経済の破綻が、ますます顕著になっている中国。その中国各地では今、金(きん)買いのゴールドブームが巻き起こっている。ただし「ニセモノには、くれぐれもご用心を」である。
なにしろ、本物よりも、はるかに多くのニセモノが横行するのが中国である。
宝飾品は別として、あくまで純金(24金)であることに重点をおく金塊ならば、顧客に対して、売り手側が「こちらは18金です」などと馬鹿正直に言うはずがないからだ。
「本物と信じ込まされて購入した金塊が、実はニセモノだった」という悲劇の実例は、すでにSNSに数多く投稿されている。以下に、その一部を紹介する。
鍛冶工場からの直接販売でも、この有様
たとえば、これがそうだ。山東省の黄金鍛冶(冶金)工場「山東黄金冶煉厰」の販売部門が販売していた金塊である。
包装は、取り外していない。その金塊の裏側にできた小さな穴のなかから、どう見ても金ではない「白っぽい色の地金」が見えるではないか。
金塊には、確かに「質量証書(品質保証書)」がついている。そこには、中国共産党の政府部門である(または、役所に準ずるような公的イメージを表すための)「赤い星のスタンプ」も押されている。
しかし、それがあるからといって「純金の品質が保証されている」とは限らない。むしろ「赤い星マーク」がついているからこそ、余計に怪しいのだ。
地方の政府部門は今、どこも潰れそうなほどの財政難にある。見返りが得られるなら、役所が出す「赤星の公印」など安いものである。役所の公印ではなくても、民間企業がそれに類似するデザインの赤星スタンプを押すことは(賄賂次第で)いくらでも目こぼしできるからだ。
いずれにしても、この金塊がニセモノであったことは動かし難い事実である。そうだとすれば、スタンプ付き「品質保証書」の信用度は極めて低い。
そうした腐敗ぶりを裏付けるような事態が、すぐに起きた。その様子を動画に撮影してSNSに投稿したネットユーザーのもとに、この黄金鍛冶工場から「あなたは法律に違反した。デマ宣伝をやめ、企業の信用を傷つける行為をやめるよう求める」通知書が届いたという。
つまり、未開封の状態で、実際に目視できる「白い地金」について釈明するのではなく、一方的に「法律違反」「デマ宣伝」「企業の信用を傷つける行為」とまくし立てているのだ。
まさに「問題を解決せず、問題を提起する人を解決しようとする」の典型である。それは顧客からの指摘が図星であり、金塊がニセモノであるからこそ、それを隠蔽するための「逆ギレ芝居」と言ってもよい。
この問題が大きいことは、本物の純金が一般に流通してから改鋳されたのではなく、製造元であり販売業者であるこの黄金鍛冶工場が「証明書つきのニセモノ金塊」を売っていた点にある。
(山東省の黄金鍛冶(かじ)工場「山東黄金冶煉厰)」の販売部門が販売していた金塊。確かに「品質保証書」付きであるが、その裏側に白い地金が見える。)
割ってみたら「中身は鉄」の金メッキ
こちらは、もっと分かりやすい。
「財富金条」とは、誠に金運の良い文言である。しかし、その金塊を切り割ってみたら「中身はただの鉄。表面だけ金色のメッキ」だった。これでは、金運も長くは続かないであろう。
この物品が、人を騙して売られたものか、買う方も承知の上で「金メッキの鉄」を買ったのか、どちらかは分からない。
「ただの縁起物」ということで、ニセモノを承知で安く買ったのならばよい。日本の神社のお守りのようなものであろう。
しかし、相手を騙して高額の代金をとったとすれば、いかがわしい宗教団体が売る「壺」と同じであり、その悪質性はかなり高い。
(割ってみたら中身は鉄だったという「財富金条(金塊)」)
銀行から購入した「黄金」が、10年で鉛色に
10年前に、中国の銀行から購入した「金塊」が、10年後の今、見るも無残な鉛色の金属に変わってしまった。よほど酸化して錆びたらしいが、いずれにしても、これが金(ゴールド)でないことは明らかだ。
常識的に言えば、純金(24金)は非常に安定性が高い金属であり、錆びることはない。塩酸や硫酸に浸けられない限り、空気や水分に触れても化学変化を起こすことはないはずだ。
ところが、この「中国黄金」と印字された金塊は、10年後にはひどく錆びている。考えられる原因としては、混合された他の金属が酸化したということであろう。つまり、もともと純金ではなく、合金だったのだ。
購入金額は、当時の20万元(今のレートでは約418万円)だったという。騙されて売られたとすれば、その被害は大きいと言わざるを得ない。中国の銀行は、このようなニセモノを売るのである。
(錆びた「中国黄金」。もともと純金ではなく、合金だったらしい)
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