「給料くれなきゃ、飛び降りるぞ」 鉄塔に集団で登る、出稼ぎ労働者たち=中国 広西

2024/02/12
更新: 2024/02/12

「給料を払ってくれ。さもなければ飛び降りる」。そう言って、ビルの屋上に座り込む労働者の姿を映した動画は、しばしば中国のネットに出回っており、もはや珍しい光景ではなくなった。

飛び降りると言うが、彼らは「本当は生きたい」のだ。

つまり彼らは、本当に死にたくて屋上にいるのではない。きちんと働いた分の給料をもらって親や家族を養い、最低限の生活をしたいだけだ。しかし、もらう権利があるはずの給料が、すでに何か月も支給されていないのである。

ただし、それがただの演技ではなく、本当に飛び降りて自殺してしまうケースもある。それほど彼らは今、どうにもならない絶望感に追い詰められている。

広西省:集団で高い塔に上る「農民工」たち

中国語の「農民工」は、農業をやりながら兼業で出稼ぎ仕事をする「農民」という意味ではない。

つまり「農民工」とは、田舎で畑仕事をしている農民かどうかではなく「農村に戸籍をもつ出稼ぎ労働者」を指している。

中国では、農村戸籍をもつ人びとと、都市部に戸籍をもつ市民とが明確に分けられている。こうした社会の二重構造のもとで、都市部に出てきた「農民工」は、いわゆる二級市民として差別されるとともに、就労や報酬などのさまざまな場面で冷遇され、非常に過酷な境遇に置かれることになる。

それでも中国経済に活気があった頃には、こうした出稼ぎ労働者も重宝された。しかし今は、都市部の市民でさえ収入を得るのに苦労する経済低迷期である。農民工が直面する環境は、極めて厳しいものになっている。

今月6日、広西省から投稿された動画のなかでも、自殺をほのめかして、集団で高い鉄塔に登る農民工(出稼ぎ労働者)の姿があった。

この農民工たちが、この鉄塔へ登ることによって、未払いになっている給料が支給される可能性が増すか否かは、わからない。

(2024年2月6日、広西省からの投稿。自殺をほのめかして、集団で高い塔に登る出稼ぎ労働者たち)

重慶市:高い塀に上った建築労働者たち

今月5日、重慶市の建築労働者たちも高い塀に上り、自殺をほのめかして、給料の支払いを求めていた。

(2024年2月5日、高い塀の上に上って「給料の支払いを求める」重慶市の建築労働者たち)

山東省:病院建設の労働者も「屋上に立つ」

2月7日、山東省菏沢市(かたくし)にある市立医院(病院)が工事労働者の給料を支払わない、あるいは遅延していることに対して、労働者たちは「給料を払わなければ飛び降りるぞ」と言って、病院の屋上に立った。

(2024年2月7日、市立医院の頂上に上って「給料の支払いを求める」工事労働者たち)

新疆ウルムチ:泣いて叫ぶ労働者と「沈黙する警察」

2月8日の新疆ウイグル自治区のウルムチ市。「給料の支払いを求める」ある女性の出稼ぎ労働者は、自身が勤める会社のホールで、警察官に向かって涙ながらに次のように訴えた。

「あなたたち(警察)だって、両親や子供がいるでしょう。あなたたちだって良心のない人間ではないはずだ。私たちは、ただ働いた分の給料が欲しいだけです」

現場にいた警察官は、この女性の必死の訴えから目を逸らし、下を向いて沈黙するだけだ。

この警察は、現場の治安維持を命じられてここに来ているが、雇用主ではない警察には、給料が支給されるかどうかの問題には口を挟む権限はない。

ただし実は一つだけ、この警察官にも内心で共感する部分はある。いつ自分たちの給与がストップするか分からない、ということだ。

「あなたたちだって、良心のない人間ではないはずだ」と涙ながらに訴える女性の出稼ぎ労働者。左端の警官は目を逸らし、下を向いている。2024年2月8日、新疆ウイグル自治区ウルムチ市。(SNSより)

下の画像は陝西省での場面だが、同じく給与が長期間支給されないために、泣き崩れ、土下座までして給与を求める労働者の姿である。

日本へ多くの中国人観光客が来る一方で、こうした光景が今の中国には溢れている。

画像(左)は今月7日、「給料を払ってください」と陝西省の建設会社で土下座する農民労働者。画像(右上)は給料を払ってもらえず、泣き崩れる農民労働者。画像(右下)は路上に跪いて給料の支払いを乞う労働者たち。(SNSより)

(泣きながら、土下座までして給料の支払いを求める労働者たち)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。