肝臓の手術で、患者の同意なく「腎臓を1つ取られた」 公安は立件せず=中国 湖北

2024/02/07
更新: 2024/02/07

「後から知ったことだが、私は病院で肝臓の手術を受けた際に、腎臓を1つ取られた」。信じ難いことだが、これは実話である。その人が「腎臓を1つ取られた」のは、今から14年前の2010年だった。

湖北省安陸市の農民・萬潤平さん(62歳)はこのほど、エポックタイムズに対し、自身の身に起きた恐るべき体験について明かした。

本人が全く知らない間に腎臓1つを取られたという萬さんは、その衝撃的な事実を知ってから何年もの間、公安局にこの件を刑事事件として立件するよう求めてきたが、いずれも却下されている。

今年1月11日、萬さんは再度、武漢市の警察署を訪れてこの件の立件を求めたが、やはり拒否された。

萬さんは2010年9月、農業用車両を運転中に事故を起こし、重傷を負った。安陸市の病院へ搬送され、精密検査を行ったところ、肋骨の骨折をはじめ内臓の各所が損傷するほど重篤であった。CTスキャンでは肝臓に影が見られたため、肝臓にも損傷が及んでいることが考えられた。

そのため萬さんは、湖北省人民医院で肝臓の手術を行うことになった。手術の前日に行なわれた検査では、腎臓の機能は正常。CTスキャンの結果でも、もちろん「腎臓は2つとも揃っていた」ことが当時の検査報告で確認できる。

しかし、その翌日に行われた肝臓の手術では、病院側は萬さんに知らせることなく、なぜか泌尿器科の医師を手術台での診察に同席させていたという。

同年10月、肝臓の手術を終えた萬さんは退院した。しかし退院後から、体に冷えや頻尿、排尿時の痛み、夜間の腰痛などの症状が現れた。手術から2年後の2012年12月、病院で超音波検査を受けたところ「右の腎臓がない」ことが判明した。

この診断結果に、最も驚いたのは萬さん本人だった。「手術する前、何度も検査を行っている。あの時、左右の腎臓はあった!」。つまり萬さんは、先天的に腎臓が1つだったわけではなく、肝臓手術の後に「右の腎臓が消えた」のだ。

それでも右側の腎臓がなくなったことが信じられない萬さんは、その後、2年かけて7つの病院で検査を行った。いずれの病院でも「右の腎臓は、すでに摘出されている」という回答が返ってきた。

萬さんはその後、当時肝臓手術を行った湖北省人民医院を相手取り、「病院が患者に知らせることなく、また患者の同意を得ていない状況下で勝手に腎臓を摘出した」として、損害賠償を求めるため提訴した。

一審判決で、裁判所は病院側に対して計77,426元(約161万円)を賠償するよう命じた。しかし検査費や治療費など、これまでにかかった全ての諸費用で、原告(萬潤平さん)が主張する他の要求については棄却した。

萬さんはこの判決を不服として上級裁判所へ上訴したものの、地裁で再審するよう戻された。以来、裁判は止まったままになっているという。この件について、刑事事件として立件するよう公安に求めてきたが、現在に至っても立件してくれない。

萬さんの友人である徐さんは、エポックタイムズの取材に対し、次のように述べた。

「中国では、このようなことがあまりにも多い。一般市民が病院行って治療受けただけなのに、腎臓を取られるのだから、本当に恐ろし過ぎる。公安局は立件もしてくれない。立件しない理由は、往々にして上からの指示があったからだ。これは中国では、よくあることだ」

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。