方針を決める「中央経済工作会議」が開かれた。この会議では、具体的な景気刺激策は示されなかった。その代わりに命じられたのが「経済宣伝と世論引導(誘導)の強化」である。
同会議の後、案の定、官製メディアは一斉に「中国経済は良好だ」の大合唱をしている。
これと同時に、ウェイボーの管理者アカウントは14日、金融や経済系の情報を発信する「大V(多くのフォロワーやファンを抱え、ネット上に影響力をもつ公式アカウントもしくは実名登録アカウント)」をはじめとする各分野のネット著名人に対して、ある「警告」を発した。
その警告とは「今の時期、ネット投稿する際には口を謹んでほしい。中国経済を悪く言うような発信は、一切しないように」というものである。
その意味を示す下記の中国語には「近期発博請務必注意言論尺度、切勿発布任何唱衰経済的言論、感謝老師的配合!」とある。上からの警告ではあるものの、相手を「老師(先生)」と形式的にもち上げて、見かけは下手(したて)に出ているところが興味深い。
ただ、いくら下手に出ているようでも、実際には「違反者」へのアカウント停止などの強硬手段も使う。その意味では、本当に弱腰になったわけではないようだ。
ウェイボーのグループチャットの中にも、そのような警告メッセージが発信されている。
現在「私も警告を受けた」「アカウントを停止された」などと訴えるユーザーからの投稿が、ネット上にあふれている。
注意すべき点は、発信が許されないのは「中国経済の悪口」だけではないことだ。なんと「米国の経済が良い」と言うのもタブーである。実際、米国の経済が良いと褒めてしまったあるインフルエンサーは「禁言(発言禁止)」になっている。
それでも警告を無視する一部のインフルエンサーに対して、今月15日、国家安全部のウィーチャット(微信)公式アカウントは、自ら「脅し」に乗り出したようだ。
国安部は、中国経済を悪く言う範疇に入る「タブー例」をまとめた上で「このような言論を行う者は断固取り締まる」と脅迫する文章を掲載した。
つまり、ネット上で「中国経済を悪く言う」ことは、いまや「国家安全保障の問題」にまで引き上げられたことになる。
こうした「中国経済の悪口」を言う人を脅迫する中共の動きに対し、海外のSNSでは「これはつまり、中国経済はもう助からないと(彼らが)認めたことか。ついに人の口を封じるという最後の手段を使い出した」といった嘲笑が広がっている。
「問題を解決するのではなく、問題を提起する人を消してしまう」。中国共産党の行動原理が、またここでも実証されたと言ってよい。
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