もう回復は無理? 中国共産党の根幹を揺さぶる官僚の「データ改ざん」

2024/02/04
更新: 2024/02/04

中国の経済が現在、深刻な危機に陥っているということは世界中の人々が目の当たりにしている事だ。そうした中、中国共産党(中共)官僚が発表するさまざまなデータが根拠が無いことに注目が集まっている。

例えば、河南省の2023年の経済状況は芳しくないにも関わらず、1月26日に発表された同省のGDPは5兆9132億元(約123兆3千億円)で、成長率は4.1%に達した。さらに、2022年のGDPが最終的に5兆8220億元(約121兆3887億円)と計算され、2023年初めに発表された数字より3100億元(約6兆4635億円)少なかったことも明らかにされた。 つまり、2023年の4.1%のGDP成長率は、2022年のGDP数字を下方修正することによって達成されたものだった。

こうしたデータ改ざんに対し、多くの人々が大きな疑問の声を上げている。このように分母を変更する方法は、歴史を改変する中共の手法と同様に理解しがたいものである。では、なぜ中共は公然と偽造を行うのであろうか。

GDPの数値改ざんに悪知恵を巡らしたが…

テレビプロデューサーの李軍氏は、新唐人テレビの番組、『菁英論壇』で、河南省の2023年のGDPを実際に計算すると、どうやってもマイナス成長にしかならず、プラスの数値にすることは不可能だと指摘した。

2022年末に河南省は、GDPが6兆元を突破し、6兆1千元(約127兆1850億円)に達したと発表し、大きなニュースとなった。しかし2023年のGDPはどうしても、6兆1千元を超えず、河南省は6.1兆元から3千億元を減らし、2022年のGDPを5兆8千元にした。2023年のGDPは5.9兆元とした。こうして河南省は成長したと発表した。

河南省の削減額3千億元は、全国の削減額5千億元の内、大きな割合を占めていたが、福建省、湖南省、江西省の3省もそれぞれ1300億元、1100億元、800億元以上を削減していた。しかし、ここで問題が生じた。

これら4省の2022年のGDP減少額をすべて合計すると、6200億元だが、国は2022年に5千億元の過大計算があったと発表し、地方の減少額の合計より1千億元以上多くなってしまったのだ。これらの問題にはもう誰も対応していない。

もう改ざんを続けるしかない中共官僚

米国サウスカロライナ大学エイケン商学部の謝田教授は、『菁英論壇』で以下のように述べた。

「中共が行うこうした改ざんには一貫した要素があり、突然改ざんをやめたり、新しい改ざんシステムを導入したりすることはありえない。組織的な改ざんは、一度始めると停止することが難しく、ずっと改ざんを続けなければならない」

「今回GDPの基数変更については非常に興味深いと話している。以前、人々は「動くゴールポスト」について話していたが、もしボールが正確にゴールに入らない場合、ゴールポストを移動させても基準を満たすことができる」

実際に、中共のGDPデータの偽装は改革開放が始まった時から存在していたと言える。それ以前、計画経済を採用していた中共はGDPを計算する習慣がなかった。西側の手法を取り入れて国民経済をGDPで測るようになったが、すぐに地方の官僚の業績評価の一つとして利用するようになった。さらに、GDPの数字を外国投資を引き付けるための動機として使用し、これらの要因が中央から地方に至るまでのデータ改ざんの動機となっている。 

地方官僚は、GDPを用いて自らの成果を良く見せ、業績を誇示することが可能である。全国的な規模でのデータ偽装に関しては、GDPを活用して外国の投資を引き付けることに成功した。しかし現在、外国の投資家は中国の数値を信じず、撤退を始めている。

謝田教授は、ソ連の崩壊前に、米国の経済学者たちはソ連のデータを信じ、ソ連の経済が米国の60〜70%に達していると推測していたと述べた。しかし、ソ連が崩壊した後に、その経済が実際には米国の10%に過ぎなかったことが明らかになった。

中共は、いわゆる改革開放が始まって以来、外国、特に米国の市場調査会社が中国で独立した調査を行うことを決して許さなかった。

社会科学や商学での市場調査やアンケート調査は西側ではごく普通のことで、ほぼ毎日行われている。中共が外国の市場調査会社が中国で調査することを許さない理由は、客観的かつ正確な調査方法を用いると、中国のGDP、インフレ率、一人当たりの収入などの実際の状況が全て露呈してしまうからである。

中共は、全ての企業に対し、中国国内の特定の機関(これは公安部に属する)と協力するよう要求している。このようにすることで、データを引き続き制御し、捏造することが可能である。最近、ギャラップ社が中共によって追放されたのも、そうした隠蔽活動を継続できなくなったためである。 

中共のこのようなデータの捏造は問題を引き起こす。表面上は良好なGDPの経済指標に基づいて政策を策定すると、各省からの財政収入や利益の上納額は増加するはずである。

しかし、突如として上海や江蘇省の財政収入は不足し、財政赤字が発生していると報告する場合、どう説明するのであろうか。

謝田氏は、中共の高層部は実際にはいくつかの真実を知っており、二重のシステムを持っている可能性があると述べている。中国の企業が税金申告用と自分たちの実際の収益を知るための二つの帳簿を持つように、共産党の高層部には自分たち専用のシステムがあるかもしれない。

彼らは少なくとも自国の経済状況を理解していなければならないが、同時に、民衆を欺くための別のデータセットも作成している。しかし、このような欺瞞にはよくない結果が待っているもので、官僚組織内で下位の者は上位の者を尊重しなくなり、こうした欺瞞を許すことで尊敬を失う。さらに、これらの偽りや欺瞞が暴かれ、真実が明らかになった時、国民の怒りが急速に爆発する。したがって、中共は最終的に自身の欺瞞によって生じる怒りに飲み込まれることになる。

 中国共産党がついた嘘の代償は甚大なものに

「大紀元時報」の編集長、郭君氏は、中共の統計部門は統治の道具であり、政治のために存在するもので、これは西側諸国の統計とは異なると表明している。

共産党の上層部はまず成長数値を設定し、その後、すべての人々がこの数値に合わせて行動しなければならず、地方政府も、各地の統計局も、この数値を達成するために何とかしなければならず、そうでなければ中央の命令に従わないことになり、当然、昇進の可能性はなくなる。

そのため、共産党の統計数値は、ある意味で逆計算した結果である。まず数値目標を出し、その後、各レベルの政府がその目標数値に合わせて数値を作成し、統計部門がどのようにデータを調整するかは、下の部門の問題である。 

以前の工業生産や農業生産に関連する生産量のデータも同様である。つまり、今年はどれだけの食糧を生産しなければならないかが指示され、その指示に合わせて報告し、その基準に合わせて食糧を納める。しかし、納めた後、地元の人々に食糧が残っているか、十分に食べられるか、飢餓に苦しむことはないかということは、地元の問題であり、中央は無関心だ。

実際には、GDPの成長だけではなく、計画出産、人口、学生の就職、さらに現在の中国の葬儀場の死亡数に至るまで、これらの統計数字はすべて政治的な必要に従い、大きな水増しが含まれている。

例えば、中国政府の発表によれば、2017年の全国の固定資産投資(農家を除く)は63兆元(約1313兆円)であったとされ、毎年増加していると言われている。しかし、2023年には全年の固定資産投資の総額が50兆元(約1042兆円)に減少し、13兆元もの減少を見せた。

毎年増加していると言いつつ、最終的に出てくる固定投資の総額が減少していることは、この数字が完全に矛盾しており、国際社会もこのような矛盾した状況を目の当たりにした。

郭君氏は中共のデータ偽造は、明らかに制度的な問題で、共産党の独裁体制には二つの主要な特徴があると指摘している。

一つ目は、政治権力が完全に独占されていることであり、権力を他者と共有することは許されず、他者が権力を持つことも許されない。

二つ目は計画経済で、国全体がこの計画経済に従って行動する必要がある。鄧小平の時代以降、改革開放が進められ、権力が分散されることはあったものの、計画経済の概念とその内容の一部は依然として存在し、ただし現在は「経済計画」と呼ばれている。 

このようなトップダウンの計画は、ほとんどの場合、達成不可能である。しかし、政治的な必要から、宣伝上は達成したと言わざるを得ないため、統計データの偽造という制度的な問題が生じる。

これは実際には中共の治理モデルの一つである。60年代の三年間の大飢饉は、このような体制によって引き起こされた。各レベルの官僚は農民に対して、中央が発表した豊作の数字に従って穀物を納めるよう強制したが、結果として農民は自分の食料を失い、数千万人もの中国人が餓死した。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。