中国共産党による情報戦のなかで最も広範囲に影響するのは「物議を醸す情報」であることが、台湾国防部の報告書で明らかになった。それらの情報は、共産党の外郭組織や現地の協力者によって拡散され、政府当局や軍に対する国民の信頼を損なうリスクがある。
台湾の立法院(国会に相当)に宛てた国防部の報告書によると、中国共産党は台湾の言論の自由を悪用し、三戦(世論戦、法律戦、心理戦)を積極的に展開している。台湾社会のなかで心理的な混乱を引き起こし、台湾人の団結力を弱体化させるため、日々偽情報による攻勢を仕掛けている。
なかでも、台湾社会を分断するためによく使われるのが「物議を醸す情報」だ。「物議を醸す情報」には、真実の情報と偽情報を織り交ぜたものや、悪意を持って捏造されたものなどがあり、一般人には識別が困難であることが多い。そのような情報は、中国共産党の軍事的脅威を誇張して伝える、台湾軍を故意に貶める、軍や一般市民の団結を損なうといった特徴を持っている。
拡散するルートとして中国共産党が利用するのは、「官製メディア」「外郭組織」「現地の協力者」の3つだ。情報の伝播する範囲を広めるため、同時多発的に情報を拡散する手法が用いられている。
台湾は偽情報にどのように対処しているのか。国防部によれば、常時情報を監視し、偽情報を見つけた際は、迅速に真相を明らかにし、被害を最小限に抑えるよう努める。また、メディアのリテラシー教育にも力を入れ、教育部と連携して「偽情報の見分け方」の教材を作成し、学校で活用している。さらに、新兵や予備役に対しても、正しい軍事情報を提供するための教材を用意しているという。
このほか全民国防教育を強化し、各県市政府や関係機関と協力しながら、全民防衛の意識を根付かせ、台湾の置かれた状況と潜在的な脅威について国民の理解を深めている。
日本の防衛省も認知領域などにおける情報戦対策に乗り出している。2027年までにハイブリッド戦や認知領域を含む情報戦に対処可能な情報能力を整備し、プロパガンダや偽情報への対処力を獲得する。
防衛省によると、実際に確認された情報戦の実例として、以下のようなものがある。
米国が中国産レアアースに対する依存からの脱却を目指し、米国内でレアアース生産に向けた動きを見せたところ、中国との結びつきが疑われる団体が、米国国内でのレアアース生産に対してSNS上でネガティブ・キャンペーンを実施。健康被害や環境破壊の可能性を主張した。
防衛省は「国際社会では、他国国内の混乱を生起することや、自国の評判を高め、他国の評判を貶めることなどを目的として、偽情報の拡散をはじめとする情報戦に重点が置かれている」とした上で、「他国による偽情報への対策など、情報戦対応を万全にする必要がある」と広報している。
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