【寄稿】激動の2024年、世界はどうなる? 絶えぬ戦火、世界各地で燻る紛争の火種

2023/12/31
更新: 2023/12/29

ウクライナは停戦するか?

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻して、ウクライナ戦争が始まったのは周知のことだ。現状、戦線は膠着状態となっているのは誰の目にも明らかなのに、ウクライナのゼレンスキー大統領はそれを認めようとしない。

なぜ認めようとしないかと言えば、膠着状態であることを認めれば、領土の奪還が困難だと認めざるを得なくなり、「領土の奪還が困難である以上、多大な犠牲を払って戦闘を継続することは無駄だから停戦したらどうか」という声が内外に高まるのを恐れているためである。

もし、ここで停戦すれば現在の戦線が停戦ラインとなり、ロシアはウクライナの6分の1の領土を事実上獲得する。つまりロシアの勝利、ウクライナの敗北である。

日本を含む西側のメディアでは、「ロシアのプーチン大統領はウクライナ全土を狙っており、ウクライナ全土を獲得すれば、更に西側に侵攻する」との言説が大勢を占めているが、これはウクライナに停戦させたくない勢力のプロパガンダと見てよい。

ロシアの狙いは、クリミア半島から東部ドネツクに至るクリミア回廊を確保して、クリミア半島にある軍港セバストポリからロシアまでの陸路を安定的に維持することだ。現状、クリミア回廊は確保されているから、ロシアは現状での停戦は大歓迎であろう。

ウクライナ軍を支えているのは米国の軍事支援であり、米国が支援を打ち切れば、ウクライナは停戦せざるを得ない。米国内では、ウクライナ支援に懐疑的な声が次第に高まっており、支援が打ち切られれば、ウクライナ戦争は停戦となろう。

パレスチナ、ガザ地区で停戦は実現するか?

2023年10月7日にパレスチナ自治区のガザ地区から、武装集団ハマスがイスラエルに攻撃を仕掛けて戦争が始まった。ハマスはガザ地区を実効支配していたが、ガザ地区はイスラエルに包囲される形で壁に囲まれている。

従ってハマスは袋のネズミも同然で、イスラエル軍を相手に戦争を始めても勝てる見込みは初めから無いに等しい。にもかかわらず、なぜハマスはこの時期に戦争を始めたのか?

それはイランが背後にいて、ハマスに戦争をけしかけたからに他ならない。現にハマスの使用している武器の多くはイラン製かイラン経由で入手したものだ。

ではイランはなぜハマスに戦争をけしかけたのか?それはイランの核兵器開発を継続したいからだ。というのもイランの核兵器は完成間近であり、危機感を募らせたイスラエルは米国に共同作戦でイランの核開発施設を空爆しようと呼びかけた。

この機密文書が2023年4月にSNSを通じて拡散され、イランはこの計画を阻止すべくハマスに戦争開始を命じたのだ。ハマスが戦闘を続けている限り、イスラエルはイランを空爆できないだろうという読みである。つまりハマスはイランのおとりとして利用されている訳だ。

ハマスとしてはガザ市民と人質を楯に取り停戦に持ち込みたいのだが、イスラエルはハマスが壊滅するまで停戦に応ずるつもりはない。

中国は台湾に侵攻するか?

2023年11月15日に米カルフォルニア州サンフランシスコ近郊で開かれた米中首脳会談で、習近平主席は台湾侵攻の可能性を否定しなかった。この席で習近平は、「2027年や2035年を念頭に中国が台湾侵攻を企てている」との報道に言及して「そのような計画はない」と言いながら、一方で「2027年までに台湾に侵攻するだろう」という米政府高官の予測に対して「時期を定めていないので(その予測は)間違っている」と述べたという。

侵攻計画は軍事機密だから、計画があっても「ない」と言うのが当然だが、「時期を定めていない」というのは事実上、計画があると認めているようなものであろう。

だが米国が本当に知りたいのは、3年先のことではなく、実は3か月先のことなのだ。つまり2024年前半に中国が台湾に侵攻するかどうか?である。なぜかと言えば、現在ウクライナとパレスチナと北朝鮮に米国は戦力を集中させており、台湾防衛は困難な状況にある。習近平はそれを知っているから、「時期を定めていない」と、あたかも直ぐにも侵攻できるかのような発言をしているのだろう。

では中国は2024年に台湾侵攻できるのであろうか?結論からいうと不可能と断ぜざるを得ない。というのも2023年8月に戦略ミサイル軍の司令官と政治委員がそれぞれ海軍将官と空軍将官に交代した。

同じミサイルと言っても戦略ミサイルは、海軍や空軍のミサイルと全く異なるから、海空将官が戦略ミサイル軍の作戦運用を出来る筈はない。この海空将官は戦略ミサイル軍の内部粛清のために送り込まれたに相違なく、戦略ミサイル軍が再建されるのに2年以上かかるだろう。

戦略ミサイル軍が機能しなければ、米空母の接近を阻止できず、中国の台湾侵攻は不可能なのである。

北朝鮮は南進するか?

2023年11月20日、韓国軍合同参謀本部は北朝鮮に対して偵察衛星の打ち上げを中止するよう要求した。「打ち上げを強行すれば、対抗措置を取る」と述べたが、北朝鮮はこれを無視して翌21日、偵察衛星を打ち上げた。

韓国軍は翌22日、対抗措置として南北軍事境界線付近での偵察・監視活動を再開した。これらの活動は2018年の南北軍事合意により、停止されていたのである。対する北朝鮮も同日、「2018年の軍事合意を破棄する。南北軍事境界線付近における陸海空軍の配置を復活させる」と発表した。

また同日、弾道ミサイル1発を日本海に向けて発射した。弾道ミサイルの発射は9月13日以来2か月ぶりであったから南北間の軍事的緊張は俄かに高まった。

12月17日に北朝鮮は短距離弾道ミサイルを日本海に撃ち込み、翌18日にICBM火星18をロフテッド軌道で日本海に着弾させた。

ところが面白いことに、同日18日に北朝鮮の林外務次官は北京で王毅外相と会談しているのである。つまり、ICBM発射について中国に説明しに行ったのだ。

更に翌19日にロシアのミシュスチン首相が北京入りし、李強首相と会談し翌20日に習近平主席と会談した。

北朝鮮の衛星やICBMはロシアの技術指導のもと打ち上げられているのだが、そのロシアが打ち上げについて、いちいち中国に理解を求めているのである。

中国は北朝鮮の核ミサイル開発を快く思ってはいないが、ロシアが中国の台湾侵攻に北朝鮮の南進を連動させると説得していると見て間違いあるまい。

だとすると、さきに述べたように中国が台湾に侵攻できない2024年には、北朝鮮の南進はあり得ないことになろう。

(了)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
軍事ジャーナリスト。大学卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、11年にわたり情報通信関係の将校として勤務。著作に「領土の常識」(角川新書)、「2023年 台湾封鎖」(宝島社、共著)など。 「鍛冶俊樹の公式ブログ(https://ameblo.jp/karasu0429/)」で情報発信も行う。